Myゴルフダイジェスト

  • ホーム
  • レッスン
  • 「ダフリ」「引っかけ」「スライス」…ラウンド中のミスは“ボール位置”で解決できる!

「ダフリ」「引っかけ」「スライス」…ラウンド中のミスは“ボール位置”で解決できる!

ラウンド中、ミスが続くとついスウィングを修正したくなるもの。しかし北野正之プロによると、ボール位置を変えるだけで、ある程度ミスを防ぐことが可能だという。その方法を詳しく教えてもらおう。

TEXT/Kenji Oba PHOTO/Yasuo Masuda THANKS/サザンヤードCC

解説/北野正之

女子プロやアマチュアの指導経験が豊富。伸び悩むゴルファーへ「気づき」の指導を得意とし、スウィング理論、メンタル、マネジメントに精通。茨城・サザンヤードCCでレッスンを行う

スウィングを直すより
“ボール位置”のほうが簡単です

ゴルフはミスのスポーツ。ミスショットが出るのは、ある意味しかたがないことだ。だが、ここでアマチュアがやりがちなのが、スウィングを直そうとしてしまうこと。たとえばスライスが出たら、クラブをアウトに上げようとか、インサイドに下ろそうとか。ところが、これが大きなミスを生む要因になっている。

「コースに出たらスウィングを考えても意味がありません。できないことをやろうとしてもできるわけがないからです。ラウンド中のミスをスウィングで修正するのは至難のワザです。むしろさらなるミスを誘発するだけです」とは、スウィング理論やマネジメントに詳しい北野正之プロだ。

「アマチュアと回るとほとんどの人がスウィングをいじりたがります。しかし、それが変則的なスウィングを生み、ミスの連鎖につながってしまうのです」

では、ミスショットが出てしまったらどうすればいいのか? 北野プロは「ずばりボール位置を見直すこと」だと断言する。

「アマチュアのミスといえば、ダフリ・トップ・スライス・引っかけですが、これらのミスの9割は、ボール位置が原因といえます。クラブの長さやライ角が変われば、自分とボールとの距離も当然変わります。ところがアマチュアは、その距離は常に一定と考えがちです。ボール位置は一定ではなく、常に変わるもの。そこを理解することが、ボール位置を見直す、最初の一歩です」


北野プロによれば、ラウンドで重要なのは「ターゲットに対し、どこにボールをセットするか」だ。フェースの先っぽに当たるならボールに近づけばいいし、ヒールに当たるなら少し離れる、といった単純な話なのだという。

「ダフリやトップ、ボールがつかまらない……といったほとんどのミスは、ボール位置を見直すだけでかなり防げます。あれこれ考えてスウィングを修正するより、よっぽど簡単で即効性も高いです。スウィング軌道がブレやすく、打点も安定しないアマチュアは、理想的なスウィングを作りたくなるものですが、それは練習場でやるべきことで、コースでやることではありません」

北野プロによれば、ゴルフの上達方法は2つしかないという。ひとつは、スウィングを変えて結果を出すこと。もうひとつは、スウィングは変えずに状況を変えて結果を出すこと。今回はアマチュアでもすぐに実践できる、後者の方法を解説してもらおう。

ラウンド編

ダフリ&引っかけを防ぐなら
ボールを「左寄り」に置く

「スウィングはいじらなくていい」という北野プロにボール位置とミスとの関係を教えてもらおう。

まずはボールの左右位置だが、アマチュアの代表的なミスであるダフリで考えてみよう。ボールの手前に最下点がきて、ボールよりも先にヘッドが地面に当たってしまうのがダフリ。そうなるともっとボールを右に置けば……とアマチュアは考えてしまう。だが、

「早くボールにヒットさせようと考えるのでしょうが、これは大きな間違い。なぜならボールを右に置くほど体の軸は右に傾き、さらにダフりやすくなります。ダフリ防止なら左に置くのが正解です」

また、左に置くとクラブは上から下へ打ち込むアウトサイドイン軌道になりやすい。つまりスライスを打ちやすくなるということは、引っかけ防止になる。ダフリ&引っかけのミスが多い人は、ボールを左に置いてみよう。

では、トップのミスはどうか? トップもアマチュアに多いミスだが、ヘッドがボールに届かない、届き切らないことで起きるもの。

「それならヘッドが届きやすくなるよう、ボールを右に置けばいいんです。右に置くとインパクトが少し早くなりますからフェースが右から左へターンする動きになり、ボールもつかまりやすくなります。これはドロー打ちと同じ、インサイドアウト軌道になりやすいからです。ということは、スライス防止になるんです」

ちなみに左右のボール位置でフォローの高さも変わるという。右に置くとフォローは高く、左に置くとフォローは低くなる。ボールを低く抑えたければ左寄り、高く上げたいなら右寄りという、高低の打ち分けも可能だ。左右のボール位置について北野プロは「ボール3個分までの範囲で、最適なボール位置を探しましょう」と言う。

左に置く
●引っかけ防止
●ダフリ防止

左に置くとクラブは上から下へのアウトサイドイン軌道になりやすい。ダフリ防止になると同時にスライスが出やすくなるため、引っかけ防止に効果がある。ボールを右に置くほど、軸が右に傾き、ダフりやすくなる

