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【さとうの目】Vol.207 初の選手会主催大会を成功に導いた2人

PHOTO/Hiroaki Arihara

鋭い視点とマニアックな解説でお馴染みの目利きプロ・佐藤信人が、いま注目しているプレーヤーについて熱く語る連載「うの目、たかの目、さとうの目」。今週は選手会主催のジャパンプレーヤーズ選手権を成功へと導いた2人をクローズアップ。

今回はジャパンゴルフツアー選手会初の試みとなった、選手会主催のジャパンプレーヤーズ選手権byサトウ食品についてお話しします。大会は成功のうちに幕を閉じ、日本の男子ゴルフ界の大きな一歩になりました。

大会成功の立役者として、2人を紹介したいと思います。ひとりは選手会副会長で大会実行委員長を務めた池田勇太プロです。3月の記者発表で、ボクはJGTOの広報担当理事として進行係を務めました。これに勇太はリモート出演したのですが、その場にいた担当者によると「池田プロの手がずっと震えていました」。勇太自身が「この会見でミスがあったらヤバイと思った」とこのときの心境を吐露しています。優勝パットでさえ震えることない強心臓の勇太のこの緊張ぶりに、大会にかけるすべての思いを感じました。

特別協賛が予定されていた企業が2月に辞退し一時は大会開催が危ぶまれましたが、サトウ食品さんが新スポンサーに決まったあとは時間がないなか、コースの選定、大会名からロゴ、組み合わせの決定、会長の源ちゃん(時松隆光)と一緒に関係者回りと奔走。大会に入ってからも撮影用のテレビ塔、中継車、大会看板、サービスカーの位置など細かい部分まで指示し、大会終了後の記念撮影まで仕切ってくれました。選手として出場もしながら、できることは自分たちがやるというエネルギーは、今の男子ゴルフ界には不可欠だと思いました。

もうひとり紹介したいのはJGTOの競技担当理事の田島創志プロです。新スポンサー探しですぐさまサトウ食品さんに出向いたのは創志プロのファインプレーなんです。柔軟な発想と行動力。なによりその人柄が、周囲を説得できる篤い信頼感にもつながっています。とくに非常時には、彼のようなタイプが必要なことを改めて思い知らされました。

創志のファインプレーは、もうひとつあります。それは昨年行った特別QTです。コロナ禍でツアーは20-21シーズンとして2年をまたいで開催されていますが、20年のQT開催はなくなる可能性がありました。そこに「若手、実力者のチャンスはつぶしたくない」と特別QTを提案、根気強く取り組んだのが創志と「JGTO競技部」でした。特別QT1位の選手は19年の10位と11位の間に、2位の選手は20位と21位の間に……といった具合に、狭い枠ながらチャンスをつくりだした結果、若手ばかりかベテランの矢野東(20年QT1位)にも復活のチャンスが生まれたのです。今年の試合で上位に顔を出している清水大成、桂川有人らの活躍は、この特別制度で生まれたものと言えると思います。

そのほかにもゴルフ専門チャンネルでの生中継はトーナメント史上初の試み。「選手が主役」を合言葉に18番ホールで全選手のプレーを紹介したり、試合直後の選手を解説席に呼んだり。番組スタッフからも「こんなことをやってみたい」「こんなこともできる」と様々なアイデアが飛び出しました。

自分たちが動き、皆でしっかり連携する。選手や関係者それぞれの自覚こそが、新しい歴史をつくっていくのだと思います。

佐藤信人
さとう・のぶひと。1970年生まれ、千葉出身。ツアー9勝。海外経験も豊富。現在はテレビなどで解説者としても活躍中

週刊ゴルフダイジェスト2021年6月8日号より