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「ゴルフユーチューバー」と「プロキャディ」稼げるのはどっち? 気になるゴルフのお金事情

PHOTO/Hiroaki Arihara、Shinji Osawa、Tadashi Anezaki

ユーチューブでゴルフ動画を投稿している人はどれぐらい稼いでいるの? ツアーでバッグを稼ぐプロキャディの収入は? 気になる2つの仕事のお金事情を調査してみた。

「ゴルフユーチューバー」の懐事情

「動画を定期的に上げるのは大変!
ラクには稼げませんよ」(中井学)

無料で視聴できる「ユーチューブ」という動画サイトに、動画を投稿することで収入を得ているのが「ユーチューバー」だ。コロナ禍の影響で芸能人やアスリートなど、さまざまな著名人が独自のチャンネルを立ち上げており、世界には1年で32億円も稼ぐユーチューバーもいるほどだ。音楽、旅行、料理、教育、健康、ペット、ゲームなど、動画のジャンルはさまざまで、ゴルフの動画も爆発的に増えている。まずはゴルフユーチューバーの先駆けともいえる、三觜(みつはし)喜一プロに話を聞いてみた。

「ユーチューブは5年くらい前から始めましたが、今も毎日動画を上げています。ただ動画を上げれば、即お金が入るわけではありません。収益を得るためにはユーチューブへの申請が必要なんです」

ツアープロコーチの本格レッスン
三觜喜一 MITSUHASHI TV」

チャンネル登録者数: 約34万人
アマチュアの悩みを解決するためのノウハウをわかりやすく解説。絶大な支持を得ている人気レッスン動画で、下川めぐみなど女子プロも度々出演する

ユーチューブでお金を稼ぐには収益化の申請が必要なのだ。それには条件が2つある。チャンネル登録者数1000人以上、総再生時間4000時間だ。これをクリアしなければ収入は得られない。「チェケラーゴルフ」を立ち上げた、ゴルルの板倉由姫乃によると、

「主にレッスン体験記などをアップしていますが、毎回キャスティング(出演者の手配)が大変です。広告収入がメインなのですが、ゴルフや釣り、自転車など、趣味性の高いチャンネルは広告単価が少し高めだと聞いています。月1回まとめて振り込まれるだけなので詳細はよくわかりませんが……」

ゴルル板倉由姫乃のレッスン体験動画
チェケラーGOLF」

チャンネル登録者数: 約12万人
2年前にゴルル板倉由姫乃が立ち上げたチャンネルでレッスン体験記がメイン。コンセプトは「ゴルフ業界を盛り上げよう」。日大ゴルフ部出身のため、後輩の中西直人や小平智なども登場する

小誌にもたびたび登場する人気コーチ、中井学プロは1月に独自のチャンネルを立ち上げたばかりだ。

「ユーチューブは儲かる、そう思っている人が多いと思いますが、ラクに稼げるわけではないです。週1で動画をアップしていますが、企画立案、撮影、編集など、時間もコストもかかります。これが本当に大変。有名ユーチューバーのヒカキンさんが言っていますが『ゴールのないマラソン』そのものですからね」と中井プロ。

分かりやすい解説が人気
中井学ゴルフチャンネル」

チャンネル登録者数: 約25万人
今年の1月に立ち上がったチャンネルだが、すでに登録者数は24万人を突破。初心者から上級者まで楽しめるゴルフコンテンツが満載で、芸能人とのコラボ動画など話題性も高い

最後にとあるプロが匿名を条件に、ユーチューブによる収入を教えてくれた。登録者数約5万人で「月収40~50万円」ということだから、年間で480~600万円になる計算だ。

●ユーチューブで収益を得るには申請が必要
自分でアカウントを作成し、チャンネルを立ち上げただけでは収入は得られず、ユーチューブ上で収益化の申請をしなくてはならない。その主な条件が「チャンネル登録者数1000人以上」「直近12カ月間の総再生時間4000時間以上」だ。ほかに18歳以上であること、広告掲載に適した内容であることも条件に

●主な収入源は広告収入。ゴルフは単価高め
ユーチューブの収入源は大きく分けて「広告収入」「企業とのタイアップ動画」「グッズ販売」の3つ。このうちメインとなるのが広告収入で、再生前や再生中に流れるCMによる収入がそれだ。1回0.1円などと言われるが、登録者数やジャンルで単価は変わる。趣味性の高いゴルフなどのジャンルは広告単価が高いとされる

