Dr.クォンの反力打法 Vol.35 タイガーの元コーチ「クリス・コモ」ってどんな人?
バイオメカニクスの第一人者、クォン教授による「反力打法」第35回。今回は、タイガーの復活優勝の立役者となった、元コーチのクリス・コモについて。実はコモは、クォン教授の教え子だったのだ。
【語り手/クォン教授】
ヤン・フー・クォン。テキサス女子大学教授。専門はバイオメカニクス。生体力学的に理に適ったスウィングを研究。教え子にタイガーの元コーチ、クリス・コモらがいる
【聞き手/吉田洋一郎プロ】
よしだ・ひろいちろう。D・レッドベターをはじめ、世界の名だたるコーチのもとを訪れ、最新理論を直接吸収。日々探究・研鑽に余念がないゴルフスウィング研究家
クォン 先日(2018年1月)のファーマーズインシュランスオープンを観に行ったそうだね。
吉田 ええ、タイガーの復帰戦でしたから、どうしても観ておきたかったんです。
クォン タイガーのスウィングはどうだった?
吉田 昨年の今の時期に比べて、明らかにダウンの沈み込みが強くなっていました。その結果強い地面反力が生じ、インパクトで左足が浮き上がるほどでした。
クォン いい傾向だね。地面反力を利用すれば体への負担を減らすことができる。ケガもしにくくなるわけだ。
吉田 昨年末までタイガーのコーチを務めていたクリス・コモとの取り組みの成果でしょうか。そういえば、先生はそのコモを教えていたんですよね。
クォン うむ。彼は非常に優れた生徒だった
吉田 でも先生の学校はテキサス女子大学では?
クォン 昔は女子だけだったが、今は男子もいるんだよ。それに彼はもともとウチの大学にいたわけではないんだ。
吉田 どういうことですか?
クォン コモは09年に我々の研究チームに加わったんだが、当初は研究コンサルタントという形だった。
吉田 学生ではなかったんですね。
クォン ゴルフの動きを研究するにあたって、ゴルフに詳しい専門家の助けが必要だった。そんなとき、博士課程の学生から紹介されたのがコモだった。彼は当時30歳ぐらいと若かったが、すでに何人かの有名なゴルフコーチの元でティーチングの経験を積んでいた。
吉田 もともとインストラクターだったわけですか。
クォン 非常に問題意識が高い男で、常に現状の理論に疑問を持っていた。もっと効果的で、かつ体にやさしいスウィングはないのか、と。彼はすぐに生体力学の修士号を取得することを決め、私も生徒として彼を受け入れることにしたんだ。
吉田 それがゆくゆくタイガーのコーチに抜擢されるまでに……。
クォン 彼は当時すでにインストラクターとして高い評価を得ていたが、我々との研究活動によって、ゴルフレッスンと生体力学を結びつけることのできる無二の存在となった。そんな彼が、いつしかタイガーのコンタクトリストに載るようになったのは自然な流れともいえるが、最も大きな要因は、彼の物事に取り組む姿勢にあったと私は思う。
吉田 常に現状に疑問を持ち、より良いものを求めて探求していく姿勢ですね
クォン コモが最初にタイガーのチームとミーティングしたとき、彼らはタイガーの抱える問題に対するコモの知識と理解の深さに感銘を受けたそうだ。
吉田 タイガーの現状のスウィングを見る限り、ケガへの不安はまったく感じさせません。先生との研究が、タイガー復活の一端を担ったことは間違いなさそうですね。
Dr. クォン&吉田洋一郎
『驚異の反力打法』
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