重要なのは「モビリティ」。飛距離アップに成功した2人のプロの体づくりメニューを公開!
TEXT/Daisei Sugawara
PHOTO/Hiroyuki Okazawa、Kazuo Iwamura
ブライソン・デシャンボーを筆頭に、近年、体を鍛えるプロが増えている。だが、やみくもに筋トレすればいいというものではない。ゴルフのスウィングで重要なのはモビリティ=可動性。柔軟性を高めつつ筋力を強化していくトレーニングが求められる。今回は、ゴルフに必要な筋力を効果的に鍛えて飛距離アップに成功した2人のプロの事例をご紹介!
Case 1 宮里優作
下半身と背中を鍛えてHS2㎧アップ!
宮里優作の体に“事件”が起きていた。昨シーズンに比べて、明らかに「デカく」なっているのだ。聞けば、コロナ禍のステイホームを逆手に取り、器具を揃え、自宅をジム化して、トレーニングに明け暮れていたという。
「下半身と背中を重点的に鍛えたことで、やりたかったスウィングができるようになってきました。ヘッド速度も2㎧くらい上がっているんですが、それ以上に初速が出た実感があります。去年からドライバーを少しずつ長くしていて、今は45.5インチ。体とスウィング、それにクラブが三位一体となって、飛距離につながった感じです」(宮里)
現在の平均飛距離は、キャリーで300ヤードに迫る勢いだというから驚き。スウィングは、左右に体を揺さぶるようにして飛ばす動きから、縦の動きが強い、最新のものにシフト中だという。
「今までは、踏み込んだ左足を『伸ばす』という動きは使っていなくて、むしろ我慢して伸ばさないように耐えていました。今はジャンプするくらい伸ばして、タテ回転で振っています。練習ラウンドしていても、去年は越えなかったバンカーを越えるようになったり、目に見える形で成果が出ています」
踏み込んで伸びるタテ回転にシフト
これまでは、体を左右方向に揺さぶって飛ばしていた。新スウィングは、揺さぶりを排除し、タテ方向に踏んで、伸びる動きのなかで、クラブも鋭くタテに振っていくスタイルに変更
スクワットジャンプで
強く踏み込む感覚を養う
宮里のスウィング改造の中身を、もう少し詳しく聞いてみた。
「踏んで伸びるといっても、インパクトまでは頭を浮かしちゃダメなんです。ダウンスウィングは背中で引っ張る感じで、そうすると前傾角もキープできます。背中とお尻のトレーニングがここで効いていますね」(宮里)
踏んで伸びる感覚をつかむために行っているのが、スクワットジャンプ。踏むイメージは、跳び上がる前の形ではなく、跳んで“着地”する瞬間の形で作る。足裏全体で「バンッ」と音がするように、地面を踏みしめて下りるという。
「音が出るほど踏めれば、地面からより強い力をもらえる。その後、ジャンプと同時に背中で引っ張ります。振り下ろすときに加速して、最下点を過ぎて上がるときに、もう一段加速する感覚です」
着地でバン!と音を立てる
Point 1
一度踏み込んでから伸びる
Point 2
インパクトまで頭の位置を上げない
Point 3
背中を丸く使いインパクトで引っ張る
Case 2 勝みなみ
「しなやかで強い筋肉を作っています」
黄金世代をけん引してきた22歳。上半身が大きく、下半身が小さいという体型を改造すべく2019年から本格的なトレーニングを取り入れる。上の写真はお尻と太ももを鍛えつつ、股関節の可動域を高めるトレーニング
一昨年頃から本格的に体を鍛えはじめ、昨年の平均飛距離は、以前より10ヤード近く上がったという勝。滞在先のホテルでトレーニングに励む勝に聞いた。
「もともとは怪我をしないように、1年間戦える体を作るためにトレーニングを始めました。それまではシーズン後半に疲れが出てしまい、怪我しやすい体になっていました」(勝)
勝がまず取り組んだのは、柔軟性を高めるためのストレッチだったが、可動域が増すにつれ、スウィングを支えるための“土台”の力不足に気づいたと言う。
「筋トレ重視に切り替えた結果、飛距離は10ヤードくらい伸びました。ただ、それ以上飛距離を伸ばそうとは思っていませんね」
理想とする鞭のようにしなるスウィングを支える土台ができた今、ストレッチ主体のトレーニングに取り組んでいるという勝。好調なショットでつかんだ2年ぶりの優勝が、その効果を物語っているのだろう。
パワーを上げる
筋トレ系メニュー
「ゴリゴリな筋肉をつけると体が硬くなってしまい、動きにくくなる」と勝。柔らかい筋肉を作りたいという目的から、全体的に、ストレッチも兼ねたトレーニングが主体。ストレッチ後に行う
<Menu 1>体幹とお尻を強化
●左右10回×3セット
<Menu 2>地面を踏んで蹴る力を強化
片足を上げた状態で、椅子に座り、立つ。これを繰り返す。ひざが割れないよう注意
●左右10回×3セット
<Menu 3>土台となる下半身を強化
一歩前に踏み出し戻る。軸足のひざが地面につくぎりぎりまで沈む
●左右10回×3セット
モビリティを上げる
ストレッチ系メニュー
トレーニングは全体で1日30分~1時間やるが、まずはその半分ほどの時間をかけてストレッチを入念に行う。体幹、肩甲骨周り、股関節周りをまんべんなく伸ばしていく。「呼吸を入れながら伸ばしています」(勝)
<Menu 1>もも裏とアキレス腱を伸ばす
●左右合わせて約10分
<Menu 2>肩甲骨の柔軟性を高める
横向きに寝そべり、上に来た腕を360度回す。左右行う。捻転を深くする効果がある
●ほぐれるまで
<Menu 3>腹部の柔軟性を高める
仰向けに寝て、あばら骨の下に指を入れながら息を吐く。これも深い捻転を作りやすくなる効果がある
●指がしっかり入るまで
スウィングが大きくなった!
「以前よりトップで上半身が深く入るようになった」という勝。トレーニングにより可動域が大きくなったことに加え、それを支える土台が安定したことが、飛距離アップにつながった
週刊ゴルフダイジェスト2021年6月29日号より