【ブレーキ&アクセルで飛ばす】#2 トップでの「ブレーキ」が、加速に不可欠な“伸張反射”を生む
ヘッドを効率よく加速させるためには「ブレーキ」を上手く使いこなすことが重要だと斎藤大介トレーナーは言う。では具体的に、ゴルフのスウィングではどこでブレーキが働いて、それがどんな効果を生むのだろうか。
TEXT/Tomohide Yasui PHOTO/Tsukasa Kobayashi、Shinji Osawa、Blue Sky Photos
解説/斎藤大介
柔道整復師、鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師の国家資格を取得。16年より米女子ツアー選手のトレーナーを務め、20年から渋野日向子の専属トレーナーとして活動。週刊ゴルフダイジェストで「らくトレゆるスト」を連載中
>>「ブレーキ」と「アクセル」ってなんのこと?
- 渋野日向子の専属トレーナーを務める斎藤大介氏によると、効率よくヘッドを走らせるには、「アクセル」と同時に「ブレーキ」を上手に活用する必要があるという。スウィングにおけるアクセルとブレーキとは何か。なぜブレーキが重要なのか。詳しく話を聞いてみた。 TEXT/Tomohide Yasui PHOTO/Tsukasa Kobayashi、Shinji Osawa、Blue Sky Photos ……
ブレーキによってパワーが溜まる
斉藤トレーナーの言う「ブレーキ&アクセル」を理解するためには、ブレーキという動きを見極める必要がありそうだ。
「ブレーキは抵抗に耐えて力を受け止める動きです。その動きが使えないとスウィング中にいろいろなことが起こります。バックスウィングで右のブレーキが使えないとスウェイしますし、インパクトで左のブレーキが使えないと腰のスライドが発生します」
その話を聞くと、アマチュアのスウィングは雪道でノーマルタイヤを履いてアクセルを踏んでいるような状態なのかもしれない。雪道をグリップできないままでは、アクセルを踏んでも空回りするだけだ。その結果、軸が右にブレたり、左にブレたりしてしまう。スウィングは、軸をキープしながら回転運動をしなくてはならない。軸がブレた状態では、力も上手く発揮できないのだ。
「最初にやるべきは、股関節のブレーキとアクセルを覚えることです。股関節には、タテの動き(前屈・後屈)とヨコの動き(内旋・外旋)がありますが、まずは右股関節のブレーキから意識しましょう。具体的に説明すると、テークバックからトップで右股関節は、前屈しながら内旋させます。パンツの右股関節辺りにしわを作るようなイメージです。そうすることで力を受け止められるブレーキが完成します」
斎藤トレーナーによると、アマチュアが最も苦手なのが、右股関節でのブレーキだという。ここで力が上手くタメられないのだ。
「右股関節でしっかりブレーキを効かせ、そこから左足の踏み込みにつなげていくのがスウィングの流れです。右股関節のブレーキによって上半身がねじれ、引き伸ばされます。これが捻転差となりますが、ここで伸張反射が発生し、切り返し以降のヘッドスピードが一気に加速していきます」
ここで新たなキーワードが出現。伸張反射とはいったい何か。
「伸張反射とは、伸びた筋肉が反動で戻ることです。プロはこの動きを使ってヘッドを走らせています。アマチュアはこの動きが使えないため、腕の力だけで切り返し、クラブを動かしているのでヘッドが走らないのです。右のブレーキが使えると、この伸張反射が使えるようになりますから、スウィングが激変しますよ」
伸張反射とは?
「脊髄反射で、伸びた筋肉が反動で戻ること」
伸張反射とは引き伸ばされた筋肉が切れてしまわないように防衛反応で収縮する現象のことだ。右の写真のように指を伸ばし、開放すると指は勢いよく戻っていく。これは脊髄反射のひとつで脳のリミッターがかからない。つまりこれを上手く利用できれば、より速くスウィングすることが可能になる
トップでブレーキをかけ
切り返しで伸張反射が発生し
ダウンでアクセル全開
【トップ】ブレーキ
右股関節の内旋で壁を作る
右股関節の内旋と前屈、左股関節の外旋によるブレーキでタメを作る。この右股関節のブレーキによって上半身と下半身に捻転差が生まれ、上半身がしっかりと引き伸ばされたときに伸張反射が起きる
【切り返し】伸張反射
体幹部の伸張反射で素早く切り返し
下半身のブレーキと上半身の引き伸ばしによって胸筋や背筋などの体幹部に伸張反射が発生。右回転から左回転へ一気に切り替わる。渋野選手の切り返しが素早いのはこの反射が起きている証しだ
【ダウン】アクセル
左足で踏み込み右腕を伸ばす
切り返し後、曲げた左足で踏み込み(ブレーキ状態)ながら、右腕が伸びていく瞬間がアクセルだ。重力に合わせて腕を下ろすことでそのパワーがクラブに伝わり、遠心力によってヘッドが加速していく
【インパクト】ブレーキ
左股関節で壁を作りヘッドを走らせる
左足の踏み込みでブレーキをかけつつ、左足が徐々に伸びていき、2段目のアクセルに移行。左右の股関節は内旋させ、内股状態でヘッドが抜けていく
>>では、どうすれば「ブレーキ」を
身につけられる?
- ゴルフスウィングで重要な「ブレーキ」を身につけるためにはどうすればいいのか。斎藤大介トレーナーが、渋野日向子も実践しているというオススメの「チューブトレーニング」を教えてくれた。 TEXT/Tomohide Yasui PHOTO/Tsukasa Kobayashi、Shinji Osawa、Blue Sky Photos MODEL/Mai Inaji(GOLULU) ……
週刊ゴルフダイジェスト2022年6月21日号より