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【イザワの法則】Vol.26「曲げたくないホールのティーショット術」

世界も認めた美スウィンガー・伊澤利光が、ゴルフで大切にしていることを語る連載「イザワの法則」第26回。フェアウェイが狭いホールや、左右にプレッシャーのあるホール、あるいはベストスコア更新のかかるホールなど、「曲げたくない」シチュエーションは多い。そういうとき、プロはどんな対策をしているのだろうか?

TEXT/Daisei Sugawara ILLUST/Kenji Kitamura THANKS/福岡レイクサイドCC(PGM) PHOTO/Hiroaki Arihara

前回のお話はこちら

「サイドスピン」と「風」
この2つの影響をいかに最小限にできるか

ティーイングエリアでは、「飛ばしたい」という気持ちと、「曲げたくない」という気持ちが、いつもせめぎ合います。アマチュアの方はとくに、飛ばしたいというときに、フィニッシュでバランスが崩れるほど振ってしまうケースが見られますが、それだと思ったような結果にならないことは、多くの人が経験上、知っていると思います。

実際、「トラックマン」などのデータで見てみると、強く振ったからといって飛距離が伸びるとは限らないことがわかります。強く振ると、どうしてもスピン量が増えてしまうので、あまり飛距離効率がよくないからです。むしろ、8割くらいのスウィングでミートしてやるほうが、スピン量が減って飛距離効率が上がるので、10割で振るのと数字上は変わらないことも多いです。つまり、飛ばしたいときほどバランスよく、ゆるまず、「しっかり」振るというのがいちばんいいということです。

では、「曲げたくない」ときはどうするか。ティーショットが曲がる要素というのは、「サイドスピン」と「風」の2つですから、なるべくこの2つの影響を減らせる球を打てばいいということになります。私自身がやっているのは、フェースの少し下側に当てて、低めの弾道で打っていく方法です。下めの打点で打つと、スピン量が増えるので、サイドスピンを抑制する効果があります。それに、弾道も低くなって、風の影響を受けにくくなるので、まさに「一石二鳥」というわけです。


初出場の「マスターズ」
その1番ティーがプロ生活で一番緊張

そんな繊細な打点のコントロールなんて、「できっこない」と思うアマチュアの方もいると思いますが、たとえば、ティーアップをほんの気持ち、低くするだけでも弾道は変わります。あまり低くしすぎてしまうと、どうしてもヘッドを上から入れたくなってしまうので、本当に少しだけ。それで、普段通りに振れば、ちゃんと低めの球が出るはずです。

曲げたくないホールで絶対に避けたいのが、ボールに合わせにいってしまうことです。「大事にいこう」とか、「慎重に」という気持ちで打つというのはいいことなのですが、スウィングはスムーズに、のびのび振るほうがいい。そのほうが、大抵はいい結果が出ます。ボールに合わせよう、当てようとすると、体が止まって左に飛んでしまうケースが多くなりますが、ほとんどの人は「左に行く」というのを経験上、知ってしまっていますから、無意識に開いてしまう場合もある。やはり、ヘッドスピードを減速させずに気持ちよく振り抜いてやるというのが、最善の道ということです。特殊な例としては、バッバ・ワトソンみたいに、普段より逆に大きく曲げて打っていく人もいます。わざとでっかいスライスを打つことで、逆球が出る可能性をゼロにしているわけです。まあ、当然、アマチュアにはおすすめできないやり方ですが……。

プロになって、ティーイングエリアでいちばんドキドキしたのは、初めて出場した、「マスターズ」の1番ティーでした。もしかしたら、いちばん「フェアウェイに打ちたい」と思ったショットかもしれません。ただ、実はテークバックの途中で記憶が途切れて、次の瞬間には、フィニッシュして空中のボールを目で追っている自分がいました。だから、どんなスウィングをしたのかは覚えていないのですが、とりあえずフェアウェイに飛んだので、よかったです(笑)。

「『大事にいこう』と考えるのはいいこと。
ただし、スウィングは縮こまらずに

のびのび振るほうが絶対に結果がいい」

フェース下部でボールをとらえる

あえて、フェースの下部に当てるとスピン量が増え、バックスピンがサイドスピンを相殺する効果が期待できる。また、弾道が低くなるため風にも強い。曲げたくない場面では、ティーを普段よりわずかに低くすると、フェース下部でヒットしやすくなる

伊澤利光

1968年生まれ。神奈川県出身。学生時代から頭角を現し、プロ入りしてからは、プロも憧れる美しいスウィングの持ち主として活躍。2001年、2003年と2度の賞金王に輝く。また、2001年、マスターズで日本人最高位の4位入賞(当時)。現在はシニアツアーを中心に活躍中

月刊ゴルフダイジェスト2023年1月号より