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【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.160「流儀」の神髄

KEYWORD 奥田靖己

高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。

PHOTO/Tsukasa Kobayashi

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男子も女子も、第一線で活躍するプロゴルファーの低年齢化にますます拍車がかかっていますが、背景には情報化と指導法の変化があるように思います。

そらもう全然違いますね。だいたいスウィングコーチという言葉自体が、僕らの時代にはなかったですから。

ジュニアの頃なら、学校の先輩に聞くとか、近くにある町の練習場のレッスンプロに習うとか、そういった方法でゴルフを覚えていき、その後はゴルフ場に研修生として入り、技術を磨く修業をすることになる。このときに、どのゴルフ場を選ぶかは、たとえば“我孫子流”やとか“廣野派”やとか、自分はどの流儀でやりたいのかということが根底にあるわけですよ。

流儀いうんは技術だけやなしにプレースタイルとかゴルフの全部を含めたものであり、それはどんなゴルファーになりたいんかいうことに通じます。


ゴルフのスウィングだけやなく、普段のラウンドの回り方も含めた話になってくるから、「うちの流儀でやっているやつにプレーの遅いのはおらん」いうようなことになる。つまり、卑近な言い方をすると、どこで修業をするかという選択は、何をカッコいいと思うかということに通じるいうことです。

でもたとえば、今の子らは、「タイガーがカッコいい」とか言うけれど、タイガー個人の功績はずっと残ったとしても“タイガー流儀”いうものはありません。それやったら、どういうプロになりたいかと聞かれると、「世界で活躍できるプロになりたい」と言う子は多いですね。

でもその先にあるのは“成績至上主義”で、目的を達成するためには、「このコーチはアカンから」いうて1年に2回も3回も代えるいうこともする。

習うときにそういう主義でやるんか、流儀を通してゴルフ自体を本当に勉強したいと思ってやるんかということです。

僕なんかは、「朝起きて、何もせんとポンと打ったらど真ん中にドローでいきたい」とか、「今日はフェードの気分」とか、「素振りを一回もせんとチョーンと長いもんが打てるか」とか。そういうのが好きやったから、今の師匠のもとに弟子入りして、ずっとその流儀でやっているわけです。

「『流儀』いうんは、どんなゴルファーになりたいんかいうことに通じます」

奥田靖己

奥田靖己

おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する

週刊ゴルフダイジェスト2024年1月2日号より