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【陳さんとまわろう!】Vol.219「ワッグルショットもニーアクションが肝心です」

TEXT/Ken Tsukada ILLUST/Takashi Matsumoto PHOTO/Tadashi Anezaki THANKS/河口湖CC、久我山ゴルフ

日本ゴルフ界のレジェンド、陳清波さんが自身のゴルフ観を語る当連載。今回のお話は、リストを使ってヘッドを動かす「ワッグルショット」について。

前回のお話はこちら

B・ホーガンのアプローチを見てピンときた

――前回、陳さんがウェントワース(英国)のワールドカップ(1956年)に初出場したときに、ベン・ホーガンのリストワークを目にして驚いたという話が出ました。

陳さん はい。あれは何番ホールでしたかね。ホーガンが珍しくボールを左に曲げて、左足下がりのライにボールを打ったんだ。そこからピンまでは40〜50Yぐらいですよ。どうやって打つのか勉強しようと思って見ていたら、これが初めて見る打ち方だったからびっくりしたわけよ。持ったクラブはたしかピッチングウェッジだ。テークバックではふつう腕でクラブを後ろに引くのに、ホーガンは引かなかったの。リストコックだけでパッとクラブヘッドを上げたんだよ。上げて、コッキングはそのままにして、ニーアクションでボールを打って、腰の回転で振り抜いていったわけね。これでローボールを打って、ピンにこれぐらい(と両手を50センチぐらい広げる)だよ。イヤな人だなと思ったな(笑)。

――ホーガンはこの大会で個人優勝したほか、サム・スニードとともに団体優勝していますね。ホーガンのスコアは4ラウンド277。30位タイだった陳さんは307。その差30ストロークでした。


陳さん アハハ……、世界一のトッププロと新参者の違いですよ。とにかくあのトラブルショットを見て、この人には絶対かなわないと思ったな。あのショットはワッグルショットなんですよ。ワッグルはボールを打つ前の予備動作だね。ボールの手前でヘッドの重さを感じるようにリストを柔らかくしておいて、リストの動きだけでヘッドを動かすことですけど、日本のトッププロはそのような動かし方でボールを打つなんて誰もやっていませんでしたからびっくりしたんですよ。しかもピンそばにピタリだ。それでこれは身に付けなくちゃいけないって考えて、ワッグルだけで打つことを勉強したわけね。おかげで試合でいい結果が得られるようになって、何勝も挙げることができましたよ。

――では、ホーガン譲りのワッグルショットのいちばんのポイントを教えてください。

陳さん まずテークバックではリストコックだけでクラブヘッドを上げることですよ。ワッグルショットは距離を出す打ち方じゃありませんから、クラブヘッドを意識して後ろに引く必要はないんだ。それからそれ以上に大事なのはボールを打ちにいくときですよ。テークバックでつくったリストコックをそのままキープしてインパクトしなくちゃいけないんだ。こう言うと、それでどうやって打てるんだって聞かれるんですがね、これはコックをほどきながらクラブヘッドをボールに当てにいこうとしてはいけないという意味なんですよ。

――当てにいくとインパクトで手の位置よりクラブヘッドが先に出るヘッドファーストでボールを打つことになるんですね。つまり手打ち。

陳さん そうです。インパクトではアドレスのときと同じようにハンドファーストでなきゃいけないんだ。これはどのクラブでもショットの基本ですよ。その形で打つためには、ダウンスウィングでニーアクションを使って下半身を左へスライドさせること。この動きと、左肩を後ろに開く動きがあれば、ちゃんとクラブヘッドはボールを打ってくれます。安心してください(笑)。

陳清波

ちん・せいは。1931年生まれ。台湾出身。マスターズ6回連続出場など60年代に世界で日本で大活躍。「陳清波のモダンゴルフ」で多くのファンを生み出し、日本のゴルフ界をリードしてきた

月刊ゴルフダイジェスト2021年12月号より