「シャウフェレさん、ごめんなさい!」稲見の銀でお蔵入りになった金メダル男“幻の表紙”
オリンピックで稲見萌寧が銀メダルを獲得し、日本中を熱狂させたその裏で、もうひとつの「ギリギリの戦い」が行われていた。
毎週火曜に発売される「週刊ゴルフダイジェスト」は、今週だけ、8月11日の水曜日に発売された。
通常通り8月10日(火)の発売にすると、8月9日(月)が祝日のため、印刷所に入稿する日程が前倒しとなり、8月7日(土)に最終日が行われる女子ゴルフの結果を入れられなくなってしまう。そこで、五輪の特別態勢として、異例の水曜日発売とすることが前々から決まっていた。
結果、稲見萌寧の快挙を本誌でお伝えすることができたのだが、正直なところ、これほどの快挙は想像の範囲外。
表紙には、前週の男子ゴルフで金メダルを獲得したザンダー・シャウフェレが採用されていた。
安定した強さを誇りながら、いまだメジャーでの優勝はなく、今年のマスターズでも最終日・最終組で松山と争いながら3位に終わったシャウフェレ。陸上十種競技の選手ながら不運な事故により五輪への夢を絶たれた父と二人三脚で努力を重ね、五輪という大舞台で最高の結果を手にした苦労人に敬意を表し、週刊ゴルフダイジェストの表紙に採用させてもらったのだ。
日本在住の祖父母も、この表紙を見たらさぞかし喜んだに違いない。
ところが、表紙の校了日である金曜日、女子ゴルフは3日目を終え稲見萌寧が3位タイ、畑岡奈紗が7位タイに順位を上げてきた。日本ゴルフ界初のメダルの可能性が現実味を帯びてきた。
すでに表紙は出来上がっていたが、印刷の工程を待ってもらい、土曜の最終日の結果次第で、表紙を差し替えることに。
そしてご存じの通り、稲見萌寧が銀メダルを獲得。
現地でカメラを担ぎながら取材を続ける記者からすぐさま写真を受け取り、見出しを変更、素材をデザイナーに渡し、レイアウトを組み直す。印刷所がもう待てない、というギリギリのギリギリに入稿し、無事表紙が差し替えられた。
シャウフェレには悪いが、二度と日の目を見ることがなくなってしまった幻の表紙。せめてこの場を借りて、掲載させていただくことにする。
ちなみに、目次ページのクレジットには「表紙 ザンダー・シャウフェレ」の文字が。締め切りの関係で、こちらは直すことができなかったのだ。
今回は幻に終わってしまったが、シャウフェレの実力からすれば、今後必ずや、表紙を飾る機会が巡ってくるだろう。編集長、次は差し替え無用でお願いしますよ!