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【イザワの法則】Vol.30 プロとアマの差は“マネジメント力”。でも裏を返せば…

石川遼や松山英樹、金谷拓実など、「アマチュア時代にツアー優勝」を経験して、その後プロで活躍するケースが増えている。昨年は、蟬川泰果がアマチュアで「日本オープン」を制した。なぜ、アマチュアがこれほどプロツアーで活躍できるのか?

TEXT/Daisei Sugawara ILLUST/Kenji Kitamura PHOTO/Hiroyuki Okazawa THANKS/福岡レイクサイドCC(PGM)

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ゴルフの環境が大きく変わったのも
要因のひとつ

このところ、アマチュアがプロトーナメントで優勝するケースが増えてきました。昨年は、蟬川泰果くんが、なんと「日本オープン」で優勝して、アマチュアでプロツアー2勝というすごい記録を作りましたが、その前の年も中島啓太くんが優勝(パナソニックオープン)しているので、2年連続、計3試合でアマチュアが優勝したことになります。なぜ彼らが、プロの中に入っても活躍できるのかというと、ジュニア時代から将来のプロ転向を視野に入れて、科学的なトレーニングや練習方法を取り入れて努力を続けてきたから……ということになるんでしょうけど、それにしてもプロの側が少し「勝たれすぎ」なんじゃないかと……。

今の若い世代は、アマチュアで活躍して、プロの試合で優勝、その後プロになって、世界のツアーで活躍するというところまでがセットになった目標を立てているみたいです。つまり、アマチュアでのツアー優勝は「通過点」としてとらえている。ただ、それを許さずに「壁」として立ちふさがるのも、プロの役割のような気はします。別に自分が、(宮里)優作くんのアマチュア優勝を阻止したことがある(2001年、住友VISA太平洋マスターズで伊澤プロが優勝。宮里は2位タイ)から言うわけじゃないですけど、もうちょっとプロがしっかりしてもらわないと。


マネジメントで
プロとアマの間に差が出やすい

ただ、プロの側を少しフォローしておくと、ゴルフの「上手さ」という点では、やっぱりアマチュアとはかなり差があります。なぜなら、プロとして試合を重ねていくと、どうしたら失敗の可能性を小さくできるかという経験値が蓄積されていくからです。また、失敗の経験から「こういうショットも必要だ」ということに気付いて練習したりするので、技術の引き出しも増えていく。結果として、どれだけ難しいコース、セッティングであっても、対応できるマネジメント力が身につくわけです。

ところが、このプロのマネジメント力というのは、大叩きしない(上位争いから脱落しない)という目的に対してはものすごく有効ですが、あまりこだわりすぎると、爆発力に欠けるという側面もあります。あくまでも想像ですが、蟬川くんが優勝した「日本オープン」で、比嘉(一貴)くんがちょっと追い切れなかったというのは、そういうことだったんじゃないでしょうか。

プロに限っていえば、20~30代のうちは、意識してもっと「攻める」ゴルフをしてもいいと思います。アメリカのコースと違って、日本はグリーン周りに池があることも少ないですし、「外れたら絶対寄らない」というケースも稀ですから、ピンを狙っていくことに対するリスクは比較的小さいと言えます。試合の緊張感のなかで、ちゃんと覚悟を持ってピンに向かって打つという経験をどんどん積んでいかないと、いざ「ビッグスコアが必要」というときにも、攻め切れなくなってしまいます。

その点、アマチュアがプロの試合に挑戦する場合には、失うものは基本的にないですから、自分が考えるベストの攻め方を常に選択できるという強みはあります。そういうプレーを、「若いからできる」とか、「単なる怖いもの知らず」と、批判じみたことを言う人もいますが、私は、「アマチュアだからこそ」失敗を恐れずに思い切りやるのがいいと思います。批判するなら、「自分でやってみれば?」という感じですね。

「飛ぶ道具があるのでその後の100ヤードが上手ければプロの試合で勝負できる。
でもみんな3~5メートルのパットが入りすぎだよね」

ロングアイアンの精度に差が出る

日本のプロが海外であまり成績が出せないという場合、「4~6番アイアンあたりの精度が問題であることが多い」と伊澤プロは指摘する。日本であまり使用しない長めの番手で、硬いグリーンに止めるには、プロであっても「上げにいかない」のは大前提だ

伊澤利光

1968年生まれ。神奈川県出身。学生時代から頭角を現し、プロ入りしてからは、プロも憧れる美しいスウィングの持ち主として活躍。2001年、2003年と2度の賞金王に輝く。また、2001年、マスターズで日本人最高位の4位入賞(当時)。現在はシニアツアーを中心に活躍中

月刊ゴルフダイジェスト2023年5月号より