●機材や編集費などの制作コストがかかる
「動画制作は機材や編集作業など、時間もコストもかかります。たとえば10分の動画でも7~8時間はかかります。ですから簡単に作れるものではないんです。もともとテレビでレッスン番組をしていましたから、いい加減な動画は作れません。いい動画を作り続ける、これが大変なんです」(中井)

プロキャディの懐事情

「良くなければ25年も続きません。
ただ浮き沈みは激しいです」(清水キャディ)

続いては、気になる「プロキャディ」の収入について調査。まずは谷口徹や上田桃子、イ・ボミなど数多くのトッププロのバッグを担いできた一流キャディ・清水重憲さんに話を聞いた。

「正直にいえば、収入的にはそれほど悪くないと思っています。良くなければ25年も続かないですから。ただ、毎年収入はバラバラで浮き沈みは激しいです」

清水重憲さんはキャディ歴25年の大ベテラン。2007年には谷口徹と上田桃子のバッグを担ぎ、2人を賞金王&女王に導いた。現在は女子8割、男子2割で毎週バッグを担いでいる

さすがに年収までは教えてもらえなかったが、別のプロキャディが匿名を条件に契約形態について教えてくれた。

「収入源は2つあります。ひとつは基本給です。月曜から日曜までの1週間のキャディ費で10~15万円くらいです。決まった額があるわけではないですが、(賞金額が低い)女子プロのほうが少し高いかもしれません。あとは成績による賞金ボーナスです。これは男女とも同じで、優勝すると賞金の10%、トップ10なら7%、それ以下は5%。ですから選手の成績によって収入は大きく変わります」

選手が予選落ちしてしまえば、賞金ボーナスは出ないということだ。また、基本給のなかには交通費や食費、宿泊費などの経費がすべて含まれているという。清水キャディは、「1試合ごとにキャディ費でやりくりしなくてはなりませんから、交通費や宿泊費のコストはできるだけ抑えるようにしています。ただ、最近はキャディにもスポンサーがつくようになりました。プロとは金額がひと桁違いますが、実費をカバーできるのはありがたいです」

比較的“稼げる”職業とはいえ、けっしてラクな仕事ではない。「労働時間はみなさんが思う以上に長いと思います。たとえば女子の4日間大会になると、出場人数が多い初日や2日目は朝6時から夕方6時までコースにいることもざらです。ですので、体力勝負のところはあります。男女ツアーとも全国で行われますから、会場への移動も時間がかかります。そういう意味でも拘束時間は長めかもしれません」

最後に、先述の匿名プロキャディに年収についても教えてもらった。

「シーズンによって変わりますが、多いときは1000万円を超えます。ですが、少ないときは500万円くらいになることもあり、収入が安定しているとはいえません」

【プロキャディの収入源】基本給&賞金ボーナス
●基本給/10〜15万円(1週間・経費込)
●成績によるボーナス/予選通過:賞金の5%、トップ10:賞金の7%、優勝:賞金の10%


匿名プロキャディによると、「基本給は1週間で10~15万円ほど。賞金ボーナスは基本的に男子ツアーのほうが賞金が高いので割はいいです。ただ男子は4日間大会が基本で、バッグも重いですし、女子ツアーより肉体的にハードかもしれません」

賞金王&女王のシーズンは
ボーナスだけで1000万円超え!?

たとえばイ・ボミが年間7勝を挙げた2015年は、優勝賞金だけで1億2420万円を獲得。その10%と考えると、賞金ボーナスだけで約1200万円を稼いだ計算になる

キャディにもスポンサーが
つくようになった

「最近、ありがたいことにキャディにもスポンサーがつくようになりました。ポロシャツやキャップにワッペンをつけています。私だけでなく、キャディ仲間にも増えています。交通費や宿泊費などの実費に当てられるので本当に助かっています」(清水キャディ)

●ツアー中は車中泊。オフはゴルフ場でバイトする人も
「基本給に交通費や宿泊費が含まれています。ですので収入が少ないキャディは車中泊やコンビニ飯で経費を抑えることもあります。赤字になる場合もありますから。オフにゴルフ場でバイトするキャディも少なくないです」(匿名プロキャディ)

週刊ゴルフダイジェスト2021年6月22日号より