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オリンピックを生で見た2人のプロの気づき「世界の飛ばし屋たちはトップに“間”がある!」

PHOTO/KJR、ARAKISHIN
THANKS/岡崎CC(アコーディア・ゴルフ)、東名古屋CC

世界のトップランカーが参加した東京オリンピック男子ゴルフ競技。今回ボランティアとして大会を支えた2人のティーチングプロが、選手たちを間近で見て強く感じたのが「みんなトップで止まる」ということだったという。果たしてトップで止まると何がいいのか、我々アマチュアも真似ていいのか。詳しく聞いてみた。

解説/早川佳智(左)

1975年生まれ。愛知県出身。日夜スウィング研究に没頭し、現在クラブ設計にも関わるこだわりプロ

解説/山本邦貴(右)

1973年生まれ。岐阜県出身。現在、高校で教鞭をとりながら、夜はレッスンも行うという異色プロ

打ち急いで見えないのは
トップのがある証拠

今回、ボランティアとして大会を支えた早川佳智プロと山本邦貴プロ。仕事の合間に練習場や試合中のプレーを目の前で見る機会があったという2人が共通して感じたのが、切り返しでできる“間(ま)”だった。

「ほとんどの選手が300ヤードは当たり前に飛ばすし、尋常じゃないスピードでクラブを振ってきます。でも、一貫して言えることは、『打ち急ぎ感ゼロ』ということ。あのレベルなら当たり前のことかもしれませんが、あのスピードで振っているのに、打ち急ぎを感じさせないのは、トップからの切り返しの“間”があるからだと思うんですよね」(早川)

「選手たちは、トップで止めている意識はないと思います。直接聞いてないですけど(笑)。でも、そう見えるのは、リズム&テンポがいい証拠。だから、あれだけ振っても振り遅れないんですね。逆に、僕は意図的にトップで止まる練習をしてもいいんじゃないかな〜って思いましたね」(山本)

右肩がしっかり回っているから
“間”ができる

世界の一流選手を見て、トップで止まって見えるのは、いわゆる“間”ができているからだという早川プロ。それを可能にするのが、クラブと腕と体が同調したテークバックにあるらしい。

「要するに手打ちじゃないということです。肩が回らず手でクラブを上げると、トップで“間”が作れないから、インパクトで右肩が突っ込み、打ち急いでいるように見えてしまいます。一流プロたち、とくにマキロイを見ていると、右肩が深く入ったトップなのに、シャフトが垂れずに地面と平行で収まっている。体とクラブが同調して動いている証拠ですよね。そして切り返しで上体が突っ込まず下半身から始動できているので、一瞬止まっているように見える“間”が作れるのだと思います」

テークバックで腕とクラブを同調させる

腕が体の正面から外れないように、腕とクラブの関係を保ったまま肩をしっかり回し振り上げることができると、自然とトップで止まるような“間”ができるという早川プロ。逆に“間”ができないのは、手打ちになっている証拠だという

一流選手たちは悪条件になるほどトップで“間”ができる

選手のトラブルショットを目にすることが多かったという早川プロは、トラブルショットほどトップで“間”があると感じたという。「窮地になればなるほど打ち急がないってことですね」(早川)

切り返しのひざ使いがタメを生む

今回、ボランティアとしてキャリングボード(特定の組に付き各選手のスコアをボードで示す)を担当した山本プロが、最終日に付いた組に衝撃を受けたプロがいたという。それが、チリ代表のギジェルモ・ペレイラだ。

「スウィングのしなやかさが半端じゃないし、尋常じゃないほど飛ぶ。もちろん、速く振っているけど、変な力みを感じさせない。それこそトップで一瞬止まっているように見えるんです」

ギジェルモ・ペレイラ
1995年生まれ、チリ出身。PGA下部ツアー「コーンフェリーツアー」で3勝を挙げ、来季のツアーメンバー資格を獲得。東京五輪では銅メダルをかけたプレーオフに進出するも、惜しくもメダルを逃した

なぜ、トップで止まっているように見えるのか。それについて山本プロは、柔らかいひざの動きにあるという。

「トップからダウンスウィングに移る切り返しの始動を、下半身の踏み込みによるひざの曲げで行っています。するとダウンスウィングに入っても手元の位置が変わらないように見えるので、トップで止まっているように感じるのだと思います。これにより自然としなやかで力強いタメができ、飛距離につながっているのでしょう」

極端にやるとこんな感じ
下半身の沈み込みが間を生んでいる

切り返しで強く踏み込んでいきながら、手元の位置は変わらないので、トップで止まっているように見え、かつ上下の引っ張り合いにより強烈なタメが生み出される

ギジェルモ・ペレイラの1Wスウィング

「このダウンスウィングでの強烈なタメは、力ではなくトップからの切り返しの“間”の取り方が上手いからなせる業だと思います」(山本)

手打ちを防いで“間”を作る
2つのストップ打ちドリル

最後に、両プロがオススメするドリルを教えてもらった。

「下半身リードで切り返すことが、“間”を作るポイントです。トップで止まって見える間が作れると、手打ちが解消されるので飛距離が伸び、方向性も良くなりますよ」(早川)

「トップで止まっているように見えるだけで、実際には下半身は動いています。意図的にトップで止まって打つなら、足から動かせば上手くいきますよ」(山)

早川プロ直伝「ストップ打ち」ドリル
左腰リードでシャフトを振る

ヘッドが装着されていないシャフトを持ち、トップの位置からビュッと音が鳴るほど全力で振り下ろす。左足を中心とした左サイドを意識して使わないと、上下半身の捻転が作れないため速くは振れない

山本プロ直伝「ストップ打ち」ドリル
ウェッジでティーアップ打ち

トップで止まった状態から、ウェッジでティーアップしたボールだけをなるべく高く打ち上げる。ひざの屈伸を利用して、さらにインパクト前に右手を放して左手1本で振り上げることで、下半身の使い方がわかるようになる

週刊ゴルフダイジェスト2021年9月7日号より

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