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【さとうの目】Vol.229 日本語が堪能なJ・チョイ。最初に覚えた言葉が意外すぎる!

鋭い視点とマニアックな解説でお馴染みの目利きプロ・佐藤信人が、いま注目しているプレーヤーについて熱く語る連載「うの目、たかの目、さとうの目」。今週の注目選手は、先日のダンロップフェニックスでアルバトロスを達成し話題になった韓国のJ・チョイ。

PHOTO/Shinji Osawa

14年以来、7年ぶりに日本ツアーのシード権を確保したのが韓国のJ・チョイです。14年はボクの現役最後の年。J・チョイも12年から守ったシード権を失った年で、互いに「上手くいかないねぇ」と慰め合ったことを思い出します。それだけに7年ぶりのシード権の獲得は自分のことのように嬉しいし、素直にすごいことだと思います。

そのJ・チョイとANAオープンで食事をする機会に恵まれました。そこには幡地隆寛も同席。意外な組み合わせに感じましたが、11年の東日本大震災の際、ボランティアで出会って以来のつき合いだそうです。当時、東北福祉大の学生だった幡地の飛距離に、ビックリしたのがきっかけだったとか。

ニューメキシコ大時代には、オールアメリカのセカンドに2度選出されたエリート選手。J・チョイいわくファーストとセカンドは10人ずつで、実力差はほとんどなく、選出するコーチの好みで分けられるそうです。ともあれアメリカの大学ゴルフ界を代表する、将来を嘱望される選手であったことは間違いありません。

ところが卒業後Qスクールでまさかの失敗。ここで一度、ゴルフをやめてしまいます。翌年、Qスクールが始まる時期になって、約1年のブランクを経てクラブを握りますが、2年続けて失敗しました。


そのとき、知人から「日本ツアーはどう?」と声をかけられました。当時、J・チョイは日本ツアーの存在すら知らなかったそうですが、やることもないので「じゃあ行くわ」と軽い気持ちで応じたのが09年でした。その年のQTで3位に入り、翌10年にはランク17位でシード権を獲得。12年には最終日に追い上げ、とおとうみ浜松オープンで初優勝を飾りました。

しかしその後、腰やひざに故障を抱え、シード権を失って以降はたまにチャレンジに出るくらいで、満足なゴルフができない日々が続いていました。

ところが今年、久々に内容のいいゴルフを見せています。今でもニューメキシコに住み、コロナで入国制限が緩和されてからの限られた試合で、早々とシード権を獲得したのです。今年、2人目の子どもが生まれたこと、ゴルフ以外のビジネスが軌道に乗り、生活が安定したこともプラスに働いているようです。

日本語の上手さはS・K・ホやD・チャンドと並び外国人選手のなかでもトップクラス。ちなみに最初に覚えた日本語は、「ETCカードが挿入されました」。音楽と映画、そしてカーナビで日本語を覚えたことを教えてくれ、「解説ではボクの紹介に使ってください」。流暢な日本語でネタをもらいました。

泥臭い努力のイメージがあまりない選手ですが、今年のカムバックの裏には様々な苦労と努力があったでしょう。12年以来の優勝を果たした暁にはここまでの苦労話も聞いてみたい気がします。

トレードマークのサングラスもオシャレ。「本来、飛ばし屋の一人。いつも明るく気楽な雰囲気。ギャグも自在に操り、まるで関西人のような間のよさです。明るいし、オシャレだし、何より頭がいいのでしょうね」

佐藤信人

さとう・のぶひと。1970年生まれ、千葉出身。ツアー9勝。海外経験も豊富。現在はテレビなどで解説者としても活躍中

週刊ゴルフダイジェスト2021年12月14日号より