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【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.781「直ドラができる選手はシンプルなスウィングの持ち主です」

米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。

TEXT/M.Matsumoto

前回のお話はこちら


女子ツアーで岩井姉妹が「直ドラ」をやって話題になりましたが、いま直ドラをする選手が増えている気がします。難しいショットだと思いますが、昔よりやさしくなっているのでしょうか?(匿名希望・60歳・HC15) 


5月に行われたRKB×三井松島レディスで、岩井明愛、山下美夢有、岩井千怜の3選手のプレーオフになり、双子の姉妹によるプレーオフはツアー史上初めてのことでした。

パー5の18番ホールで行われたプレーオフ2ホール目。

セカンドショットで姉の明愛選手は、フェアウェイ右サイドから残り240ヤードをドライバーで2オンを狙います。

迷わず選んだ直ドラショットは、グリーン左手前30ヤードほどのラフへ。

これを見た妹の千怜選手は、

「そうかドライバーもありなんだな。ここまで来たらギャラリーの皆さんも楽しませたい」

と直ドラを選択。

ギャラリーがどよめく中、ボールは真っすぐピンに向かい、姉よりも近い手前15ヤードのラフへ。
そこから1ピンに寄せた千怜選手がバーディを奪い優勝しました。

史上初の双子プレーオフの決着をつけたのが直ドラ対決とあって、この話題はかなり盛り上がったようですね。

デビューした一昨年から見ていて、2人ともスウィングがしっかりしているのは知っています。


第一、プロにとって直ドラというのは、実はそこまでビックリするようなショットではありません。

ただし、直ドラはいくつかの条件がそろったうえでの選択ということができます。

まず、ティーアップせずに地面にあるボールを、もっとも長くロフトの少ないクラブで打つのですから、当然、正確に打つのは難しいです。

ミスが出てもおかしくないうえに、ミスの幅が大きくなるショットであることに間違いはありません。

プレーヤーは、そのリスクとメリットとを比較して判断することになります。

プロは、もちろんミスの確率は低くなるわけですが、それでも直ドラを選択するには、それなりの根拠が必要になるわけです。

フラットなライに置かれたボールをロフトの少ないドライバーで打つので、普通に考えれば、きちんととらえにくく、とらえたとしても打ち出し角は低く、つかまりづらいのでスライス回転になりやすい。

これを逆に考えれば、直ドラの条件が浮かび上がります。

つまり、左足上がりのライでボールが芝に沈んでいない場合なら、打ち出し角度をつけやすいので直ドラがしやすいうえ、左足上がりのつかまりやすいライでも、左へ曲がる心配はほぼなく、逆に右サイドに安全なゾーンが広がっているケースが望ましいということも挙げられます。

ライは少しでも浮いた状態でいてほしいので、洋芝よりはコーライ芝のフェアウェイのほうがやりやすいともいえます。

さらに、直ドラに適したスウィングというものがあります。

クラブが下から入る傾向のスウィングは当然ながら適していません。

とはいっても、極端に上から打ち込むタイプも難しいです。

ボールに対してヘッドの入射角が緩やかに入ってくる軌道でなければ、直ドラは打てないわけです。

岩井明愛選手は、普段から直ドラでグリーンを狙うことがあるそうで、練習ラウンドではしばしば試しているそうです。

ちなみに、千怜選手は、試合で直ドラをしたのは初めてだったそうです。

そもそも、直ドラは昔からやる人はやっていました。

かくいうわたしもそのひとりで、結構やっていたんですよ。

ただ、昔のドライバーはヘッドが小さいので、遠目に見て直ドラだとは見分けられなかったかもしれませんね(笑)。

直ドラは、ある意味において正しいスウィング軌道でないとミスをしやすいので、みなさんにも直ドラの練習は実はお勧めともいえます。

自分のスウィングをチェックするバロメーターのような面もあるかもしれません。

どちらにしても、一番難しいショットなのですから、失敗しても当たり前で恥ずかしいことではありません。

みなさんも恐れずに、直ドラの練習をしてみない手はありませんよ!

「状況に応じたショットを身に付けるには、シンプルなスウィングを手に入れることです」(PHOTO by Ayako Okamoto)

週刊ゴルフダイジェスト2023年9月19日号より

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