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「ドローが有利」は昔の話!? フェードヒッターのシェフラーは、なぜオーガスタを制することができたのか

オーガスタは、左ドッグレッグのホールが多く、ドローヒッターが有利とされる。しかし、今年の覇者はフェードヒッターのスコッティ・シェフラー。いったいなぜ、シェフラーはマスターズを制することができたのか。レックス倉本氏と目澤秀憲コーチに分析してもらった。

PHOTO/Blue Sky Photos ILLUST/Sadahiro Abiko

必ずしもドロー有利とは限らない

マスターズの舞台、オーガスタナショナルGCは、ドロー有利という定説があった。しかし、今回マスターズを制したのはフェードを持ち球とするスコッティ・シェフラー。その理由をレックス倉本プロに聞いた。

「確かに以前はドロー有利のコースでした。しかし、何度も改修が行われ、今はドロー有利とは言えなくなってきている部分もあると思います。例えば15番。今年は20ヤード後方にティーイングエリアが下がったことでドローだと落ち際が左に傾斜しているため、林まで転がるリスクが高まり、攻略するのが難しくなりました。つまり、ドローヒッターにも攻略するのが不利になるホールが増えてきたということです。


一方で、フェード打ちにとって鬼門となるのが13番のパー5。右へミスをすると、林があるため2打目は出すだけになり、3打目も距離が残ってしまい、ボギー以上を覚悟しなくてはなりません。しかし、シェフラーは4日間、しのぐどころかスコアを伸ばし、勢いをつけたんです。ティーショットでは、打ちにくそうにしてミスをしていたものの、その後のマネジメント力とタテ距離のズレないショット力でフェードヒッターが不利なホールを見事に乗り切りました。シェフラーの強さがにじみ出たホールですね。特にアイアンの精度は抜群。ツアーイチとも言われる高弾道で、オーガスタのグリーンでもビシビシ止めていました。マスターズ優勝という偉業も納得できますよね」

ショットの精度の高さでボギー以上はなし

13番パー5は、左ドッグレッグの2番、5番、9番、10番、13番のなかで、フェードが持ち球の選手にとってもっとも難しいホール。右サイドが狭く、少しでも右へ打ち出してしまうと、林へ入りボギーもあり得る。シェフラーは、13番はノーボギー。その他の左ドッグレッグのホールも4日間でボギーはわずか1つ

アイアンの上手さが光るシェフラー。高いトップから鋭角に下ろしていくことで、高弾道のショットが打てるため、タテ距離が合いやすく、マスターズの速いグリーンでも止められる。また随所にアイアンでのスーパーリカバリーを披露

左サイドを完全に消すスウィング

マスターズ制覇の為には、当然飛距離も重要だ。シェフラーの4日間の平均飛距離は298.5ヤード。そのスウィングの特徴について目澤秀憲プロコーチに話を聞いた。

「シェフラーは、ヘッドの開閉を積極的に使い、高いトップからヘッドをやや鋭角に入れてV字を描くように振ることでフェードを打っています。最も特徴的なのは、右足の動きです。切り返し直後から、右足を背中側に引くように動かしていますよね。この動きは、右足で腰が回る方向と反対方向に力のベクトルを向けることで腰の回りすぎを抑えるため。これにより右サイドにクラブの通り道ができて、自然なフェースターンを生む効果があります。つまり、フェースの無理な開閉がなくなり、球のつかまりすぎを防ぐことができるということです。フェードヒッターのシェフラーにとって左(逆球)のミスは絶対に嫌。その意思が右足の動きに表れていますね。この動きがあるからこそ逆球の不安がなく、どんな場面でも振り切れるのだと思います。これも平均300ヤード近い飛距離を出し、マスターズ制覇できた要因だと思います」

【トップ】
手元が頭の上に来るくらい高いトップを作ることで、ヘッドを上から入れる準備をする。左肩がアゴの下に来るくらい捻転も深い
【ダウン】
トップからループを描くようにクラブを寝かせるのではなく、肩口から鋭角にクラブを下ろしてくる。その際に右足を前に出さず、クラブの通り道を作る
【フォロー】
インパクトからフォローにかけて右足を背中側に引くように動かす。腰の回転が弱まるため、右サイドにクラブの通り道ができて自然なフェースターンができる。すると、無理な開閉がなくなりつかまりすぎを防げる

月刊ゴルフダイジェスト2022年6月号より