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【わかったなんて言えません】Vol.42「プレーオフになったら絶対に負けていた」片岡尚之の優勝秘話

TEXT/Masaaki Furuya  PHOTO/Hiroaki Arihara
ILLUST/Masaya Ito

「ゲンちゃん」こと時松隆光がプロを招いてトークをする連載「わかった! なんて言えません」。今週のゲストは、先週に引き続き北海道出身の片岡尚之プロ。片岡プロが初優勝を飾ったときの話から、北海道のゴルフ事情、そして洋芝の打ち方へと話が展開していく。

ホスト/時松隆光

1993年生まれ、福岡県出身。ツアー通算3勝。プロ10年目。テンフィンガーグリップで戦う。愛称は“ゲンちゃん

ご指名/片岡尚之

1997年生まれ、北海道出身。14年の日本ジュニアで北海道の選手として初めて優勝。東北福祉大4年時にプロ転向。今年、プロ入り4戦目で初優勝!

前回のお話はこちら

時松 初優勝した試合(ジャパンプレーヤーズチャンピオンシップ byサトウ食品)は最終組から4組前だったよね。どういう展開だったの。

片岡 16番でバーディを取って、トップの(石川)遼さんに追いついて。これで残りの難しい2ホールをパー、パーなら可能性があるかもしれないと思ったんです。でも17番(パー3)、ティーショットが強風で流されて右の斜面の下のベアグラウンドまでいってしまって。それを見た瞬間、「これはボギーでいいや」と切り替えられた。2打目はグリーンに届きませんでしたが、実は届かそうと思えば届かせられた。でも乗せて勢いがついてピンを越えたら難しいパットが残るから手前めのイメージで打った。結局ボギーでしたが、その辺はすごく冷静にできていました。

時松 プロ入り4試合目ですごい。いつもそんなに冷静なの?

片岡 いいえ、けっこうカッカして、クソ! みたいになることもありますが、あの試合はセルフプレーだったので、すべて自分でやらなきゃという思いがあったから、試合を通じて集中力がすごく高かったと思います。でも先に上がってパター練習していたときは、時松さん含めて5人のプレーオフになりそうだったので全然集中できなくて(笑)。試合展開を見てプレーオフに備えたほうがいいと思ってモニターを見るようにしました。

時松 風の状況を考え15アンダーで上がれば何とかなるかなと思ってプレーしていたけど、案の定18番はものすごいアゲンストだったので、僕ら4人は全員ボギーで総崩れしちゃった。

片岡 その状況を見ていて、「あ、勝っちゃった」みたいな感じでした。実は、待っているときは足がガクガクだったので、もしプレーオフになっていたら絶対に負けていたと思います(笑)。

時松 でも話題性があって男子ツアーにとってはよかったと思います。初優勝で、イケメンで、セルフプレーの初優勝者で。

片岡 ありがとうございます。

時松 負けて言うのもなんだけど、僕自身はコロナ禍で選手会の仕事の関係なんかもあってゴルフをあまりしていなかった割には、全体的に狙い通り打てて、タッチなんかも出て、出来すぎって感じでプレーしていた。片岡くんは北海道出身だから冬場はプレーできないでしょ。

片岡 はい。冬場の4カ月はまったくラウンドができないので、高校生の頃はトレーニングをするか、室内練習場で球打ちをしていました。僕の地元の江別って札幌なんかよりたくさん雪が降るので、雪かきもトレーニングの一環としてやっていたぐらいです。

時松
 冬場のトレーニングで鍛えられたんだ。でも僕らプロは一応毎日クラブは握りたいと思っているので、それが何日間かクラブも握れないと不安じゃない? 正直、ちゃんと当たるかなっていう気持ちになるよね。ショットみたいな大きな動きはまだなんとかなるけど、小さな動きのアプローチやパッティングは感覚と結果のギャップが大きくなるので、2~3日クラブを握らないと厳しい。

片岡 感覚が全然違ってきますからね。冬場に球打ちする室内練習場は5~10Yくらいしかないからスウィング作りはできる。だからよいスウィングとか、よい体の動きなんかは身につきます。ただ、よい動きをしているからコースで真っすぐいくかというとそうもいかなくて、コースでは気持ちも入るので微妙に結果が違ってくる。だから北海道にいたときは冬の間に失われたゴルフ勘を春先に取り戻すのがけっこうキツかったです。

時松 そういえば、優勝したコースの西那須野CCはフェアウェイが洋芝系だった。片岡くんは北海道出身だから洋芝は得意?

片岡 そうですね、だからやりやすかったです。

時松 日本のゴルフ場のフェアウェイはコーライとかが多いので根元は浮いているから、ボールはティーアップされているような感じで打てるんですよね。逆に洋芝はベタッと寝ている感じで、なおかつ粘るのでヘッドが入るスペースがないから慣れていないと難しいけど、片岡くんは苦にならないんでしょ。

片岡 はい。僕は洋芝で育ってきたので、逆にコーライとか野芝のように球が浮いている状態ってすごく違和感があるというか、苦労もしました。

時松 僕も洋芝のコースでけっこう結果が出せているので、わりと好き。僕は洋芝もコーライも打ち方は変えないけれど、片岡くんはどうですか。

片岡 僕は変えています。洋芝はヘッドが入るスペースがないので、ヘッドを滑らせて入れるというよりは上からカツンと打つのが合っている。僕は元々は打ち込むタイプなんです。でもコーライや野芝のフェアウェイで上から打ち込むと下に潜る感じになるので、払って打つように練習をしました。

(つづく)

洋芝のときは上からカツン

「洋芝はヘッドが入るスペースがないので上からカツンと打つのが合っている。でもコーライや野芝では払って打つように練習をしました」(片岡)

週刊ゴルフダイジェスト2021年8月3日号より