【わかったなんて言えません】Vol.62 杉山知靖#4「優勝争いの場面でも“ナイスバーディ!”」
「ゲンちゃん」こと時松隆光がプロを招いてトークをする連載「わかった! なんて言えません」。今週のゲストは先週に引き続き、9月のブリヂストンオープンで初優勝を飾った杉山知靖。最終回は、プロとして、ゴルファーとしての心持ちについて。
ホスト/時松隆光
1993年生まれ、福岡県出身。ツアー通算3勝。プロ10年目。テンフィンガーグリップで戦う。愛称は“ゲンちゃん”
ご指名/杉山知靖
神奈川生まれ。ツアー1勝。明徳義塾、中央学院大卒業後、15年プロ入り。レイクウッドコーポレーション所属。“人柄”にも注目!
時松 杉ちゃん、今、コーチは?
杉山 伊澤利光さんや福嶋晃子さんが育った横浜の第百ゴルフクラブという練習場の内田豊プロに、ゴルフを始めた頃から見てもらっている。
時松 一度も代えずに。
杉山 うん。内田さんも70歳だから、今のトーナメントの硬いグリーンへの対処みたいなアドバイスはあまりできないと言われるので、新しい技術の吸収という面では、いろんな人に話を聞いたり勉強しに行ったりもする。でも僕の師匠は一人だと思っているのでスウィングのチェックはずっと内田さんにお願いしている。源ちゃんもずっと篠塚(武久)さんでしょ。
時松 うん。
杉山 シーズン中に空き時間ができたら行って見てもらう?
時松 いや、シーズン中はない。シーズン中は僕もコーチもスウィングはいじらない。
杉山 そういうところは、源ちゃんのよいところだと思う。
時松 杉ちゃんは、自分の性格はどう思っているの。
杉山 几帳面すぎるかな。その点は、ちょっと直さなければなと思っているけど。源ちゃんは僕みたいにキッチリじゃなく、メモも持たずに練ランするスタイルだよね。
時松 うん。でもゴルフのプレースタイル的にはキッチリだと思う。僕は距離が出ないから、そこがブレたらダメだから。
杉山 そうか。
時松 もちろんコースマネジメントも考えるけど、杉ちゃんのように「今日はフックラインが入っているから、フックラインにつけるようにショットを打つ」なんてキッチリと考えるわけではなくて、そこはケースバイケース。自分としては、得意クラブも苦手なクラブもつくらないという考えでやっているので。
杉山 源ちゃんのその考え方はすごくよいと思う。自分は14本満遍なく使えるし、スライスもフックも上りも下りも、まあ入るときは入ると思っていたら、どんな状況がきても心の動揺は少ないよね。
得意・不得意はつくらない!
「このクラブ得意とか、このラインが得意とかを決めちゃうと、逆の状況がきたときに動揺することになります」(杉山)
時松 今年、中盤に成績が出ていなかったときに、「球が左に出るということは右肩が出ているな」とか、「右にこすっているからもっとインサイドから包み込んで打つ」とか、考えながら球を打っていたけどよくならない。それで、ISPSの2日目あたりで「ロボットじゃないんだから、球は曲がるもんだ」と思って、もっと雑にじゃないけど、「向いたところに打つ」という感じでやったら良かった。自分はそっちのほうが合っているんだなと。正解はないんだけどさ。
杉山 高校のときから源ちゃんの感覚的な部分のすごさは、僕には絶対に真似できないと思っていたから、そっちで正解じゃない。でもゴルフを長く続けようと思ったら、キッチリも感覚も程よく使い分けられるほうがいいのかもね。
時松 キッチリの性格といえば、杉ちゃんが優勝したブリヂストンオープンで、最終日の6番で片岡(尚之)くんに並ばれたとき、「ナイスバーディ」と声をかけ、マナーも心配りも完璧だと書かれていました。
杉山 何か無意識に出ていたんだよね。グリーンの奥から15〜16mくらいのがジャストタッチで入ったから、それで思わず出ちゃった。でも普通にラウンドしていて「ナイス!」とかは言うもんね。
時松 ナイスは言いますね。
杉山 でも同じような状況で、相手に決められて追いつかれたら源ちゃんはどう?
時松 追いかけられるより追いつかれたほう楽じゃないかな。ずっとトップで走るって、まあまあキツイ。相手も、追いついたら勢いはピタッと止まることが多いし。だから僕は、追いつかれてからは逆によいほうに転がると思いたい。僕も初優勝のとき、2位の岩本(高志)さんが6番のパー4で200Yくらいから2打目が入ったとき「ナイスです」って言いました。
杉山 ポンと出ちゃうよね。
時松 でももし、終盤のイーグルだったら「チッ!」と心では思うかも。声に出すことは100%ないけど(笑)。杉ちゃんの場合は、人間的に大きいからそういうことはない。でも、ゆとりがないと、「ナイスバーディ」は出ないでしょう。
杉山 そうかなぁ。でも不思議と、あんまり緊張はしなかった。
時松 最後に、来シーズンというか今後の目標は。
杉山 取りあえず今まで通り、一試合一試合、一打一打に向き合って、それでよい結果が出たらいいと思っています。あとは、結果が悪いときでも気持ちよくプレーをして、誰からも尊敬されるようなゴルファーになりたいですよね。
時松 本当にキッチリしています。素晴らしい。また来年もお互い頑張りましょう!
週刊ゴルフダイジェスト2022年1月4日号より