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【インタビュー】中島啓太<前編>「焦らず、自分のペースで」

昨年の日本男子ツアー賞金王、中島啓太。今シーズンはDPワールドツアー(欧州ツアー)を主戦場に戦い、参戦6戦目にして早くも「ヒーローインディアンオープン」で優勝を遂げた。久しぶりの母国日本での外旋試合を前に、意気込みと、優勝した試合のことについて聞いた。

PHOTO/Getty Images、Hiroaki Arihara

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4月25日から、欧州と日本ツアーの共催試合「ISPS HANDA 欧州・日本どっちが勝つかトーナメント!」が太平洋C御殿場Cで開催される。

中島啓太は昨年12月の日本シリーズJTカップ以来、4カ月ぶりに日本での試合に参戦する。意気込みとファンへのメッセージを聞くと、

「日本で今年プレーするのはおそらくこの試合だけの予定なので、たくさんの方に見に来てほしいですね。昨年と比べて体もそこまで大きくなっていないですし、ゴルフもそこまで変わってないと思いますkけど(笑)、日本ツアーにいたときよりは明るくなったと思うので、キャディさんと楽しく会話しながらプレーしている姿も見てください」とユーモアを交えて話をしてくれた。

中島啓太は一見クールだ。プレー中も喜怒哀楽を見せない。いや、これはセルフマネジメントとしてあえて見せないようにしているのだ。しかし、いったんコースを離れれば、お茶目で“可愛がられ”キャラの一面ものぞかせる。本人いわく、「姉がいるのでこうなった」そうだ。

欧州ツアー参戦中はどのような生活をしているのか。

「すごく楽しいです。先輩方の存在はすごく大きい。川村(昌弘)さんなんかは弟みたいな感じで面倒を見てくれますし、あのコースはこうで、あの国はこうだよってすごく教えてくれるのも心強いんです」とここでもすっかり”弟キャラ“のようである。

欧州参戦組「先輩たちの存在は心強い!」

「とても楽しい生活です。川村(昌弘)さんやキャディのメグさん(坂井恵)、(星野)陸也さんとキャディの薬丸(龍一)さんもいて、選手ラウンジでも一緒ですし、1週間に1度くらいは皆で食事にもいったりします」(インスタグラム@keita.nkjmより)

実際、23歳の中島啓太は若手であり、「年を聞かれて23と言うと、『スーパーヤングだね』みたいに言われて。自分が年下のほうだというのを現地で改めて感じて、まだ焦る年齢でもないんだと思いました。もちろん、今21歳の久常涼選手が、ヨーロッパを経てPGAツアーでもかなり頑張っていますし、それも刺激ではあるんですけど、僕はまだ焦らずに自分のペースでやっていこうと考えています」と、若さの特権を楽しみ、前進する力にしているようでもある。

今年2月にオマーンで、星野陸也が日本人4人目の欧州ツアーでの勝利を挙げたときも、「目の前で陸也さんが優勝するシーンを見られましたし、(キャディの岡崎)錬さんとも『僕たちも勝ちたいですね』という話もしたんですけど、エージェントの方や周りの皆が、勝つ準備をゆっくりしていけばいいんじゃないと言ってくれたので、ある程度マイペースにやっていたんです」とほほ笑む。

しかし、中島啓太は、参戦6戦目のヒーローインディアンオープン(DLF G&CC)で日本勢5人目の欧州ツアー優勝を飾った。初日からトップを譲らない完全Vだった。

「もっともっと苦戦していくんだろうなという環境のなかでプレーしていたので、結果が出たのは思ったより早い。なぜ勝てたのかを今もずっと考えているんです。もちろん調子はよかったんですけど、答えがわからなくて、(ガレス・)ジョーンズコーチに連絡して聞いた。3月頭にオーストラリアでのナショナルチームの合宿に1週間参加させてもらい、そこで自分の課題を見つけてしっかり向き合えて克服できたこと、前週のシンガポールクラシックでは予選通過ギリギリでしたけど、予選通過のための1ピンのバーディパットを決め切れたこと、インドでは初日が終わってドライビングレンジでコーチとビデオ通話などしながら話し合いをしたこと、など細かな調整があってこそ優勝できたということに行き着きました。インドのナショナルオープンに勝てたのはすごく光栄ですし、川村さんからも難しいコースだと言われたショット力が試されるコースで優勝できたのも嬉しかった。でも最終日のバックナインで40を叩いて。上がりのほうでスコアをたくさん落としてしまった」

中島はいまだ勝因について考え続けている。これも分析を次の準備につなげる中島啓太らしい姿勢である。

「とてもトリッキーで、いろいろなマネジメントのパターンが考えられるコースでしたけど、自分のマネジメントをしっかり貫けました。そこには自信をもってプレーできましたし、そこにショットも狙って打てました」

試合中、本も読んでいたという。

「デジタルではなくて買って読みます。読書が好きなわけではないんですけど、『覚悟の磨き方』という本を。『不安と生きるか理想に死ぬか』というページがあり、なんだか好きで買って(笑)。他にも、『人間である意味』という話があり、『人は何のために生きているのかで決まる。心に決めた目標のない人間は、もはや人間ではありません』と。この文章がすごく心に刺さりました。それにしてもインドは本当にゴルフファンが多くて盛り上がってくれましたし、とても楽しかった。現地の日本人の方も10人くらい来てくれました。僕はあまりお腹が強くないのですが、カレーも食べましたよ。お腹、ちょっと痛くなりましたけど、美味しかったです」

ゲン担ぎはしない。生活のルーティンもあえて作らないようにしているという中島。

「何にもしばられずに自由にやりたい。ジャイアンツの菅野(智之)選手も、ルーティンを作らないのがルーティンだと教えてくれました。自分も好きなときに好きなことをやるつもりです」

案外、この姿勢が海外での勝利に導いてくれたのかもしれない。

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週刊ゴルフダイジェスト2024年5月7・14日合併号より