【目澤秀憲が見る欧州ツアーの現在地】<後編>「8Iで100Y打った次はPWで170Y、コースも多種多様… アジャスト能力が求められます」
週刊ゴルフダイジェスト
DPワールド(欧州)ツアーのルーキーイヤー12戦目にして初優勝を挙げた金子駆大。金子のコーチで、昨年同ツアーの解説を担当し、今年は帯同してツアーを見てきたツアープロコーチの目澤秀憲に、引き続き欧州ツアーの“現在地”を聞いた。
PHOTO/Hiroaki Arihara、Shin Araki、Getty Images


目澤秀憲
めざわ・ひでのり。1991年生まれ、東京都出身。日大法学部(ゴルフ部)卒業後、アメリカに語学留学し、日本人では数人しか持っていない「TPIレベル3」を取得。プロコーチとして松山英樹、河本結、永峰咲希など数々のトッププロを指導。現在も桂川有人、金子駆大などと契約、最新の理論と個々に合わせた指導で厚い信頼を得ている
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- DPワールド(欧州)ツアーのルーキーイヤー12戦目にして初優勝を挙げた金子駆大。金子のコーチで、昨年同ツアーの解説を担当し、今年は帯同してツアーを見てきたツアープロコーチの目澤秀憲に、金子の初優勝と欧州ツアーの“現在地”を聞いた。 PHOTO/Hiroaki Arihara、Shin Araki、Getty Images 目澤秀憲 めざわ・ひでのり。1991……
「毎週、コースが違うので求められることも違う。
準備をしてアジャストしていくことが大事」
さて、DPワールドツアーはどのようなフィールドだろうか。
「毎週コースが違うし、求められていることも違う。コントロールできないことが多すぎるとも思います。風が強すぎたり、雨も突然降ったり止んだりしますから」
リンクスタイプのコースは日本人にはなかなか難しいという。
「風の計算がつかないというのが一番。8番アイアンで100ヤード打ったと思ったら、ピッチングウェッジで170ヤードを打つなど、極端に言うとアゲンストとフォローでそのくらい違います。また、PGAツアーの平場の試合のコースだと比較的ロケーションが安定していますよね。DPは、アジアンスウィング、中東、南アフリカなど全然違うので、順応することはけっこう大変です」
そんな中で必要な技術は違ってくるのだろうか。
「もしあえて分けるとしたら、PGAツアーはグリーンスピードとコンパクションが安定して“硬く速い”ことがベースですけど、DPは“遅くて重い”グリーンもある。すると求められるボールの高さやスピン量などが微妙に変わってきます」
また、大会コースの距離も違う。
「金子選手が優勝したオーストリアのコースは、距離が6822ヤードで、標高は1200〜1300mくらいあった。そこで優勝スコアは18アンダー。1日が4アンダーペースです。日本では、中日クラウンズくらいかと思います。そう考えたら和合(名古屋GC)っていいコースですよね。こういうコースがDPには意外とあります。でも、PGAツアーにはこの距離で行う試合は存在しません。先ほども言ったように、風も常時8〜9m吹いていることも多いですから、そういう意味では、DPのほうがやる前に考えることは多い気がします」
ただし、必要な技術の違いを考えすぎることはあまり意味がないと目澤。
「技術の違いは出てくると思いますけれど、大きく自分のスタイルを変えてまでやる必要があるのかということは、いろいろな選手の帯同をしてきて思います。変えて上手くいったことがあまりない。自分たちができる準備をして、コースに対してどうアジャストしていくか。それこそが大事なのだと思います」
日本のコースでは、クリエイティブなゴルフが生まれにくいという意見もあるが、「確かに日本では、“同じ球を打つ”といった技術が必要かもしれません。でも、日本は日本で難しいんですよ。球がとにかく浮くので、そこにクラブなどをアジャストさせていくことが必要。結局、海外をベースにして日本に来ると難しいですけど、日本をベースにして海外に行くとこれもまた難しいということ。同じ球では通用しないですから」。
DPの選手たちの技術レベルはとても高いというが、こちらも日本同様、いかに“アジャスト”できるかが必要となる。「DPで成功したからPGAツアーで成功するかどうかはわからないですし、逆にPGAツアーの選手がDPで活躍できるかというとそれも何とも言えない。それは技術の差というより、自分のやるべきことをきちんと発揮できている選手が成績を出している気がしますね」。

「必要なボールの高さやスピン量が微妙に変わってきます」
オーストリアアルペンオープンでの金子のアイアンショット。すでに個性的なテークバックからダウンで顔が右を向く動きも話題になっているが、金子の強さは、コースを理解し、そこに自分を合わせる“アジャスト力”にある
「8Iで100ヤード打った次はPWで170ヤードを打ったり。横風もあります」
24年の全英オープンでは、強風のリンクスでのプレーで予選落ちに終わった桂川。今年のKLMオープン(オランダ)では3日目まで優勝争い。「そのコースもリンクスでした。日本人がなかなか上に行けないコース。本人も『そこで優勝争いできたことは成長だ』と言っていました」