右に置く
●スライス防止
●トップ防止

右に置くとヘッドがボールに届きやすくなり、トップの防止になる。またインサイドアウト軌道で、下から上のアッパー軌道になりやすく、ボールがつかまりやすい。フックが出やすくなるのでスライス防止になる

アマチュアのスウィングは左右のブレだけでなく、かかと体重、つま先体重といった前後のブレによるミスもある。そこでボールに「近づく・遠ざかる」といった前後の対処法も教えてもらった。

「基本的にボールに近づくとつかまりやすく、離れるとつかまりにくくなります。つまり引っかけ防止ならボールを遠ざけ(トウ寄りに構える)、スライス防止ならボールに近づく(ヒール寄りに構える)と覚えておくといいです。ちなみに緊張した場面、たとえば朝イチのティーショットや池越えなどは、当てたい思いが強いので、ボールに近づきやすい傾向があるのも覚えておくと便利ですよ」

前後のボール位置についてはボール1個分までだという。最初はトウ寄りやヒール寄りに構えることから始めるといいと、北野プロはアドバイスしてくれた。

遠ざかる/トウ寄り
●引っかけ防止
●ダフリ防止

]ボールがつかまりすぎで起きる引っかけやチーピンは、ボールから遠ざかることで防げる。ダフリより、トップが出やすい状況になるのでダフリ防止に効果がある。かかと体重になりやすく、体の突っ込みも防げて、ボールのつかまりも抑えられる

近づく/ヒール寄り
●スライス防止
●トップ防止

ヒール寄りに構えてボールに近づくとつま先体重になりやすく、トップよりダフりやすい状況が作れる。ボールをつかまえやすくなるため、スライス防止に最適だ。前後の位置調整はボール1個分までで考えよう

練習場編

ボール位置を変えて打てば
傾斜地ショットの訓練になる!

北野プロによると、プロとアマチュアの大きな違いは「打てるエリア」にあるという。プロはそのエリアが広く、アマチュアは極めて狭い。野球のバッティングでいえば、プロはどんなボールにも対応できるが、アマチュアはど真ん中しか打てないというわけだ。そのうえで北野プロはアマチュアの練習方法にも疑問を投げかける。

「アマチュアの練習は、同じボール位置でストレートボールをひたすら打とうとします。ですが、練習場とコースの違いは傾斜地で打つことです。だからこそ、練習場ではボール位置の変化による“仮想傾斜”を作るといいんです」

仮想傾斜とは、どういうことなのか? 北野プロの解説はこうだ。左右のボール位置では「右に置くと左足上がり」「左に置くと左足下がり」になるという。

「基本的に左足上がり&下がりは、傾斜の低い位置側にボールをセットします。これはヘッドが入っていくスペースを確保するためです。右に置けば、右が低いので左足上がり、というわけです」

アマチュアがとくに苦手なのが左足下がりだが、左に置くことで次のような効果が得られるのだ。

「左に置くと上体が起きてしまった時点でアウトです。前傾を維持したまま、上から打ち込まなければ打てないボール位置だからです。その結果、前傾を保つための体の粘りが生まれ、ヘッドが低く長く出せるという左足下がりに適したスウィングが身につくのです」

左に置く
=左足下がり

左に置く場合、少しでも上体が起きるとヘッドは届かなくなる。前傾をキープしないとボールに当たらないため、下半身の粘りや、ヘッドを低く出す長いインパクトが身につけられる

右に置く
=左足上がり

左足上がりは難易度は高くないが、ダフりやすい状況といえる。ボールを右に置くことで、下から上へのアッパー軌道になりやすい状況を作り、上から打ち込むスウィングが防止できる

ボールの前後位置についても「遠めに置くとつま先下がり」「近めに置くとつま先上がり」になる。アマチュアが難しいのはつま先下がりだろう。

「つま先下がりは、インパクトでかかと体重になってボールから離れやすいから難しいのです。そこでボールを遠くに置くことで、つま先体重になりやすい状況を作ればいいわけです。逆にインパクトでボールに近づきがちな、つま先上がりでは、ボールを近くに置くことで、かかと体重の状況を作り出すことができます」

近めに置く
=つま先上がり

つま先上がりは、スウィング中につま先体重になりやすく、ボールに近づいてしまうのがミスの要因。ボールを近めにセットして、かかと体重を維持しやすい状況で練習すると感覚がつかみやすい

遠めに置く
=つま先下がり

つま先下がりはスウィング中にボールとの距離が離れやすく、ヘッドが届かないミスが出やすい。ボールを遠めに置くことでかかと体重になるのを防ぎ、つま先に乗りやすい状況を作るのが有効

前後左右のボール位置を組み合わせることでさまざまな傾斜地が作り出せる。コースの傾斜は単純ではない。ボール位置の理論がわかれば、つま先下がりで左足下がりなどの難しいライでも仮想トレーニングができるのだ。

「ボール位置は傾斜地の訓練だけじゃないんです。実はスウィング軌道の修正もできるんです。つまりボール位置でスウィングが自然に変わるということです。ボール位置を理解しておくだけでミスの連鎖は確実になくなるはずです」

週刊ゴルフダイジェスト2021年12月7日号より