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【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.795「多くの人に見られることは、成長できるチャンスだとプラスに変換するといいですね」

KEYWORD 岡本綾子

米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。

前回のお話はこちら


アマチュアの杉浦悠太選手が優勝しましたが、最終組の相手2人がパットを外すなど、組み合わせに恵まれた杉浦選手にはゆとりがあったように見えました。誰と組むかでスコアが変わるものなのでしょうか?(匿名希望・43歳・HC13)


ゴルフ場は自分がプレーしている組だけのためにあるわけではありません。

ある組のプレー進行が遅いと後続の組が大渋滞を起こすことになってしまいます。

一緒に回っている組の中でも、プレーの早い人遅い人がいたりゴルフの内容はさまざまです。

もちろん、誰と回るかということによるプレーへの影響はプロもアマも同じようにありますし、相手が初体面の人なら、気を使ったり緊張したりするのも同じです。

ただ、1人だけでラウンドする競技があれば、組み合わせによってプレー内容が左右されることがないのでは? とちょっと変わった視点で質問されてきていましたが、ゴルフは個人競技ではありますが、これは非現実的な話なのでお答えしづらいです。

1人でラウンドする機会は非常に少ないとは思いますが、もし仮に単独ラウンドしている自分がいるとしましょう。

1人で3つのボールを使い1人3役を演じてプレーしていく様子を想像してみてください。

Aさん、Bさん、Cさんとキャラクターを立て、それぞれの気持ちになって打っていく。

そんなに要領よくできないかもしれませんが、18ホールを終えたときにはそれなりに3人の成績が出るはずです。


その結果、Aさんが優勝してCさんが一番悪かったとしても、プレーしたのはあなただから勝ち負けもありませんし面白くありませんよね。

しかし、1人1球でラウンドしたとしても仮想の相手を立ててプレーすることはできると思います。

練習ラウンドなどで自分の中にいる第三者と回っている感覚がありました。

ティーイングエリアに立ってホールを見渡し、ここはどう打っていこうかと考える際に、「あの人だったらこのポイントを狙い、セカンドはこの球筋でピンの右側から攻めていくだろうな……」といった想像を働かせることもできますよね。

そういう想定と実際の自分のプレー結果とを比較したり参考にすることで、攻略プランを練ることもできます。

練習でも試合でも自分を誰かと比較することが向上につながるヒントになることもあります。

また人間は、他人との比較が刺激になって向上し、他人の目線があってこそ技術が上達するという面があります。

だから一緒に回る相手はいないよりいたほうがいいのです。

競り合うほどお互いの実力が接近していればなおさらですし、もしギャラリーが多くなれば多くの視線を浴びています。

プレッシャーになるかもしれませんが、それは重荷だけでなく応援にもなる。

大勢の観客の眼は、成長を促すチャンスとも考えられますよね。

とはいえ、一緒に回るプレーヤーとの波長が合わないことは珍しいことではありません。

組み合わせによって、その日のパフォーマンスが左右されることも否めません。

最大の難問はスロープレーヤーの存在かもしれません。

今は選手1人ずつの持ち時間を計測され、個別にペナルティが科されるようになっていますが、かつては連帯責任でその組全員がペナルティの対象にされました。

やはり一緒にラウンドしている仲間がいるのですから、プロやアマ関係なくゴルファーとして気配り目配りを忘れたらいけませんよね。

スロープレーヤーは自分のことしか考えていないので、ラウンドのリズムも悪くなりますから、やはり一緒になると気が重いといいますか、ちょっと気持ちが上がらないのはあるかもしれませんね。

余談ですが──ずいぶん前に、あるプロ野球選手がオールスターで「子どものころからテレビで見てきた名選手と一緒にプレーするのはキンチョーした」と言っているのを耳にしたことがあります。

でも、今のプロゴルファーの場合は「一緒にやってた先輩とのラウンドなのでリラックスしてラウンドできた」ということをたまに耳にします……。

大なり小なり憧れはあると思いますが、良い悪いではなく、昔のように過剰なまでに憧れすぎない選手が増えたことが、若くして優勝する選手が増えてきた要因の一つなのかもしれませんね。

「見られることが多い反面、一人の時間をとても大切にしています」(PHOTO by AYAKO OKAMOTO)

週刊ゴルフダイジェスト2023年12月26日号より

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