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【わかったなんて言えません】Vol.47 浅地洋佑#3「体の動きは気にしない」イップスに悩む人に伝えたいこと

「ゲンちゃん」こと時松隆光がプロを招いてトークをする連載「わかった! なんて言えません」。今週のゲストは、先週に引き続き同じ学年の仲良しでもある浅地洋佑。パットのイップスに悩んだ経験のある浅地が、同じ悩みを持つ人に伝えたいこととは?

前回のお話はこちら

ホスト/時松隆光

1993年生まれ、福岡県出身。ツアー通算3勝。プロ10年目。テンフィンガーグリップで戦う。愛称は“ゲンちゃん

ご指名/浅地洋佑

東京生まれ。ツアー2勝。ジュニア時代から注目され11年プロ入り。調子を崩す時期があるも復活し、19年ツアー初優勝

浅地 源ちゃん、解説の仕事もしてるよね。僕が出場していた全米オープンでも生中継で解説していたでしょ。どうだった?

時松 選手目線で全米オープンの難しさをわかりやすくお伝えできれば、と思っていたんだけど、解説って難しい(苦笑)。実は解説デビューがシニアの試合で、雲の上の人みたいなプロがミスしたときに、「いや~、これ、時松さん、どうですか?」なんて実況に感想を求められて……。

浅地 それヤバイね! どう答えたの?

時松 言葉を選んで、「猿も木から落ちるって、このことですね」なんて(苦笑)。

浅地 解説、僕もやってみたいとは思っていたけど、1回やったら、もう嫌だって思っちゃうんだろうな。年下の選手がいっぱいいるチャレンジツアーならいいかも。

時松 
若い僕なんかがシニアの試合の解説って、恐れ多いとは思ったけど、いい経験させていただいたなと感じました。

浅地 若いときに、源ちゃんみたいにいろんな経験をしておくのは、いいことだろうね!

時松 さて、ゴルフの話。初勝利する前、パッティングでイップスに苦しんでいたって聞いたけど、いまは?

浅地 いまは、パターを動かすことができない、なんていうひどいことはない。いろんな人に聞くと、プロでもアマチュアでも、ショートパットが入らなくなってイップスになって、ゴルフを楽しめなくなったっていう人、多いみたいだよね。

時松 参考にしてもらうなら、どんなことをアドバイスする?

浅地 体の動かし方にこだわりすぎないことかな。自分の体に意識を置くのではなく、僕の場合はもっとシンプルにパッティングするようになったよね。

時松 シンプルに?

浅地 単純な話で、球をどこへ転がすか、というパッティングの目的の原点に戻ってみた。体の細部のことを気にするのではなく、たとえばカップまでのラインの途中にスパットを見つけて、そこを目がけて打つ。小さな落ち葉のかけらだったり、芝のキズだったり、なんでもいいんだけど、まずはそこにボールを出せれば、それでいいやと。

時松 細かなことを考えないようにしたってこと?

浅地 うん。「体をこう動かさなきゃ」とか、「フェースをこう当てなきゃ」とか、「ボールをこう転がさなきゃ」とか、パッティングって、理想を追求すると、やらなければならないことが際限なく増えてきてしまう。でも、いまはあまり考えず、ただあそこのスパットに球を出せて、カップに入ればなおいいやって感じ。そうすると気持ちが楽になった。

時松 僕もイップスとまではいかないけど、手が動かなくなるというのは試合でときどきある。

浅地 源ちゃんはそんなとき、どうするの?

時松 あえて、何もしないかな。自分のやってきたことを変えない、というか……。

浅地 それが、源ちゃんの強さなんだろうな。変えないというのは、根底に確固たる自信があるからできることだよ。

時松 僕の師匠(桜美式の篠塚武久氏)も、体をどう動かすかというよりも、自分の感覚を大切にしなさい、という教えなんだよね。いつものピンタイプのパターで、球を手で転がしてカップへ入れるような感覚。だから、ヘッドが大きなマレット型パターとか、流行したカブトムシ型とかクワガタ型とか、感覚が鈍るから試したことさえない。

浅地 そういえば、源ちゃん、パターのグリップも細いよね。極太グリップが流行りだけど、一貫してる。

時松 太いグリップも、やっぱり感覚を鈍らせてしまうというのが師匠の教えだから。

浅地 源ちゃんはじめパッティングが上手いプロって、みんなグリップが細い。ピンタイプも多いし。感覚を研ぎ澄ませて、そこを信用して、どんな状況になっても変えないって、いいね。球の転がりのよさは気にするほう?

時松 気にならない。とにかく、僕も洋佑と同じで、あまり細かなことにこだわらないようにしている。たとえばボールのセットだって、きっちりラインに合わせるようなことはしないしね。

浅地 そういえば源ちゃん、いつも、ボールをポンッって簡単に置いちゃうもんね。それはプロでも珍しいと思う。どこを向いているのかわからなくなるとき、ない?

時松 おそらくスタンスがズレているときもあるのかもしれないけど、気にしない(笑)。

浅地 僕、源ちゃんと4日間まわったとき、3日目からボールをポンッて簡単に置いて打つのを真似したら、まったく入らなかった(笑)。その域には、僕はまだ達していないんだなあ。(つづく)

週刊ゴルフダイジェスト2021年9月14日号より