【目澤秀憲の目からウロコ】里大輔編②どんなスポーツでも強い選手はみんな足の裏“勝ちポジション”に入っている!
目からウロコ
目澤秀憲コーチが、異業種からゴルフのヒントを得る連載「目澤秀憲の目からウロコ」。前回に続き、体の動きを徹底的に「言語化」して指導を行っている、パフォーマンス設計士の里大輔氏に話を聞いた。力を出す際に、体の各部の配置がどうなっているのがもっとも効率的か。また、スタートポジションでどこに重心を置き、それをどう動かすか。全スポーツ共通の課題がそこにある。
TEXT/Daisei Sugawara PHOTO/Hiroaki Arihara

目澤秀憲 ゴルフ界の最先端を知り尽くすコーチ。現在は河本力、金子駆大、永峰咲希、阿部未悠などを教える
最大限の力を出す
「勝ちポジション」
―― 前回、アビリティ、テクニック、スキル(さらにそれを下支えするファンデーション)からなる「パフォーマンスチューブ」で運動をとらえるという話がありました。里さんはさらにテクニックは「ライン」「ポジション」「タイミング」に細分化され、動作分析に欠かせないとおっしゃっていますね。今回は特に「ライン」「ポジション」について教えてください。
里 ラインもポジションも、重心をどうコントロールするかという部分に関わってきます。たとえば、真っすぐに立っているときに重心の真上に頭があれば、上半身と下半身のラインが真っすぐになりますが、頭がどちらかにずれるとラインも傾きますよね。
目澤 力を出そうとするときに、体のラインがどうなるべきか考えるということですよね。ゴルフで言うと、クラブの最大遠心力を発揮させるのに最適な上半身、下半身のラインがあると。
里 そうですね。ものすごく単純なことで言うと、重いボールを両手で地面にドンと投げつけるとしますよね? そのとき、足のラインよりも頭はわずかに前のラインにある重心位置になりますが、ゴルフでも同じように構えられるといいんだと思います。プロの構えは大体そうなっていますよね。
目澤 クラブが速いスピードで動く重心位置を、プロは無意識に見つけているんだと思います。
里 プロの構えとかスウィングが「美しい」と感じるのは重心が外れているところがないから、一連の動作として美しく見えるんです。ところが、途中で重心が外れたポジションに入ると、動きが途切れた感じに見えて美しくなくなるんですね。
目澤 重心のことで言うと、前後のポジションが大事で、プロは必ず、ややつま先重心になっていますが、アマチュアはお尻が落ちて、逆にかかと重心になっていたりします。
里 さっきのボールを地面に投げる動きでも、靴の底は地面に全部ついているんだけども、靴の中ではつま先側50%くらいに圧力がかかっていて、かかとはうっすら浮いているわけですよね。どんなスポーツでも、力を出そうとしたらやっぱりこの形になっていなくちゃいけなくて、ボクはこれを足の裏「勝ちポジション」と呼んでいます。
目澤 申・ジエさんはめっちゃ強いんですけど、彼女のアドレス、スウィングはまさに足の裏「勝ちポジション」で、重心の管理がうまいって思いますね。実は、練習のときなんかは見た目でわかるくらい、本当にかかとを浮かせて打っているんですよ。
里 目澤さんが何気なくクラブを振っているのを見ても、重心の管理ができていて、ポジションごとの動きがちゃんと連動して一連のスウィングになっていますよね。やっぱり、ゴルフは捻転なのでそこが難しい。
目澤 どこかを止めて、どこかだけを動かすとか、アマチュアは一生懸命やりがちなんですけど、それってスウィングの本質とはちょっと違いますよね。
里 最大フォース(力)を発生させるために、結果的に捻転になるだけというのが正しいでしょうね。誰でもグリップを引っ張るほうが力を出しやすいと思うんですけど、スウィングのどのポジションでもグリップを引っ張り続けられるかどうか。その連続が捻転ということです。
目澤 結局、スウィングって勝ちポジションに「ここでも乗る」、「ここでも乗る」ということの連続だと思っています。ボク自身は、両足の幅くらいの小さいスウィングでそれができたら、普通のスウィングはただそれを大きくしただけという感覚なんですね。プロはたとえば、1Yだけキャリーさせるアプローチがちゃんと打てますが、アマチュアはできないことが多い。そこが決定的な差なんだと思います。

小さい予備動作で力を出せるか
動きの洗練度の違いは「小さくて遅い動きを正確にできるかどうか」に表れると、里氏は言う。「サッカーボールを強く蹴ろうとしたときに、一般の人は足を大きく振り上げてしまいますが、プロは小さい予備動作、初期エネルギーでも強いボールを蹴られます。これはゴルフも多分同じで、小さいテークバックで大きなエネルギーを出せる人が強いはずです」(里)
「1Yのアプローチに大事なことが詰まってる」
コーチを担当する選手にもやらせることがあるという、「1Y」だけキャリーさせるアプローチ。これにはどんな意味があるのか。「小さいスウィングで初期エネルギーをどう出すかということを突き詰めていくと、大きいスウィングになったときはそれがパワーに直結します。アマチュアの場合、止まったところからいきなり動かそうとするので、必要以上に振り上げがちですが、それだと1Y以上飛んでしまう。小さいフォワードプレスをして、体全体で初期エネルギーを生み出してからテークバックするのがコツで、これはフルスウィングにも通じるポイントです」(目澤)
月刊ゴルフダイジェスト2025年12月号より


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