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なぜゴルフの試合のスポンサーに? #1 男子の新規大会を支援した「サトウ食品」の場合

今年5月に開催された「ジャパンプレーヤーズチャンピオンシップbyサトウ食品」は、JGTOの選手会が主催した初めての大会。紆余曲折の末、サポートを決意したサトウ食品の佐藤元社長に、ゴルフの試合をスポンサードする理由を聞いた。

PHOTO/Hiroaki Arihara

佐藤 元 サトウ食品代表取締役社長

1965年新潟県出身。87年関東学園大卒、90年佐藤食品工業(株)(現:サトウ食品(株))入社、2010年代表取締役社長に就任。HCは10、最高は7。好きなクラブはドライバー。「全然飛ばなくなりましたが、ティーイングエリアに立つとワクワクします」

男子ツアーよ、マニアックであれ」

「昨年10月、旧知の田島創志プロに誘われチャレンジツアーのTIチャレンジを初めて見ました。こういう試合もいいなあ、すぐではなくても今後スポンサードを考えようかと話していた。すると今年2月、田島プロから担当者に電話があり“例の話”になりました」

例の話とは、JGTOの選手会が初めて主催して開催するジャパンプレーヤーズチャンピオンシップ(JPC)のことである。今年5月の開催直前に、当初決定していたスポンサーが降りたのだ。

「スポンサーが見つからなければ今日の理事会で試合がなくなる。まず名前だけでも出させてほしいと。その後、2月末に担当者が池田勇太プロとお会いし、大会開催に向けた打ち合わせが始まりました。もちろん最初は費用の話になります。持ち帰ってきた提示額をみて本当にこれで大丈夫かとも思いつつ、その時点では我々がそれ以上出すのは厳しく、広告宣伝としての費用対効果の部分もありました。でも『選手会としてやりたい』という気持ちが非常に伝わってきた。運営の部分は、無観客、ゴルフネットワークさんで放送することはすでに決まっていたので、大会ホスピタリティの一つである、プロアマはどうするかになる。でもコロナ禍で開催が難しいのは理解できましたし、最低限我々が楽しめる形を考え、プロアマにせず、練習ラウンドに付かせてもらうことになりました」

サトウ食品がゴルフの試合をスポンサードするのは02年の新潟オープンからだ。「父が社長の時代、3年間冠スポンサーでした。父も母もゴルフが好きで、両親の時代はジャンボさんたちがいて男子のほうが優勢でした」

佐藤家は“ゴルフ一家”だ。スポンサードする理由は「ゴルフが好きというのが1番」と笑う。


「3人の子どもたちも大学までゴルフでお世話になって。長男が92年生まれでちょうど堀川未来夢とか今平周吾と同じ世代、1個上には石川遼、1個下には浅地洋佑という感じです。だから皆を子どもの頃からずっと見てきて、この子はプロになって活躍してるなあ、など動向を気にしていました。でも、宮里藍ちゃん以来女子ツアーは盛り上がっているのに男子ツアーがイマイチで。見れば楽しいのにと思っていたとき、フューチャーツアーのスポンサードの話が持ち込まれました」

石川遼が選手会会長のとき、ツアー開催の敷居を低くしたいという狙いでつくったのだ。

「JPCが男子を盛り上げる1つの
きっかけになった、と言われるなら
僕らにとっても嬉しい」

「男子ツアーを盛り上げたいという思いを強く語られて……コストも何とかなりそうだし、若手プロの熱意に応えたいと思いました。試合は、今トッププロになっているC・キムや大槻智春、稲森佑貴も参加しました。こういう選手たちが育てば男子ツアーも面白いと感じたのを覚えています」

スポーツと食には親和性がある。これが純粋に企業イメージとも合致する。「スポーツで戦うとき、食がエネルギーになる。そのとき一番のもとになるのは炭水化物、ごはんやお餅です。また、一緒に試合を共有した地域や、年代同士は、その話題で盛り上がっていくもの。そんなふうにつながっていけたらいいなと思うんです」

地元新潟も大切に考えている。野球のBCリーグや新潟シティマラソンにも協賛、08年に日本女子オープンを開催した紫雲CCでは理事も務める。ここでフューチャーツアー、ペアマッチをはじめ、数々のゴルフイベントを開催した。「地元の皆さんにも喜んでいただきたい。新潟は雪も降るしゴルフ不毛の地の感じですが、若林舞衣子や高橋彩華、今回のプロテストで合格した泉田琴菜もいて有望プロを輩出しています」

