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【開幕直前インタビュー】鍋谷太一「ゴルフは地味だけど、しゃべりはイケてると思います」

今週、いよいよ国内男子ツアーが開幕する。若手の台頭もあり見ごたえのある試合も、魅力ある選手も増えている男子ツアー。今回は若手の注目株4人を直撃! 3人目は、ナニワの苦労人・鍋谷太一。

PHOTO/Tadashi Anezaki、Hiroaki Arihara、Hiroyuki Okazawa、Blue Sky Photos

鍋谷太一 なべたに・たいち。1996年大阪府出身。8歳でゴルフを始め、大阪学芸高1年の12年、16歳でプロ宣言。アメリカのミニツアーやアジアの下部ツアーにも参戦、22年に初シード獲得。昨年は初優勝を挙げ、賞金ランキング7位と活躍。パーキープ率は48位から6位、リカバリー率も87位から9位に上がった

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「“陽の目を見ない”代表として、諦めない強さを伝えたい」

高校生プロとしてデビューした鍋谷太一は、自身を“陽の目を見ない”プロゴルファーランキング1位だと真面目に語る。

「僕は下積みが長かった。下積みがない選手はスター選手になるべくしてなると思うんですけど、これはゴルフだけではなく、頑張っているけど上手くいかない人はたくさんいると思うので、そういう人たちの希望になりたいんです。それが僕の夢です」

プロ11年目を初シード選手として迎えた昨年。夏場に2週連続3位とし、迎えたカシオワールドオープンでは17、18番の連続バーディで初優勝をもぎとった。

「昨年、絶対達成したい目標は日本シリーズに出ることでした。次にツアー優勝。優勝は運もありますけど、日本シリーズ出場は実力だから。結果的にどちらも達成できたのですごくよかったです」

自分の立てた目標を達成するのは小6以来だと笑う。曖昧にしていた時期もあったが、目標を明確にしたほうが結果につながると感じている。

「一昨年は賞金ランク45位でシードは取れたものの、上との差を感じたんです。シード選手のなかにも、15位くらいまでと30~35位くらいまで、そしてシードギリギリまでとレベルの差があるなと。僕は一番下です。そこで何が違うのかとスタッツを見て、パーオン率や平均パットなど20位くらいの順位の部門もあったけど、パーキープ率が48位と下のほうで、ボギーを打っている回数が多いことを実感。フェアウェイキープ率やパーオン率はそれなりだから、やはりアプローチが課題。確かに昔から苦手意識があった。本当にたくさん練習しました。フェアウェイから打つ基本的なものです。こういうふうにクラブを使ったらヘッドがいい入り方をするなと自力で考えていったんです」

アプローチ練習を5割から7、8割へ増やし、パーキープ率が6位と本人一番の上位部門に。分析した課題を克服でき、結果にもつながったという。

鍋谷はデータで自己分析することが好きだ。小学生の頃から自分で考えてそうしてきた。

「たとえば3パットはプラス1でOBはプラス2とします。スコアが80で3パットが2回、OBが1回あったら、そのミスがなければ76。76で回れる力はあるんだなと。そのスコアなら試合で2位だったなと、自信がついていくんです」

数字から自信を生み出していく。

「データは間違いないもの。想定や予想に対して、こうです、と事実を言ってくれている。だから一番わかりやすい。もちろん感覚も大事です。でもそれと理論というか物理的な考え方を融合させるのが一番大事です」

感覚派でもあるという鍋谷。

「だからアプローチもややこしいのは得意なんです。でもシンプルなものは、正しい体の使い方やフェースの使い方などが大事ですよね。昨年はショットの調子はよくなかったんですけどショートゲームに助けられました」

最近では、ギアーズを使って練習もしている。このオフの課題はアイアンショットだ。

「全体的に不安定でパーオン率が低くなってしまった。ギアーズでよかったときのデータと比べながら正しい体の動かし方などスウィングの大事なところを理解します。特に体重移動。右から左にきちんと乗っていくようにしたいんですけど、右に体重が乗れていないんです。数センチレベルの話ですけど、それだけで全然変わるので」

「今年はアイアンショットを磨きました」

今年はパーオン率が課題。右へしっかり体重が乗るよう、ギアーズも使ってチェックしている。「今は意識したらできるレベルに。練習ではできる回数が増えているので、体を慣らしていく感じです」

鍋谷はこれまで、何度もゴルフを諦めようと思った。

「上手くいってないときは本当にしんどかった。頑張っても報われない感じがあった。でも諦めなかったから今があるんです。だから頑張ればいいことがあると証明していきたいんです」

23歳のとき結婚した奥さんと出会ってから、また一段と、頑張ろうと思えたという。

「そのときすごいしんどい時期でしたけど、リラックスできて元気が出た。それで頑張れた。3歳になる長男が、やる気スイッチをもう1つ入れてもくれましたね」

今年の目標は?

「日本シリーズJTカップに優勝すること。30人しか行けないし、見たことのない景色でした。優勝スピーチは全員の前で話をするんですけど、29人が悔しい思いをしているなかでしゃべれるので、いいなあと(笑)」

同級生の星野陸也が欧州ツアーで優勝したことにも刺激を受けた。

「将来的には海外の試合に挑戦して陸也みたいな活躍はしたいと思います。そして日本のゴルファー10人答えよ、といったら、それに入るような選手になりたい。それはすごく高い目標ですけど、小さい頃からの夢ではあります」

まだ27歳。鍋谷の野望はきっと、男子ツアーを面白くする。

「僕のゴルフって地味なんですよ。だからここを見てというのは……でも他の人、いや陸也よりはしゃべりは上手いと思いますね(笑)」

「ゴルフは地味(笑)。でも“しゃべり”はまあイケると思ってもらえたら」

「とにかくじわじわっとね、なんかちょっとしゃべりよんなこいつ、と思ってくれたらそれでいいです」と関西弁で締めてくれた鍋谷。プレーはもちろん言動にも注目したい

週刊ゴルフダイジェスト2024年4月9日号より