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1試合開催するのに10億円! 女子ツアーのスポンサー事情<トーナメント編>

PHOTO/Tadashi Anezaki

トーナメントを主催したり、プロの活動を支援したりと、プロゴルフ界にとってなくてはならない存在である「スポンサー」。しかし実際にどれほどの金額が、どのような形で動いているのかはあまり知られていない。そこで今回は、気になる女子ツアーのスポンサーにまつわるお金のあれこれを調査。第一弾はトーナメントを主催する企業に話を聞いた。

トーナメントを主催するのに
かかる費用は?

2020年はコロナ禍における「開幕戦」として無観客で開催されたアース・モンダミンカップ。女子ツアー最高の賞金総額2億4000万円がかけられる大会だったが、今年は6000万円増額され、賞金総額3億円に。

その数字も驚きだが、実はトーナメントを主催するにはこれ以外にも多額の経費が発生する。大会事務局によると、会場の設営費用に運営費用、テレビ中継の費用にプロアマの開催費など、すべて合わせて約7億円。賞金を加えると、実に10億円以上の費用がかかるという。

昨年は無料ネット中継という新たな試みが行われ、大会期間中の総視聴回数は868万回にも上ったが収入はゼロ。それにも関わらず賞金総額を増額したのはなぜか。

「世界中から選手が参加したくなるような賞金設定にして、大会のグローバル化を目指すとともに、ゴルフの裾野を広げ、選手層のレベルアップを図り、ゴルフ界を盛り上げていくことを期しております」(アース製薬広報)

ちなみに、今年の大会でもインターネット中継を予定しているが、「昨年とは異なる形で実施し、有料にしたいと考えています。詳細が決まりましたら公式ホームページでご案内いたします」。

大会の規模に比べれば微々たるものかもしれないが、我々も視聴することで女子ツアー運営の一部を担う“スポンサー”になれるともいえるのではないだろうか。

賞金以外の経費
(アース・モンダミンカップの場合)

場内外の設営物・看板等……2億円
会場内のスタンドや看板、順位表示板など、ゴルフ場内外に大会のために設営される設備やポスター、駐車場や駅などに設置する案内板も含まれる。重機が入って専門業者が作業するため、経費のなかで最も多くの費用がかかる。

中継関連費用……1億円
テレビやネット中継に関する経費。スポンサーが支払う経費によって、我々は毎週のように家のテレビやネットで試合観戦ができているのだ。中継の合間に放映されるテレビのCM料金なども含まれているそうだ。

競技運営……9000万円
滞りなく競技を進行させるためにもお金と人材が必要。これらの経費に加えて、トーナメントでは多くのボランティアが参加し、大会を支えている。

JLPGA公認料……700万円
主催企業がJLPGAに支払うお金。JLPGAの規定により700万円と定められている。トーナメントの開催可否の最終的な決定権は主催者にあり、中止しても返還されない。

プロアマ開催……3000万円
ゲストの前日の宿泊費・交通費・選手への謝礼金なども含む。JLPGAの規定する選手への謝礼金は通常5~6万円だが、今年のアース・モンダミンでは月曜開催(予定)のため10~30万円の幅を持たせて独自に設定しているという。

ゴルフ場・ギャラリー等飲食費用……7000万円
ゴルフ場の使用料をはじめ、スタッフやゲスト、メディアに提供される食事や飲料が含まれる。アース製薬ではコース改造やギャラリーサービスの向上にも力を入れている。

スポンサーとして大会名に
名を冠することがステータスだった

これだけ莫大な費用がかかるトーナメント。近年は保険会社がスポンサーになっているケースも多いが、過去に開催されたトーナメント名を見ていくと、当時流行していた商品を扱う企業名や商品名をそのまま冠にした大会が目につく。70年代後半から80年代にかけて一気にトーナメント数が増えるが、売り上げを上げてゴルフトーナメントを主催することが、一種の企業ステータスとして考えらえていたのだ。

過去にはこんな大会も

1979-89年
LPGA レディーボーデンカップ


「LPGAツアーチャンピオンシップ」に明治乳業(当時)が協賛し同社商品の名称を冠にした大会に。その後ロッテに販売権が移り大会名変更。写真は89年大会を制した平瀬真由美

1980-89年
ヤクルトミルミルレディース


1978年に発売されたヤクルトのヒット商品を大会名に採用。90年以降も名称を「ヤクルトレディース」に変え、99年まで開催された。写真は80年大会で優勝した日蔭温子

1984-91年
週刊女性・JUNON女子OP


1978年にJUNON女子OPとして始まり、84年に名称変更。91年以降もKOSE・JUNONカップとして93年まで開催された。写真は78年大会覇者・樋口久子

1981-91年
五木クラシック


著名人の名前が大会名になることも。1981年に味の素・五木チャリティクラシックとして始まり、83~86年のツムラ・五木クラシックなど名称を変えながら91年まで続いた

<個人契約編>へ続く

週刊ゴルフダイジェスト2021年3月16日号より