【世界基準を追いかけろ!】Vol.44「アメリカでは、コーチ同士の横のつながりが深いんです」
TEXT/Masaaki Furuya ILLUST/Koji Watanabe
松山英樹のコーチを務める目澤秀憲、松田鈴英のコーチを務める黒宮幹仁。新進気鋭の2人のコーチが、最先端のゴルフ理論について語る当連載。今回のテーマは、コーチ同士の「横のつながり」について。
GD おふたりがコーチ業を一緒に組んでやることになったのはどういう経緯があったのですか?
目澤 25歳でコーチをやる前から、海外のセミナーなどを受講していたのですが、アメリカではコーチの意見交換が普通に行われていたことに驚いたんです。帰国後に自分がコーチを始めた時、コーチ同士の横の関係性が欲しいなと思っていた矢先に、大学の後輩だった幹仁が声を掛けてくれて、情報を共有しようとなりました。幹仁は性格的に何でも深追いする真面目なタイプなので、ウマが合ったんだと思いますね。
黒宮 みんなPGA(日本プロゴルフ協会)のティーチングの資格を取ろうとするけど、僕はそれよりTPI(タイトリスト・パフォーマンス・インスティテュート)だなと思って。それでTPIのレベル1を取る前に目澤くんに会って話を聞いたら、レベル3を取得したと聞いて、凄いなと思って。それでいろいろ話をするようになったんですよね。この業界を良くしていきたい、世界に通用する選手を育てたい、そういうビジョンに対して同じ熱量を持っていたんです。
GD 最初にコーチングしたプロ選手は誰ですか。
黒宮 梅山知宏と松田鈴英です。僕が一年早くプロコーチをやっていたんです。
目澤 僕が河本結を教えるようになったのは、その翌年ですね。
GD ツアーで最初の頃はどんな苦労がありましたか。
黒宮 当時、鈴英の帯同コーチとしてツアーに行った時は僕が最年少で、とにかくすれ違う人にみんなに挨拶していました。僕は鈴英のサポート役なので、とにかく選手が気持ちよくプレーができるようにと思ってやっていましたね。女子ツアーはチームで一緒に行動をするケースが多く、その中にはキャディも含まれていることが多いので、有能な人は年間で契約されていて、いいキャディさんに巡り合えなくて……。
目澤 キャディがいないんだっていう話はよく聞いていましたね。
GD 松田プロのキャディさんはどうしたんですか。
黒宮 以前、僕がゴルフを教えた、プロを目指していた人とかにお願いして、無償で担いでもらう形で回していました。
GD そういう大変な時期があって、今回、目澤さんがコーチとして松山英樹のマスターズ優勝のスタッフの一員に名を連ねたことは、喜びもひとしおでしょうね。
黒宮 めちゃめちゃ嬉しかったですよね。ほんと最初の3年ぐらいは二人でパンクしそうなぐらいやっていましたから。
GD 目澤さん自身、マスターズ優勝後に、同じコーチの方たちから声を掛けられたりしましたか?
目澤 青木翔コーチなどから、おめでとうと言っていただいて嬉しかったですね。デービッド・オー(※1)からマスターズ終了30秒後にメッセージが入っていたのにはびっくりしました。クラウド・ハーモンⅢ(※2)からもすぐにメッセージが来ました。彼らはコーチをお互いにリスペクトしてくれますよね。
GD 目澤さんが望んだ「横の関係性」が、いままさに広がってきているんですね。
(※1)デービッド・オー……パッティングを指導するコーチ。ジャスティン・ローズなど50人以上のツアープロを指導。コーチへの指導もしておりローリー・マキロイを指導するフィル・ケニオンも指導を受けた一人。(※2)クラウド・ハーモンⅢ……タイガー・ウッズの元コーチのブッチ・ハーモンの息子で、ダスティン・ジョンソンやブルックス・ケプカを指導するスウィングコーチ
目澤秀憲
めざわひでのり。1991年2月17日生まれ。13歳からゴルフを始め、日大ゴルフ部を経てプロコーチに。TPIレベル3を取得。2021年1月より松山英樹のコーチに就任
黒宮幹仁
くろみやみきひと。1991年4月25日生まれ。10歳からゴルフを始める。09年中部ジュニア優勝。12年関東学生優勝。日大ゴルフ部出身。松田鈴英、梅山知宏らを指導
週刊ゴルフダイジェスト2021年7月6日号より