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シャロー、シャット……最新理論が上手くいかない! それ「タイプ」が合っていないのかも!?

THANKS/The GOLF@Hakata Base
PHOTO/Norimoto Asada、Yasuo Masuda、Tadashi Anezaki

「シャットフェース」「シャローに振る」など、最新のスウィングを一生懸命練習しても、イマイチしっくりこない……。そんな人は、そもそも最新のスウィングが自分の動きのタイプに合っていない可能性があるという。自分に合った動きを採り入れて、気持ちよく振れるスウィングを手に入れよう!

解説/櫻井省吾
87年宮崎生まれ。12年プロ転向。ツアーに挑戦しながらレッスン活動を行う。現在は福岡市で「てげてげゴルフCHスクール」主宰。出水田大二郎や秋吉翔太などトッププロのコーチをしながら多くのアマチュアにも指導

ゴルファーには2つのタイプがある

知識を深めるため、日本を代表するスポーツトレーナーの鴻江寿治氏に『鴻江理論』を学んだ櫻井省吾プロ。「すごく勉強になって、スウィングにもつながることがわかりました。僕の教えている(秋吉)翔太と(出水田)大二郎はそもそも体の使い方が違うんです」

「横に動いて打ち込みたい」という秋吉と「沈んで伸び上がるイメージで打ちたい」という出水田。自分の体が気持ちいいと感じる打ち方によってタイプは2つに分かれるという。

「ボールを潰して打ちたい“ダウンブロー”タイプと、払い打ちしたい“レベルに近いアッパーブロー”タイプです。まず打ってみて、無理なくしっくりくる感じはどちらか考えてみましょう」

これは、パワーを出すときに、主に腹筋(体の前の懐)を使うか背筋を使うかでも分かれる。

「たとえば体の前でメディシンボールを持ち遠くに投げようとしたとき、左右の動きを使い主に腹筋を使って投げるか、上下の動きを使い主に背筋を使って投げるか。皆さんもやってみるとわかります。これはスウィングにもつながる。翔太と大二郎の連続写真を見てみてください。インパクト後に重心が下(左の太もも)にあるのは主に腹筋を使いダウンブローに打ちたいタイプ。重心が上にあるのは主に背筋を使いレベルからアッパーブローに打ちたいタイプ。前者を『打ち込み体(たい)』、後者を『払い打ち体(たい)』と名づけました。皆さんも自分で動画を撮影してチェックしてみるといいですよ」

自分のタイプを認識し、それに合う打ち方を追求したほうが上達への近道だという。これはドライバーからパットまで、またクラブ選びにまで影響するのだ。

腹筋を使うタイプは打ち込み体

「打ち込み体」代表=秋吉翔太
腹筋を使い左右の体重移動で打つタイプ。アドレスはしっかり前傾。バックスウィングでは右股関節に重心が乗りづらいのでトップが深めで「リバースピボット」になりやすい。腹筋(お腹の懐)を使いタメをつくって上からダウンブローに打つ。インパクト以降では左股関節に乗りやすいので、左ひざが曲がっている状態( 左の壁)をつくりやすい

背筋を使うタイプは払い打ち体

「払い打ち体」代表=出水田大二郎
背筋を使って体の回転で打つタイプ。アドレスは立ち気味。バックスウィングで右股関節に重心が乗りやすいので背筋を使える。コンパクトトップからシャロー気味にインサイドにクラブが下りてきて、クラブを低い位置から入れアッパーに打つ。インパクト後は左股関節に乗りづらいので、左ひざを伸ばしてかかと体重で腰を回す動きになる

だれもが最新理論・最新クラブに
合うわけではない

2つのタイプについて、さらに細かく聞いていこう。

「自分に合う体の使い方、打ち方で、グリップからアドレス、フィニッシュまで“合う”形や動きが決まってきます。グリップがウィークだから、スタンスがオープンだからスライス打ちとは一概には言えません。また、『打ち込み体』でアイアンはストロングで握っているのにドライバーになるとウィークで握るプロも多い。アッパーで打ちたいからです。でも本当は気持ち悪いはず。だから構えや動きに詰まりが出てくるんです」

昔はダウンブローの教えが主流だったが、今はアッパーブローの教えが主流。大型で低重心・重心距離が長い最新ヘッドの機能を生かすための打ち方だからだ。

「最新型の道具を使うほうが飛ぶと言われますし、数も多く販売されている。理論も今のクラブに合ったものに変わってきますから、『打ち込み体』は苦労している感じもある。確かにプロでも今、活躍している人は『払い打ち体』が多い。でも、体の使い方が合わずに無理をすると、ケガにもつながります。プロなら長いスパンで戦う必要があるので、その週は調子がよくても続かないのはよくない。じつは、翔太と親しくなったのも『最新ドライバーをアッパー気味に打つと、いい音はするけどしっくりこないし飛距離もそこまで……』という悩みの相談から。もちろん、プロの場合は、技術がありますし、日々上を目指してどのパターンもできるようにはします。でも、自分のタイプがわかっていると、調子も整えやすいんです」

