Myゴルフダイジェスト

【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.84「欲とゾーンとベストスコア」

高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。

PHOTO /Masaaki Nishimoto

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この前、知り合いのアマチュアの方が、ベストスコアを出したと喜んではりました。毎日すごい練習をしているわけやないんでしょうけど、嬉しいですよね。よかったです。

ベストスコアというものを覚えているのは、やっぱりスコアが一番やと思うてるんでしょうね。僕も、大昔ですけど、やっぱり数字は覚えてますわ。ホームコースで研修生と一緒に回ったとき、30・28の58かな。

試合ではそんなスコアは出したことないですね。64とか63とかでしょう。それでも半分くらいはバーディをとっているわけですけれど。


ベストスコアが出るときは、ゾーンというより、パットが入るんです。スピード感とラインが読めていて、欲、欲……でいってない。スムーズなんですよね。

ショットが全部ベタピンの距離に付くわけじゃないから。「今日はこれいいな」という感覚ではじめて、だんだんペースがわかってくると「50台いったろう」とノリみたいなものはあります。

まあ、ゾーンというのはよくわかりませんけど、すごく冷静なんやろうなと思います。周りが全部見えている感じというか、追い詰められていないというか。気持ちが上がりすぎても下がりすぎてもいない、見えている状態。

「ああ、あそこに犬がおるな」とか、「あのおばちゃん2人、なんかしゃべっとるわ」とか。聞こえていて、全部わかっているような感じです。

でもアマチュアの人は面白いです。急にゴルフがよくなって、急にベストスコアが出て、急にまた悪くなって(笑)。やっぱり、「今」しかないんでしょうね。

「これいいな」と思うと、しばらくはそれをやるんですけど、だんだんそれをやりすぎになって。やりすぎて前よりむちゃくちゃになって、「元のほうがはるかにマシやった。もう戻してほしい」という人はいます。ちょうどいい加減がわからんのかもしれません。

でも僕らでもありますよ。そんなに別に飛ばさんでも、100ヤードをピッチングでポーンというくらいで打てたのに、それがゴソーッとなったりとかね。プロでもやってしまうんですわ。力が入るんですね。

「やりすぎ」も欲!

「ちょうどいい加減がわからなくなります」

奥田靖己

おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する

週刊ゴルフダイジェスト2022年6月14日号より