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5打縮まる! 冬のラウンドテクニック「コツさえつかめば冬ゴルフは簡単です」

凍ったグリーンでボールが跳ね、硬い地面にクラブが弾かれ、気づけばミスのオンパレード……。そんな心が折れがちな冬のラウンドで、スコアを崩すことなく楽しくプレーするためのコツを教えてもらった。

解説/井上星一郎
20年以上、新潟県のジュニア育成に携わり、若林舞衣子、高橋彩華など数多くのプロを育てる。最新機器を使った理論的なレッスンにも定評がある。タイのゴルフ界との交流も深い

地面が硬いか軟らかいかの
見極めが重要

話を聞いたのは、雪国・新潟で30年近く、トップジュニアから一般アマチュアまで指導しているプロコーチの井上星一郎氏。凍ったグリーン、薄い芝、霜のラフ、日陰の芝、ベアグラウンド……さまざまな状況がある冬のコース。個々の対応は、上級者でも難しいという。

「細かい状況の対応策を考えるときりがない。イングランド出身のコーチが、『スコットランドの冬のコースはとにかく硬く、いろいろなことが起こり得るが、あまり難しく考えない』と言っていました。ただ、硬いか、湿って軟らかいかは判断するそうです。冬は夏場に比べて『芝が薄く硬い場所』と『霜などでぬかるんで軟らかい場所』の違いがはっきりしますから、この見極めが大事です」

ライの見極めができれば、午前と午後の変化にも対応できる。「まず、グリーンが凍っているときは直接グリーンに落とさないのが鉄則。手前から転がすイメージが大事。解けて軟らかくなっていたら直接グリーンを狙っても大丈夫です。ボールがあるライについても、『硬い』か『軟らかい』かが大事です。アプローチは転がしが基本ですが、ライによっては上げて止めることも有効。また、冬はヘッドスピードが出にくかったり、硬い地面にヘッドが弾かれたりすることで、スピン量が減りやすい傾向にあります。それを頭に入れた上で、狙いを定めるようにしましょう」


ティーショットの注意点
スピンが減りやすい。ロフト多めが吉

「寒さでヘッドスピードは低下することに加え、シャフトがしなりにくくなることでロフトが立って当たりやすい。するとスピン量が減ってキャリーが出にくくなり、球筋も安定しにくい。夏場よりドライバーのロフトを0.75~1.5度寝かせる調整が効果的です」

セカンドの注意点
ロフトを立ててクリーンに打つ

「地面が硬い場合、バウンスが弾かれトップするリスクが高まる。アイアンは普段より1番手落とし、ハンドファーストに構えて打つ。ロフトが立つぶん事実上バウンスが小さくなり、地面に弾かれるミスが出にくくなる。地面が軟らかい場合は、芝を噛むと水分の影響でスピンが減ってしまうことも。極力ボールをクリーンに打つよう心掛ける。ショートウッドやUTのように、アイアンに比べてロフトが立ったクラブは、ボールをクリーンに打ちやすいので非常に有効。スピンが減るのでランを計算して手前から攻めるイメージで」

アプローチの注意点
転がしが基本だが、軟らかいときはフェースを開く

「地面が硬いときは転がすアプローチを基本に。ロフト20~30 度のUTはボールをクリーンに打ちやすいのでライを問わず武器になる。地面が軟らかい場合は、ふんわりと飛んでボールの自重で止まるロブショットが有効。フェースを少し開くだけでも、バウンスが増えるのでザックリのリスクは減少する」

パットの注意点
アッパー気味に打って転がりをよくする

「凍ったグリーンでも、解けて軟らかくなったグリーンでも、共通しているのは『転がりが不規則になる』ということ。ボールを普段より少しだけ左に置いて、アッパー気味に打つと、ボールが滑らずに転がりの良い球になる」

冬ゴルフはクラブ選びで見違える
1Wとパターはロフト多めで

「雪国で車を運転する場合、冬場は必ずスタッドレスタイヤを装着します。ゴルフも同じように考えて、ドライバーとパターは冬仕様にするといい。この2本は、ロフトを多くしたものを使用するのが冬対策として非常に効果的で、私は新潟のゴルファーに推奨しているんですよ」

打ち方を変えるよりクラブを替えたほうが、確かにラクだ。

「ドライバーはアイアンのように、インパクト時の技術でロフト差をつけづらい。だからこそ、クラブ自体で調整しておくんです。スピンが減ると飛距離が出やすいメリットもありますが、ブレが大きくなり、大きなミスにつながります。また、グリーンは凍っていてもそんなにスピードは上がりませんし、解けるとより重くなりますが、どちらの状態でも、ボールが跳ねたりして綺麗に転がってくれません。ですからパットは、強く良い転がりを目指したい。そのためには、ボールを左に置いたり、ややアッパーに打つことで、インパクト直後にボールが“飛ぶ”距離を長くすることが有効。ボール位置や打ち方を変えるのが気持ち悪ければ、ロフトの多いパターを使うのも手。自然とボールが浮いてくれます」

井上コーチの夏仕様セッティング

井上コーチの冬仕様セッティング

冬ゴルフの最大の武器はUT

もう1つ、冬ゴルフの武器となるのがUTだ。通常のショットだけでなく、アプローチでも大活躍する。

「“転がす”というのは、もともとスピンがかからないようにするということ。そこで冬は、クリーンに打ちやすいUTをフルに活用します。たとえば25度のUTで、本来160Y打つところを、キャリーを120Yに抑えてランを出す練習をしておけば、冬のラウンドではかなり使えますし、夏のゴルフでも役に立つはずです。ロブショットやUTのアプローチをこの機会に練習しておくのも、寄せの引き出しが増えることにつながります。また普段の練習から、番手ごとのスピン量、スピンの効き具合を確認しておくのも大事です」
 
いろいろな「冬対策」を考えることで、結果的に上達のための知識や技術が増えることになる。また冬は、夏以上にしっかりと準備をすることが大切だと井上氏。

「ストレッチやスタート前の練習など、冬はとくに体と技術のコンディショニングをしっかりやって臨みたいですね。朝は最も気温が低いので、どうしてもパフォーマンスは下がりがちですから。冬は体が温まるのに時間がかかるので、ストレッチなどの準備運動はスタートの2時間以上前にやることが大切です。準備をしたことでラウンドが上手くいくとまたやりたくなる。モチベーションにもなるし、夏場の技にもつながります。備えあれば、心なんて折れませんよ(笑)」

週刊ゴルフダイジェスト2021年2月9日号より