【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.143「ハーマンの強さとリバプールの思い出」
高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。
PHOTO/Tadashi Anezaki
今年の全英オープンで優勝したのはブライアン・ハーマンですが、以前から注目をしていました。170センチの小さな体ですから飛ばんほうですけど、それでもPGAツアーで戦っている。そのプレースタイルは常に前向きで、ショットの切れ味、これがすごい。
使用ボールはタイトリストのプロV1。V1xではなくV1を使うところに、ショートゲームを大事にして、自分の持ち味を生かしてやるという心意気を感じて僕は好きですね。
何よりすごいのはパッティングで、今回も最後まで崩れんかった。試合後に出されたデータでは、1ピン半くらいのパットを58回打って、なんと57回入れたらしいです。
地元のR・マキロイやT・フリートウッドが追い上げてきて完全アウェイのプレッシャーのなかで外したのは1回だけいうんやから、とんでもない強心臓です。
彼のエピソードとして、今田竜二くんとの間で起きたちょっとした確執が紹介されとるそうです。なんでも、同じジョージア大学出身で10歳年上の今田くんがあるとき、ハーマンのサングラスを踏んで壊してしもうたらしいんですが、それをいまだにハーマンは「サングラス壊したよね」と先輩の今田くんに言うらしいです。もちろんこれは親愛の情を込めた交歓的なやり取りでしょうが、でもこれは気が強いというより、執念深いことを証明するエピソードやないですかね(笑)。
でも、今田くんが後輩のサングラスを壊したんやから、弁償して新しいもんを持っていくべきで、もしこれをやっていないなら、そら僕でも執念深くいつまでも言いまっせ。
今回の全英オープンが開催されたのはロイヤルリバプールですが、過去、僕はリバプールの街には行ったけどコースには行かなかった思い出があります。
そのとき、同じイングランド北西部にあるロイヤルリザム&セントアンズでの全英シニアに出ていた僕は、マンデーで落ちた仲間がロイヤルリバプールでラウンドをするのを横目に、限られた時間のなかでリバプール出身のビートルズの博物館に行きました。すんません、ビートルズ博物館、めっちゃよかったです。
「小さな体でこの切れ味、この強気のパット!」
奥田靖己
おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する
週刊ゴルフダイジェスト2023年9月5日号より