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【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.748「モチベーションという言葉だけで片づけるのは、ちょっと違和感があります」

米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。

TEXT/M.Matsumoto

前回のお話はこちら


ここ数年、休養や妊活、自分探しなど、さまざまな悩みを抱えて一線を退いていく、私と同世代の女子プロが目につくような気がします。これもイマドキの「多様性」の表れと見るべきことなのでしょうか。(匿名希望・HC2)


早いもので、コロナ禍になり丸3年を迎えようとしています。

徹底したうがい、手洗いと3密を避け、不要不急の外出や会食を慎むという新しい日常が、わたしたちの生活に覆いかぶさっていました。

コロナの波紋は想像以上に多方面に及んでいて、人と人とのコミュニケーションが取りにくくなったことは、他人への興味を持たない傾向の強まっていた若い世代に、より深刻な影響を与えているのではないかと思います。

ツアーを賑わしている若い選手たちを見ていても、わたしはそんなことを感じることもあります。

この数年の間に、引退や休養を宣言した選手のなかに、まだ年齢的に早いのでは、と思わせる顔ぶれが交じっていたのも事実です。

彼女たちはプロとしての限界までプレーしたとはいえない人もいるので、少し首をひねってしまうこともありました。

そうした行動を取る理由に挙げられるのは、「モチベーションが感じられなくなった」といったもので、少なくともわたしには納得しづらい説明でした。


たいていの場合、若い選手の台頭でツアーでの競争が厳しくなり、シード枠から弾き出されたことをキッカケに、出場機会が少なくなることへの不安や不満、自分の成績や技術、体力への自信喪失が消極性の正体といっていいと思います。

幸いプロゴルファーのライセンスは更新すれば生涯有効ですので、メディアで解説、レッスンやプロアマラウンドでフィーを得る方法もあります。

こうした引退後の転進、転職はプロアスリートにはつきものと言っていいものですが、現役を引退した後も、その人の人生はあと4分の3くらいは残っています。

現役時代の看板が役立ってくれればいいですが、人によってはプライドがその後の仕事の邪魔をしたり、周囲の人間関係を妨げたりすることもあります。

プレーするモチベーションがなくなったから気楽な仕事を回してくれ、といってもそうは問屋が卸さないことがあることを知っておいてほしい。

自分を見つめ直したいというような理由は、プロそれぞれの個性の多様性を示しているかもしれませんが、物は言いようかもしれません。

自分の思いが、相手に伝わるとは限りません。

これもひょっとして対人関係が希薄になっている時代の問題で、自分以外の人間に対する興味が持てなくなっていることが原因なのかもしれません。

でも、弱気になって引退や休養を考えてしまうのは、それだけ引退後の第二の道が用意されているから、と考えることもできます。

その意味で、かつての女子プロゴルファーに比べて、いまの女子プロたちはひょっとして恵まれているのかもしれません。

そう言えばわたしは昔から「一年の計は元旦にあり」と言うけど、どうして日本人は正月になると区切りとばかり、これまでとは違う目標を掲げたり、新たな誓いを立てたりするのだろうと不思議に思っていました。

年は改まっても、人間や仕事が変わるわけでもないのに(笑)。

日本人には、昔からそういう戒めの感覚が体に染み込んでいるんでしょうか。

2023年はウサギ年。

何を隠そうわたしは年女です。

歳を取れば飛距離はだんだん落ちてくる─それは分かってはいますけど、現役時代と今の現実ではイメージが違い過ぎて、ほんとイヤになっちゃいますよね(笑)。

とはいえ、健康第一、元気な体がなくては始まりません。

まだしばらくはクラブを握るつもりですし、畑仕事に精を出しつつ、お酒も適度にたしなみながら楽しい時間を過ごしたいですね。

そんなわけで、2023年もどうぞよろしくお願いします。

「精いっぱいやった人だけが、知り得る世界ってあると思います」PHOTO by AYAKO OKAMOTO

週刊ゴルフダイジェスト2023年1月10・17日合併号より

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