“感覚派”が活躍するDPワールドツアー
「自分のゴルフスタイルを持った選手が多い」
コースや環境が選手の特性を育てると言われる。
「確かに、アメリカに比べると個性がある選手が多いかもしれません。システマチックにやっている選手もいますけど、案外まだ感覚派が多いのでは」という目澤。
気になる選手を挙げてもらった。
「けっこう面白い選手がいます。いい選手はスペインに多い。S・ガルシアやJ・ラームを見てもそうですけど“職人的”な要素を持っている若い選手もたくさんいます。アヨラやイダルゴもですが、LIVゴルフにいるデービット・プーチなども。スペインはナショナルチームも含めて育成がきちんとしているのかなとも思います」
近年、世界を股に活躍する若い日本人が増えたことも事実だ。
「サッカーのワールドカップを見ても、時代は進んだなと。野球の大谷翔平選手はもちろん、若い選手の海外での活躍はいろいろなスポーツで言えることです。ゴルフもそうです。先日の全米オープンでの久常涼選手を見ていてもすごいと思いました。DPから一気にPGAツアーに行ったので、日本のツアー(レギュラー)では勝っていないですから(笑)」
けっして臆さない若手選手たち。
「『いけるっしょ!』という若さの勢いは必要なスキル」と目澤は言いつつ、一番の要因はインターネット、SNSの普及だという。
「いいスウィングや世界のツアーを身近に見られる。いい情報を手軽に取れるようになった。トッププロ本人が発信するので何に取り組んでいるかもわかるし、真似もできる。知識として入れられるということが大きいです」
また、データも身近にある。
「プロは技術職なので最終的には自分で表現していかなければいけないけれど、僕らが学生のときと違って計測器があり、データを通じた比較対象があるのがいい。トラックマンなどが出てきて、Dプレーンなどで球の曲げ方、飛ばし方など、ある程度答えがわかったうえで自分で取捨選択できます」
そして世界への挑戦が、その吸収力を加速させるのだ。
金子や桂川には、いろいろな国を楽しむ気持ちもあるという。
「これも絶対必要だと思います。3年目になる桂川選手は、たとえば今年のドイツではオフィシャルではなく街のホテルに泊まったり、ドイツ車は運転が面白いからレンタカーを借りたり、経費なども含めて“探る”ことが楽しいそうです。また、DPにいる栄養士にお願いして体調をコントロールできるようになったそうですよ。それに、桂川選手はDPのキャディさんたちにも認知されていますし、金子選手も優勝したのですでに認知されています。そういったことも大事だと思います」
近年、日本の若手選手たちが挑戦し、結果を残してきた欧州ツアー。参戦するメリットは?
「性格も関係すると思いますが、石川遼選手や杉浦(悠太)選手のようにコーンフェリーツアーに行って頑張るタイプもいる。DPは国も違うしゴルフ場も全然違うので、そういうことも好きだという人にはいい場所だなと思います。LIVゴルフからトップ選手が出入りするようになったし、今後の状況次第で来年はまた違ったフィールドになるかもしれない。実際、試合展開も面白いことが多いので、アマチュアやジュニアの方にもU-NEXTで見てほしいツアーの1つです。DPで活躍することは大変ですけど、自分のスタイルならこういう舞台もある、という選択肢として知ってほしいです」
アンヘル・アヨラ・ファネガス

粗削りだがとにかく飛ぶ
スペインの21歳。「昨年ランク2位となりPGAツアーに参戦しているM・パボンのよう。細かい技術などが身に付けば、もっと伸びそうなので怖いですよね」
アンヘル・イダルゴ
わかりやすいドローとフェードの打ち分け
全米オープンでピンクのシューズを着用し目立ったスペインの28歳。「わかりやすいドローとフェードを打つ。こういう選手が日本にもっといてほしいです」

マルタン・クーブラ

とにかく“上手い”と感じる
フランス出身の23歳。昨年ターキッシュエアラインズオープンでツアー初優勝。「ものすごく飛ぶ、という選手ではないけれど、とにかく上手くて魅力的です」
DPワールドツアーにチャレンジ!
「他のツアーの選手も参戦しフィールドが厚く、試合展開も面白い。選択肢の1つになります」
「僕が言うのもおこがましいですけど、広い視野でゴルフを見てほしいですね。たまたま僕はコーチしていた桂川選手や金子選手がDPで優勝することができてよかったと思うと同時に、僕自身の勉強にもなっています」

週刊ゴルフダイジェスト2026年7月21日号より


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