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【わかったなんて言えません】Vol.91 藤田寛之#2「緊張で手が震える」若かりし藤田を救った師匠の金言とは?

「ゲンちゃん」こと時松隆光がプロを招いてトークをする連載「わかった! なんて言えません」。今週のゲストは、前回に続き藤田寛之プロ。23年間シードを保持してきた藤田プロだが、プレー中に手が震えた時代もあったようで……。

TEXT /Yuzuru Hirayama PHOTO /Tadashi Anezaki

ホスト/時松隆光

1993年生まれ、福岡県出身。ツアー通算3勝。プロ10年目。テンフィンガーグリップで戦う。愛称は“ゲンちゃん”

ご指名/藤田寛之

1969年生まれ、福岡県出身。92年プロ入り。ツアー18勝。43歳にして賞金王を獲得。ゴルフと自分に向き合うストイックな姿勢も皆の尊敬の対象

前回のお話はこちら

時松 藤田プロの何がスゴいって、シードを23年間も続けていたという、このひとつだけをとっても、どれだけ名プレーヤーなのか誰もがわかります。

藤田 23年間、よくやれたよね。我ながら。

時松 僕なんか一年一年、シードをとるのも大変で、必死に食らいついて。それを23年間も続けてって、想像もできないっす。

藤田 真っ先に思うのは、ここまで長く応援してくださっているファンの方々への感謝だよね。

時松 藤田プロは、いつもギャラリーの方が多いっすもん。たとえば予選をギリギリで通って、3日目インスタートだと、付いて歩いてくださるファンって、どのプロも比較的少ないですよ。だけど石川遼プロと藤田プロは別格で、いつでも鈴なりです。

藤田 そんな他のプロのギャラリー数を気にしているなんて、さすが前選手会長!

時松 しかも藤田プロは、女性ファンが多いんです!


藤田 そうかな? ありがたいことだと思う。ファンにもいろいろいて、調子がよいときに応援してくれても、調子が悪くなってしまうと、さぁっと消えてしまうのは当然だよね。8割ぐらいはそうかな。だけど、残っているファンを見ると、以前からずっといてくれる方々なんだよ。やっぱり、僕にも本当のファンって、いるんだなぁってあらためて思うんだよね。

時松 ギャラリーの顔を覚えているんですか? 今日もあの人、来てくれているなとか。

藤田 もちろん。「応援してくださっているのがわかりました」って、ホールアウト後にお礼言ったりするよ。プレーしていても見えるじゃない。

時松 池田勇太プロもそう言います。キャディさんに、「あの子どもさん、ずっと付いてきてくれたからボールあげて」とか。それってスゴいっす。だって僕、プレー中は、まったくギャラリーの顔が見えてないです。

藤田 えっ? だってあれだけ長時間一緒にいて応援してくれているんだよ。俺は100%見えているよ。源ちゃん、見てない?

時松 はい。

藤田 可愛い女の子とかがいたら?

時松 ちょっと見るかも……。ミニスカートだったりしたら、本能的に(笑)。

藤田 なんだよそれ(笑)。

時松 思うのは、藤田プロや勇太プロと僕の違いは、「余裕」の差なのかなと。プレーだけに集中していると、一見そっちのほうがよさそうなんですけど、実はそうではなく、ギャラリーの顔を覚えているぐらいの余裕が必要だったりするのかなと。

藤田 余裕かぁ……。確かに、最終日最終組とかだと、俺もそんな余裕はなくなるかもね。だけど本来なら、それだけの余裕がいつもあったら、いいのかもしれない。

時松 どこからそんな、視野の広さとか、冷静さとか、余裕って生まれるんでしょう?

藤田 長年やってきているという経験かな。僕も若い頃は、そんな余裕なんてなかったかもしれない。だって、デビューしたばかりの頃は勝負どころのパッティングで手が震えるとかではなく、初日のティーショットから、もう震えていた。

時松 えっ、藤田さんが、初日のティーショットから手が?

藤田 そう。そんなんじゃゴルフにならないから、師匠の芹澤信雄プロに相談したことを憶えてる。「すごい緊張しちゃうんですけど、どうしたらいいんでしょうか?」って。

時松 どんなお答えが?

藤田 意外だったんだけど、「俺だって緊張してるよ」って言ってくださった。「えっ? 師匠も、ですか?」って。すると師匠は、「いや、いいんだよ。おまえ、手が震えながらでも、あれだけやれてんだから、大したもんだよ」と言われて、一気に気持ちが楽になった。

「誰でも緊張はする。まずまずのプレーができていればいいや、くらいの心境なら、楽になれると思いますよ」(藤田)

時松 いいお話ですね。

藤田 アマチュアの方でも、コンペとかでいいショットを打ちたいと集中しすぎて、スタートで緊張してしまうこと、あるよね、きっと。でも、緊張を消そうとか、余裕を持たなきゃ、とかではなく、誰でも緊張するんだから、そんななかでも、まずまずのプレーができていればいいや、くらいの心境なら、新人の頃の僕のように楽になれるかもしれないよね。

時松 なるほど。長くシード選手として活躍された藤田プロのエピソードだからこそ、心にしみます。集中しすぎて緊張してしまうより、ギャラリーの顔を見るくらいの余裕があるほうが、やっぱり、いいスコアにつながりそうな感じがします。

藤田 女の子の顔だけ見てちゃ、ダメだけどね。

時松 そこは、気をつけます(笑)。

週刊ゴルフダイジェスト2022年8月9日号より