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【世界基準を追いかけろ!】Vol.79「黒宮がカナダ人コーチに習ったイップスの治し方とは?」

目澤秀憲と黒宮幹仁。新進気鋭の2人のコーチが、ゴルフの最先端を語る当連載。今回はオンラインで他国のコーチと交流をしているという黒宮が、ユニークな2人のコーチに習ったイップス解消法を話してくれた。

TEXT/Masaaki Furuya ILLUST/Koji Watanabe

前回のお話はこちら

GD 黒宮さんが海外のコーチとオンラインでやり取りしたのはどういった内容ですか。

黒宮 ショートゲームに関して、シンガポールのダビデ(※1)とオーストラリアのリアム・マクロウ(※2)に意見を聞いたんです。

X 具体的にどういうやりとりをしたのですか。

黒宮 僕が見ている選手がアプローチイップスに近い症状が出ていたので、それに対しての意見や対処法を聞きました。

GD それで、どういった答えが返ってきたのですか。

黒宮 ダビデの場合は、アドレスはこう、ボールポジションはこう、という具合に打ち方の指導法を教えてくれたのですが、でもそれは僕も分かることの範囲内でした。

目澤 では、リアムのほうは?

黒宮 リアムはプレーヤーの得意なことと苦手なことを探し出して、その苦手を克服していくことでイップスを解消していくという方法を提案してくれました。

X 興味深いですね。具体的にどういう方法なんですか。


黒宮 セットアップする時に、ウェッジのリーディングエッジを10時の位置に合わせ(スクエアが12時)、その構えから、普通のピッチ&ランで真っすぐの球を打たせるんです。

GD 超クローズに構えているのを、スクエアに戻しながら打つということですかね。

黒宮 はい。クローズからオープンに開きながら当てる感じですね。そして、その次に今度は2時の位置にリーディングエッジを合わせてオープンフェースに構え、それで同じように真っすぐの球を打たせてみてと言うんです。

X 今の話を聞いて僕もやってみましたが、私の場合は2時のオープンで構えたのは打てましたが、10時のクローズで構えたのは凄く違和感ありました。

黒宮 オープンに違和感がないというのはショットメーカーの人に多くて、逆にオープンが苦手な人はアプローチが上手い人に多い傾向があるようです。よく、ショットが上手い人はアプローチイップスになることが多いと言われていますが、要するにスクエアに当てることにこだわる人は、アプローチイップスになる可能性があると考えられるわけです。

X イップス(※3)は強迫観念にとらわれることが原因とも言われています。スクエアに構えると無意識にミート率や正確な軌道にとらわれてしまうので、極端にクローズやオープンにセットアップさせて、少しぼやかせようということなんでしょうね。

GD 自分の苦手がわかったあとの、解消法はあるんですか。 

黒宮 その10時のクローズと2時のオープンフェースから真っすぐに打つことを2カ月間やるということなんです。

X 両方やるのですか。

黒宮 はい。イップスの人は、自分の得意なほうばかりやり続けるようになるので、そこを根気よく両サイドからやってもらって、感覚を合わせていくというわけです。その方法でしか、イップスを直したことはないとリアムは言っていました。

(※1)シンガポールでデジタル系機器などを導入して指導をする。ショートゲームに関するティーチングに定評がある。(※2)PGAカナダのメンバー。マスターズ王者であるマイク・ウィアーとも親交がある。弾道理論・弾道解析技術の第一人者(※3)無意識的な筋活動の乱れによる運動機能障害。不安・強迫神経症、心身症と深い関係にあるとも言われる

目澤秀憲

めざわひでのり。1991年2月17日生まれ。13歳からゴルフを始め、日大ゴルフ部を経てプロコーチに。TPIレベル3を取得。2021年1月より松山英樹のコーチに就任

黒宮幹仁

くろみやみきひと。1991年4月25日生まれ。10歳からゴルフを始める。09年中部ジュニア優勝。12年関東学生優勝。日大ゴルフ部出身。松田鈴英、梅山知宏らを指導

週刊ゴルフダイジェスト2022年3月22日号より