佐藤社長の心意気を感じ、スポンサードの話がいろいろと舞い込んでくるのではないか。

「実は、我々が自ら手を上げてやりたいと言ったのはペアマッチくらい(笑)。でも、ZOZO選手権もお声がけいただいて協賛しまた。PGAツアーの規模感やしつらえは素晴らしいだろうなと思っていて、実際見て鳥肌が立ちました。2日目の金曜日は天気も悪くて寒くて、普通のトーナメントならギャラリーは激減しますが、皆来るんです。そして皆目が肥えているから話がマニアック。そういう雰囲気が素晴らしい。PGAではギャラリーの選手に対する期待感があり、このホールでは2オンしないと許さないという空気が出る。日本ツアーでは、ここは危ないからレイアップすることを許してくれる空気がなんとなく出る。今回、日本選手たちも普段よりアグレッシブだった気がします」

「評判はよかったです。いろんな意味での新鮮さがあった。試合自体も盛り上がり、プロ4戦目のフレッシュな片岡尚之くんが優勝して。振り返って皆さんに言われるのは、あそこで試合がなくなっていたら『ああ、男子ツアーはやっぱり……』となったと。ドタバタでしたが、試合が開催されたという事実が大事。いろんないい縁がつながったのでしょう」

ゴルフにも“地方巡業”があっていい

ゴルフの魅力は、自分でやっても見ても楽しいことだという。

「ハードルが低いスポーツではないですが、いいおっさん連中が興じるんですから、それだけ面白いものなんですよ。うちなんか親子三代でゴルフに行きますが、1日中楽しめます。それにスポーツというのは何でもそうですが、ライブで見たら絶対いい。そしてよく言うのが、女子のゴルフは『上手いねえ』ですが、男子のゴルフは『すごいなあ!』という一言です。プロの打った音や、ボールの高さ。僕らのはるか上に行き、なかなか落ちてこない感じ。やっぱり感動します」

人気がないと言われる日本の男子ツアーに提言はあるか。

「ツアープロの皆さんも、どうやったら盛り上がりますかと事あるごとに僕らにも聞いてきます。本当に考えていて、何とかしたいと思っているんです。提言まではできませんが、もっとマニアックになれと言います。八方美人に誰でもいいから楽しく見てほしいということもいいけど、たとえばプロのクラブやシャフトに関して、スパイクの裏側に関して、細かい部分まで情報として得られたら『へえー!』となる。マニアックな応援の仕方もあって、好きな人たちは絶対に来るからと。100を叩く人でも、松山英樹のプレーぶりを平気で語るわけです(笑)。男子ツアーが一番マニアックな人たちの集まりだから。実は昨年トーナメントがなかった裏で少しフォーマットを変えた100万円争奪9H男子ペアマッチも開催しましたが、選手自身が全部細かく解説してくれるのが面白いという意見が多かった。そういうところにヒントがあると思います」

プロたちは子どものようです」

それでも、とくに今の若手は楽しい、それが嬉しいと語る。

「レギュラーとチャレンジの間くらいの選手もすごく面白いですし、今年最後に賞金ランキングをみてビックリすると思いますよ、世代の様変わりに」

佐藤社長の口からは、次々と男女プロの名前が出てきて、それぞれの活躍を心から喜んでいる。「皆、子どものように思える。一挙手一投足が気になるんです。結局、僕らが一番楽しませてもらっているんですね」

プロたちに対して“父”のような存在なのだ。そして、「縁」という言葉を何度も使う。

「ゴルフをやっていたら、いろいろと縁ができます。それがすべての根底ではないでしょうか。来年JPCをどうするのかはこれからですが、一つ言えるのは、今回はあくまでも試合自体を開催してほしいという応援の思いでやらせてもらった。選手会もJGTOもいろいろ努力して、お互いギリギリのラインでやったと思うんです。もし我々以外にJPCの精神を理解してしっかり応援する、賞金総額ももっと上げたいというスポンサーが現れるのであれば、僕は『どうぞ』という姿勢でいいと思っています。そのときはまたチャレンジツアーなどの応援を考えたらいい。たとえばTIチャレンジは、石川喬さんという個人の方がスポンサーなんです。こういう形もいいなと。僕がHSチャレンジを開催するとか(笑)。相撲でいうと、大相撲の本場所があれば地方巡業もある。我々は後者だという思いはありますし、それも大事な役割だと考えてもいるんです」

週刊ゴルフダイジェスト2021年12月14日号より

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