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天本ハルカが教わったこと<前編>「球を曲げるには“真っすぐ”を知ること」

5度のプロテストを経て、プロ入り3年目の今季、初優勝を果たした天本ハルカ。プロ入り以降は順調に階段を上がっているように見えるが、その躍進の裏には、天本を支える多くの“師”の存在があった。そんな天本が大切にする教えとは?

PHOTO/Tsukasa Kobayashi THANKS/ザ・クラシックGC、ハミングバードゴルフガーデン

天本ハルカ 1998年生まれ。福岡県出身。「黄金世代」の1人で、4月のパナソニックオープンで世代15人目の優勝を遂げる。テレビで見た宮里藍に憧れてゴルフを始めた

  • 5度のプロテストを経て、プロ入り3年目の今季、初優勝を果たした天本ハルカ。プロ入り以降は順調に階段を上がっているように見えるが、その躍進の裏には、天本を支える多くの“師”の存在があった。後編では、現在の師・伊澤利光に教わったことや、ジュニア時代から大事にしている練習法を教えてくれた。 PHOTO/Tsukasa Kobayashi THANKS/ザ・クラシックGC、ハミングバードゴルフガー……

黄金世代のライバルたちと
切磋琢磨

天本が本格的にゴルフにのめり込んだのは小3の頃。地元でジュニア向けのゴルフスクールがあることを知り、親に頼み込む形で入門した。

「スクールは高学年向けでしたが、無理にお願いして入って(笑)。ここで基礎を教わってラウンドデビューも果たし、初試合も経験しました」

初めて出場した試合の結果はなんと3位。低学年向けの男女混合マッチだったが、これが天本の将来を決めた。

「銅メダルをもらったのは嬉しかったですが……。2位が清水大成さんで、そこからしばらく“打倒・清水大成”でしたね(笑)。その後、試合は年齢や性別ごとに分かれていることや、18ホールで開催されること、九州大会や全国大会まであることを知って、『やってやるぞ!』って」

早くも翌年に九州大会へ出場していた天本の最初の同性のライバルは三浦桃香。その後、大里桃子や勝みなみ、新垣比菜など、いわゆる黄金世代の九州組と出会い、火花を散らすことで、負けん気にさ
らなる火が付いた。

順調に階段を上がり18歳を迎えた2016年に初めてのプロテストを受けるも4回連続で失敗。5回目の挑戦となる21年、ようやく扉をこじ開けた天本だが、4回の失敗は決して無駄ではないという。

「子ども時代からの友達でありライバルでもあるので、彼女たちが続々とプロ入りすることに焦りはありました。でも今となってはこの時期があったからこそ、安定性や粘りというのがあるのかなって」

プロになるにあたり「子どもたちが読めるように」と本名の遥香をカタカナ表記に変えた天本。何も知らない小3の遥香にゴルフを教えたハミングバードゴルフガーデンの内田多栄コーチが「本当に真面目で、黙々と練習する子でした」と言うように、ハルカには「これ」と決めたら最後までやり通す根気がある。高く跳ぶには、それだけ深く屈む必要があるのだ。

ジュニア時代からの友人の勝みなみと

球を曲げるには
「真っすぐ」を知ること

クラブを握ったばかりの少女が叩き込まれたのは、スクエアの感覚。本格的な上達を目指す天本に、当時のヘッドコーチである近藤元治さんは“真っすぐ”の大切さを事あるごとに説いたという。

「近藤先生は『僕はドローヒッターが好きで遥香もドローが合うだろうけれど、球の曲げ方を知るには、真っすぐ飛ばす方法を知らないといけない』とよく言っていました。試合やプレッシャーのかかる場面でストレートボールは右にも左にも行くリスクはあります。ただ、これを知らないとドローやフェードがなぜ出るかは理解できません。その後スウィングは伊澤(利光)さんに教わることになりますが、悩んだら立ち戻る基準として、先生の教えは今でも強く私の中に残っています」

フェード全盛ともいえる現在も師匠から教えてもらったドローを貫くが、アドレスやグリップはほぼスクエア。つかまえ方さえ知っていれば、ニュートラルなポジションのほうが安定したドローボールを打てるというわけだ。

近藤コーチは「ゴルフだけでなく生活態度や礼儀なども教えてくれました」と天本。プロ入り後もたびたび叱咤し慰めてくれたが、昨年他界。今でもその教えは強く残るという

持ち球はドローだがグリップはスクエア

ジュニア時代からのドロー打ちといえばストロンググリップが定番だが、意外にも天本はスクエアグリップ。「スクエアに握り、腕のローテーションで球をつかまえるというのが、近藤先生の教えでした」(天本)

わき腹の縮み具合を左右均等にする

調子を崩すと軸が左に傾くという天本の真っすぐ立つコツは、左右のわき腹の形を同一にすること。「こうすることで、肩のラインもスクエアになります」(天本)

左右均等でないと軸が傾く

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  • 5度のプロテストを経て、プロ入り3年目の今季、初優勝を果たした天本ハルカ。プロ入り以降は順調に階段を上がっているように見えるが、その躍進の裏には、天本を支える多くの“師”の存在があった。後編では、現在の師・伊澤利光に教わったことや、ジュニア時代から大事にしている練習法を教えてくれた。 PHOTO/Tsukasa Kobayashi THANKS/ザ・クラシックGC、ハミングバードゴルフガー……

週刊ゴルフダイジェスト2024年8月13日号より