【イザワの法則】Vol.43 調子がよかったときのドライバーはとっておきましょう
新しいモデルが発売されると、つい「こっちのほうが飛ぶのでは」と思ってしまうのが、ゴルファー心理というもの。しかし、常に最新モデルを使うことができるプロも、同じように考えるのだろうか
TEXT/Daisei Sugawara ILLUST/Kenji Kitamura THANKS/福岡レイクサイドCC(PGM)
ゴルファー100人を
100人とも救うクラブは存在しない
本格的なシーズンインを迎えるこの季節は、各メーカーの新商品が出そろう時期でもあります。とくにドライバーは、消費者であるアマチュアゴルファーにとって、一番興味があるカテゴリーだと思いますから、メーカーも力の入れ方が違います(笑)。毎年、「低重心」だとか、「深重心」だとか、何かしら流行りの傾向がありますが、今年のラインナップを見ると、どうも「大慣性モーメント」というのがトレンドみたいですね。
大慣性モーメントというのは、要するに「どこに当たっても真っすぐ飛ぶ」ということですから、アマチュアにとってはありがたい機能です。ただ、よく言われるように、大慣性モーメントクラブは重心距離が長くなりがちなので、フェースがターンしにくい(つまりつかまりにくい)という弱点を持っています。最新モデルは、その点もメーカーが研究して、アマチュアにとってのつかまりやすさを残しつつ、ミスに強いドライバーになっているとのことですが、果たして本当にそうなのか。これだけは、実際に使ってみないとわかりません。誰にとってもやさしいクラブというのはありませんから、結局は「相性」の問題になってきてしまうのが、難しいところです。
絶好調時のクラブは
スウィングのバロメーターでもある
アマチュアのドライバー選びで、ひとつだけアドバイスするとしたら、なるべく「つかまるヘッド」を選ぶようにしてください。というのは、「つかまらないヘッド」をシャフトでつかまるようにするのは、ほぼ不可能だからです。逆に、つかまるヘッドは、シャフトで「つかまらないようにする」ことは可能です。それに、つかまらないクラブで、つかまえようと無理して練習していると、スウィングを壊す原因にもなりますから、もし、つかまらないヘッドを選んでしまったら、早めに手放すことをおすすめします。
それと、今はクラブの買い替えのときに、古いクラブを中古ショップに売って、新しいものを買うというスタイルが定着していますが、ゴルフの調子がよかったときに使っていたドライバーは、モデルが古くても手元に残しておくほうがいいです。新しいモデルが必ずしも自分に合うとは限りませんから、そういうときに「戻れるクラブ」が大事ということですね。ドライバーを新しくして、仮にゴルフの調子が悪くなったとしても、それがクラブのせいなのか、自分のスウィングのせいなのかは、判断が難しいことがあります。そういうときに、絶好調のときのドライバーに戻してみて、真っすぐ飛ぶなら不調はクラブのせい、真っすぐ飛ばなければスウィングのせい、とはっきり見分けることができるというわけです。
プロは常に最新モデルを使っているイメージがあるかもしれませんが、それがどうしても合わないときは古いモデルを使うこともよくあります。ジャスティン・ローズは、今年の初めに、「M1」(テーラーメイド)を使っていましたしね。「戻れるクラブ」の大事さは、プロもアマチュアも同じです。
「プロでもフェアウェイウッドは長く使う人が多い。
それだけ自分に合うクラブは少ないということ」
やみくもにクラブを売るのはナンセンス!
ドライバーは、ヘッド単体の性質としてつかまりやすいものとつかまりにくいものがある。最近は弾道調節機能が付いていることも多いが、最初に数発打って「つかまらない」と感じたものを劇的に「つかまる」ものに変更するのは難しい。選ぶときはこの点を重視したい
伊澤利光
1968年生まれ。神奈川県出身。学生時代から頭角を現し、プロ入りしてからは、プロも憧れる美しいスウィングの持ち主として活躍。2001年、2003年と2度の賞金王に輝く。また、2001年、マスターズで日本人最高位の4位入賞(当時)。現在はシニアツアーを中心に活躍中
月刊ゴルフダイジェスト2024年6月号より