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【わかったなんて言えません】Vol.90 藤田寛之#1「昭和のフェーダーの強み」

「ゲンちゃん」こと時松隆光がプロを招いてトークをする連載「わかった! なんて言えません」。今週からのゲストは、レギュラーツアー18勝、史上6人目となる生涯獲得賞金15億円に到達した藤田寛之プロ。福岡出身で“同郷”の2人。まずは藤田プロが先月シニアツアー初優勝を飾った話から。

TEXT /Yuzuru Hirayama PHOTO /Hiroyuki Okazawa

ホスト/時松隆光

1993年生まれ、福岡県出身。ツアー通算3勝。プロ10年目。テンフィンガーグリップで戦う。愛称は“ゲンちゃん”

ご指名/藤田寛之

1969年生まれ、福岡県出身。92年プロ入り。ツアー18勝。43歳にして賞金王を獲得。ゴルフと自分に向き合うストイックな姿勢も皆の尊敬の対象

時松 まずは先月のスターツシニアでのシニアツアー初優勝、おめでとうございます!

藤田 ありがとう! 初日から首位を守って優勝できたのは嬉しかったね。

時松 試合が始まる前日、6月16日が53歳のお誕生日だったそうですね。

藤田 53歳というと、レギュラーツアーではすっかりオッサンだけど、シニアでは若手(笑)。自分がスコアを伸ばせば勝てると思って、最終日も中盤でなるべくバーディを取りたいなという気持ちでプレーしていたら5番、6番で取れた。その連続バーディが大きかった。

時松 レギュラーツアーで43歳にして賞金王を獲得されて、ツアー史上最年長記録を作られたのもすごいですけど、シニアツアーでの初優勝も価値がありますよね。

藤田 世の中のオッサンに「このオッサンすげーな!」と言わせたい(笑)。「このオッサン頑張っているなら俺も頑張らなきゃ」となるよう、そんな刺激になればいいなと思ってます。

時松 同世代のファンの方々の希望となっています。僕が藤田プロのプレーを最初に間近で拝見したのは、2014年のKBCオーガスタ。あの5ホールも続いたプレーオフを制しての涙の地元優勝、感動的でした。僕はまだプロ2年目で予選落ちばかりしていて、地元のKBCオーガスタでも予選落ちでした(笑)。

藤田 だけどその2年後には、ネスレ日本マッチプレーで対戦したよね。その試合で初めて源ちゃん(時松の愛称)の存在を知ったんだ。その前週の、チャレンジツアー優勝資格で出場したダンロップ福島オープンにも優勝した直後とあって、波に乗っている勢いを感じた。あんなにバババーンッていきなり台頭してきた選手もなかなか珍しいよね。

時松 マッチプレーで藤田さんと戦えるなんて、夢の中の出来事みたいでした。ダンロップ福島オープンでの優勝で、最後の1枠で出場できた日本マッチプレーだったので、僕だけ場違いな感じでしたよね。

藤田 源ちゃんがいいゴルフをしていたから、もしかしたら勝てるかわからないぞっていう予感はあったんだよね。長い距離のパットもバンバン入れてきていたし。

時松 僕は対戦した方がみんな超一流でしたので、もう無我夢中でした。

藤田 そうだよね。超一流しか出てなかった(笑)。

時松 対戦させていただいたのは、武藤俊憲プロ、谷口徹プロ、藤田プロ、小田孔明プロ、小田龍一プロ、今考えてもよく優勝できたなって。

藤田 源ちゃんは技術がしっかりしているのがわかるから。3年ほど前にダンロップ福島オープンでも一緒に回ったよね。ウェッジを持ったら絶対ピッタリつくんで、ああ、昔は僕もこうだったんだろうな、なんて思いながら(笑)。

時松 ウェッジの名手の藤田プロにそうおっしゃっていただけて光栄です!

藤田 源ちゃんとは、タイプが似ているよね。球筋はフェードだし。またいいフェードを打つんだよね。ティーショットでもピンポイントに狙っていくから。上手いなって思った。セカンドからも、ピンに対してのフェードの入り方を見たら、真っすぐではなく、なんというかボウリングみたいに弧を描く感じで綺麗に入っていくなと。

時松 ボウリングのポケットに入れてストライクを狙っていくようなイメージ、確かにあります。

藤田 昭和の人間には、たまらない球筋(笑)。だけど昨年、フェードを上手く打てずに困っていたよね?

時松 ヘッドが大きいドライバーが合わなくて、いつもちっちゃいヘッドを選びたいタイプなんです。

「フェーダーの一番の強みは、左にミスしないっていうことだもんね。その強みを失わないようにしたい!」(藤田)

藤田 昭和の子だね~。源ちゃんを見ていて、珍しくつかまり過ぎて左に出てるって感じた。

時松 ドローを打ちたいとは思わないんですけど、ストレートに打ちたいというのはあって。そうしたらいきなり左に出るようになって、木の枝にパサッて当たるんで、恥ずかしいじゃないですか。「プロでもあんなところに当てるんだ……」ってギャラリーのささやきが聞こえてきて(笑)。

藤田 それは恥ずかしい(笑)。左には行かないっていう感覚が崩れると、野球のピッチャーでいえば、勝負球が投
げられずに計算が立たなくなるってことだから。そこはフェーダーとしてしっかり修正したいね。

時松 はい、そうなんです。

藤田 真っすぐにしてみて、今はどうなったの?

時松 う~ん、まだ旅の途中って感じですかね。

藤田 同じフェーダーとしては、ぜひまた自信を持ってフェードを打てるようになってほしいね!(つづく)

週刊ゴルフダイジェスト2022年8月2日号より