【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.788「プロもアマも、いいゴルファーは周りに気を使える人ですね」
米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。
TEXT/M.Matsumoto
ゴルフは上手くても一緒に回りたくない人がいます。上手い人と回るのは勉強になりますが、上手いからといって「いいゴルファー」とは限らないと思います。岡本さんはそのあたりについてどうお考えでしょうか。(匿名希望・51歳・HC8)
昔、コースデザインを監修させていただいたことがあり、開場にあたってクラブハウス内に記念プレートを掲示したいので何か一言と頼まれたときにお答えしたのが、確か
「強いプレーヤーでいるより、いいゴルファーでありたい」
というような言葉でした。
上手いゴルファーや強いプレーヤーは、世の中には数え切れないほどいます。
記録に残る、記憶に刻まれる選手など、長い歴史の中には存在してきました。
恐縮ですが、わたし自身もプロとしてプレーしてきたキャリアの中で、幸運にして世界ゴルフ殿堂のメンバーに選ばれるなど、身に余る栄誉も頂戴しました。
でも、自分は、特筆されるような名人や達人の仲間入りを許されるよりも、誰もが認める良きゴルファーと呼ばれたいと思ってきました。
どれだけゴルフの技術に長けていても、どんな相手をも倒す強さを持っていても、いいゴルファーである保証はありません。
上手いだけ、強いだけでは、ゴルファーとしての資質に欠けるものがあると考えられているわけです。
そういう意味でも「ラウンドを終えたすぐ後にパートナーから、次もぜひ一緒に回りましょう」と誘われるようなゴルファーになりたい、という質問を送っていただいたあなたの言葉は、まさに良きゴルファーとは何かを考えるうえで的確な資質を表わしていると思います。
ラウンドする同伴者からは、技術や勝負強さに関するデータに加えて、その人の性格や普段の行動パターンといった人間性に関わる情報も伝わってきます。
特に初対面の場合は、上手い下手よりもこちらのほうが気になるのではないでしょうか。
少なくともわたしはそう感じます。
1ラウンドするのに4~5時間、同じ空間を共有している間に何かしら自分に通じる点、琴線に触れる部分や好感するものを相手から受け取れば、プレーを終えてもまたご一緒してもいいなと思うものです。
それこそが良きゴルファーの条件と言えるのかもしれません。
現役時代、毎週開催されるトーナメントのプロアマ競技でアマチュアの方々とよく顔を合わせました。
良きステキなゴルファーは多くいらっしゃいましたが、なかにはエチケットやマナーが目に余るような方もいらっしゃったこともあり、失礼ながらまたご一緒するのはちょっとと思う方も……。
その点、最近の若い選手たちは、思ったことをパッと口に出しちゃったりすることもしばしばあり「ウザい」なんて口走らないか、老婆心ながら心配することもあります。
ちなみに、ウザいという言葉を調べてみたのですが──昭和40年代後半ごろから、東京多摩地域で使われ始めた俗語みたいで、あれこれとうるさいとかわずらわしい、不快で気味が悪いという意味だったそうです。それが全国に広がっていく過程で「うっとうしい、面倒くさい」といった意味にも拡大されて、いまでは広辞苑の見出し語にも採用されているんだそうです。
わたしにはさすがにウザいという語彙はないし、この言葉が頭に浮かぶこともありませんが(笑)。
プロゴルファーだとしても、ひとりひとりは一般のアマチュアと変わりはないゴルファーです。
それぞれが頭の中では「いいゴルファー」でいたいと思っているはずですが、優勝争いやシード権ボーダーラインが目の前に迫ってくると、我を忘れていつもの自分ではなくなるプロもいるかもしれません。
でもわたしが言いたいのは、みんなが「応援したくなるプロ」になってほしいということです。
それがプロとしてのいいゴルファーの目安ではないかと思っています。
こういうことを話していたら、最近の若いプロから「ウザ~い!」なんて言われちゃったりして(笑)。
「相手のことを考えて行動することは、自分自身の成長にもつながると思います」(PHOTO by AYAKO OKAMOTO)
週刊ゴルフダイジェスト2023年11月7日号より
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