【インタビュー】河本力「練習したいって強く思えるのは、状態が良いとき」

今週、国内男子ツアーがいよいよ開幕。今年注目のプロ4人に、オフの過ごし方、ゴルフへの向き合い方、今年の目標をインタビュー! 3人目は、男子ツアーきっての飛ばし屋・河本力。
PHOTO/Hiroyuki Okazawa、Hiroaki Arihara、Tadashi Anezaki、Shinji Osawa

姉からもらったアプローチのヒント
「ゾーンで打つ」
河本力は飛ばし屋だ。体の大きさも相まって豪快なイメージに見える。明るく楽しいが、とても人を気遣う人間でもある。
昨年は夏頃から結果が出なくてとてもつらかった。開幕少し前からアプローチが怖くて打てなくなる感じがあった。“飛ばし屋”には、ムリにでも狙える楽しみと、グリーンを外すリスクがある。それらをアプローチで支えていた。
「アプローチは大学時代から自信があったんです。でも、よりスピンをかけるため、ヘッドをスティープに入れていたらトップしたり、ザックリも出るようになりました。ショットにも影響してきて……」
一人で悩んでいたとき、横浜ミナトチャンピオンシップの試合に姉・結が応援に来た。そこで力を見た瞬間、「アプローチの距離感、クラブの入れ方がおかしい」と指摘されたという。
「自分でも薄々と感じていました。でも、僕、やり続けることは得意なので、そうしていたら本当におかしくなった。でもそのとき姉が『ゾーンで打つ感じがいい』と画期的なヒントをくれて。このオフの合宿は、一日中アプローチを1人で練習することもあります。やり続けること、得意なので(笑)」


ドライビングディスタンスは3年間ずっと1位だ。「それだけ飛べば、海外で活躍できるよ」という言葉をあちこちで聞くだろう。それに対し河本は嫌気がさしているのではないか。「そんなことはない」とやさしく笑い、「レジェンドの方などに言われるのはめっちゃ嬉しいですよ。逆に、日本できちんと土台を作って行けって言ってくださる方もいて」。河本の心遣いはこういう言葉に出る。
「大変なときはどうしたって大変。そういうときは……練習ですね! めっちゃ球を打つ(笑)。僕は人を受け入れるほうなんです。でも、自分に合わないものの判断ができていなかった。いろいろと変えてみたことが裏目に出ていました」
しかし、変えること自体は全然怖くないと河本。
「調子が悪くなっても、変えようとしたことに関して、間違いはなかったと思います。僕の所属先の大和証券グループのキャッチコピー『常に変化、さらに変化』みたいな感じ。いい言葉ですよね」
長年一緒だったコーチといったん距離を置いたこのオフ。トレーナーたちと相談しながら、自主練習でアプローチの改善に集中的に取り組んできた。昨季からお願いしている管理栄養士が合宿にも来て徹底管理。豪華なバイキングを目の前にしても「油モノは選びません」と和食中心の食事。「体調管理で風邪もひかなくなりました」。
沖縄、宮崎、最後は地元愛媛で合宿してシーズンを迎える。
「練習したいってこんなに強く思えるのは、状態がよいとき、取り組みたいことが明確なとき。だから今の自分はイケてるなって」
髪にパーマをかけた河本力。少し大人びた感じがする。
「忙しくて美容院に行けなかっただけです。周りもいいねって。何となく気分も変わりますよね」
今年の目標は?
「今年25歳になります。25でアメリカに挑戦することを昔から決めていた。そのステージに立つためにも絶対賞金王になっていないといけない。PGAツアーのQTは受けようと思っていますけど、そこにもつながることです」
今、河本力の顔は明るい。そして強さも加わった。2025年、決意を持って戦っていく。
週刊ゴルフダイジェスト2025年4月22日号より