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【ゴルフに運はつきもの】Vol.19「おかげで勘違いせずにここまで来られた! 厳しかった“アマ規定”が変更」

最強のサラリーマンとしてアマチュア時代に輝かしい成績を収め、49歳でプロ転向した“中年の星”こと田村尚之プロ。群雄割拠のシニア界で気を吐く異色プロが、自身のゴルフについて、そしてシニアツアーの裏側について語る。

ILLUST/Masahiro Takase

前回のお話はこちら

いや~、びっくりしましたねえ。女子ジュニアゴルファーの須藤弥勒ちゃんが、「ゴルフ5」を運営するアルペングループと所属契約を締結したという報道。しかも、契約金がシード選手並みの年間1000万円以上で、かつ長期の契約だとか……。これが事実だとすると、彼女は大半のプロゴルファーより稼ぐ選手、とも言えます。同じくアマチュアの中島啓太選手が、タイガーウッズ選手が契約している米国の「エクセルスポーツマネジメント」社とマネジメント契約を締結したという報道もありましたね。まあ中島選手はアマチュア世界ランキング1位の選手で、アマチュアでプロツアーに優勝したように実績も十分ですが、弥勒ちゃんはまだ10歳ですからねえ。ほんと、驚きました。

というのも、私がアマチュアとしてやっていたときまでは、お金を一銭たりとも貰ってはいけない、というアマチュア資格規定でしたから。それが今年の1月から、「すべてのスポンサー関連の制限を廃止する」という内容に変わったんですよね。


実は私、アマチュア時代は、このアマチュア資格規定に苦しめられましてね。私は運よく1994年に日本オープンのローアマを獲得することができたのですが、当時は日本アマ優勝者と、日本オープンでローアマを獲得した選手には、5年以内なら予選会免除で最終プロテストを受験できる権利がありました。私はテストを受ける気持ちはありませんでしたが、当時はプロテストの申込書を提出した時点で、アマチュア資格は喪失する規定になっていました。

また、2009年頃だったでしょうか、「週刊ゴルフダイジェスト」で連載を持たせていただいてまして、連載を始めて半年くらい後に、日本ゴルフ協会から「このまま連載を続けたら、貴殿のアマチュア資格を剥奪せざるを得ない」と通達されたのです。もちろんノーギャラでしたし、ほかに雑誌にレッスン記事を載せているアマチュアも何人かいました。それで、「なぜノーギャラなのにダメなんですか?」って日本ゴルフ協会に問い合わせたんです。すると「単発だと構わないが、連載だとあなたがその雑誌の売り上げに寄与する可能性があるから」という回答でした。正直なところ、よく理解できない内容でしたね。自分としては、ゴルフ界への恩返しと思って、無償でやっていたのにね……。

私も第一線でやっていましたし、試合に出られなくなっても困るので、しばらくして連載は中止せざるを得なかったですが。そのくらい、アマチュア資格規定は厳しかった、ということなんです。

ただ、私にとっては、アマチュア資格規定が厳しかったのは、結果的には本当によかったと思っています。もし、当時アマチュア資格規定が緩かったら、自分は弱い人間なので、“勘違い”していたかもしれません。自分は49歳でプロテストを受験してプロゴルファーになり、50歳からプロとしてシニアツアーに参戦し始めたので、今でもなんとか戦えている、そう思っています。

今回のアマチュア資格規定の変更は、とくにエリートアマにとってはラッキーだといえるでしょう。そして、より強いプロゴルファーが誕生する下地ができたというのもいいことだと思います。ただ、今まで以上に、親の責任と、親から子への教育というか、指導というものも非常に大事になってくるのだと思いますね。


田村’s スウィング理論
50歳を過ぎたらオフはスウィング改造より体のメンテ

田村プロは試合の日でも新幹線に乗り数時間かけて行きつけのマッサージに行くほど人一倍体のケアを気にしている。寒くてラウンドする機会が減ると「よし、オフにはスウィング改造と筋力アップだ」と考えがちだが、その前にストレッチで柔軟性を保ったり体のメンテナンスをすることが大事

田村尚之

1964年6月24日生まれ。「日本ミッドアマ」2連覇、「日本アマ」2位などを経て49歳でプロへ転向。2016年「富士フイルムシニア」でツアー初優勝

月刊ゴルフダイジェスト2022年4月号より