自分のタイプで合うクラブを選び直すのも重要だと櫻井プロ。「大型ヘッドで重心距離が長い“今風クラブ”は『払い打ち体』に合う道具。『打ち込み体』がそれを無理に使う必要はない。最近、クラブ契約をフリーにする選手が多いことにも関係しているかもしれませんね」

「打ち込み体」に合うクラブ
=重心距離短めの小ぶりヘッド

少し古いモデルに多い、つかまりやすくフェースターンしやすいヘッドが合う。インパクトでフェースが開いて下りてくるので“つかまり顔”のクラブでハンドファーストに構える。今のギアは高弾道低スピン設計。スピンで球を上げたいのでロフトは多めにする。アイアンはグースタイプが向く

「打ち込み体」に合う握り方
=左手ストロンググリップ

グリップエンドからクラブを引いていきやすくボールを上から潰せる。コック(親指方向に手首を折る)を上手く使ってボールを抑え込みたい

「打ち込み体」に合う打ち方
左右の体重移動を使いローフェード

スタンスは広め&クローズで、ハンドファースト気味に構える。コックを使いながらクラブを上げ、右足にしっかりと体重を乗せる。トップは深めでOK。切り返しで左にしっかりと踏み込み、グリップエンドからクラブを引いていく。インパクトでは、上からヘッドを押し込んでボールをつぶしていくイメージ。体が突っ込まないように注意。インパクト以降も左ひざは曲がったままでOK。フィニッシュは「I字型」

「払い打ち体」に合うクラブ
=重心距離長めの大型ヘッド

クラブの進化を享受できる打ち方なので積極的に最新モデルを使おう。海外ブランドに多いオープンフェースのモデルもいい。これでハンドレート&ハンドアップに構える。アイアンもフェースがかぶっていないタイプのほうが構えやすい

「払い打ち体」に合う握り方
=左手ウィークグリップ

ウィークにすると、ハンドアップに構えやすく、手首が固定でき体の回転だけで打てる。シャットフェースのまま、右サイドで押していくようなスウィングに合う

「払い打ち体」に合う打ち方
上下の体重移動を使いハイドロー

スタンスは狭め&ややオープンにし、ハンドレート気味に構える。ヒンジ(右手首を甲側に折る動き)を上手く使い、シャットに上げていく。コンパクトなトップから、シャローに下ろすイメージ。切り返しで下に踏み込んだ反動で生じる上向きの力を利用して、アッパー気味に振っていく。インサイドからクラブを入れ、右サイドで押していくイメージ。インパクト以降左ひざを伸ばして回転。最後まで背筋を使うので、フィニッシュは「逆C字」に

松山英樹は打ち込み体
石川遼は払い打ち体

アプローチパット
タイプによって違う

「先ほども言ったようにプロはいろいろな“技術”を使いますから、2つのタイプが混ざっている部分もあります。だからパッと見てもどちらのタイプかわからない人も多い。でも、ゴルフ歴が浅いアマチュアの方こそ、自分がどちらのタイプかわかりやすいんです。教わる人、教わる理論が、自分のタイプと別だったら、なかなか上手くいかない。どんどんドツボにはまっていく可能性があります。それに、『今日はドライバーがよくてアイアンがよくなかったなあ』なんて言いつつ、次のラウンドでは逆のことを言っていたりする方は、まず、自分のタイプを知ることをおすすめします。混ぜるなキケンです。私の生徒さんに『昔はこの打ち方ですごくいいゴルフをしたのに、最近流行りの理論を練習しておかしくなったかもしれない』と、元に戻してスッキリして帰る方もいます」

アプローチ、パッティングにもタイプ別に合う打ち方、道具の選び方があるので、こちらも参考にしてほしい。

「ショットから全部つながっています。バンカーは、カットに打ち込むことが基本なので『打ち込み体』の人は得意なはず。そう思えば自信にもなりますよね。ショートゲームの距離感も、自分に合う打ち方でやれば、合わせやすいと思います」

いろいろな打ち方を次々にマスターしようとするのではなく、自分の体に合う打ち方を見つけ、そこから自分のゴルフを考えていく。取り組んでみる価値はありそうだ!

アプローチ

「打ち込み体」は転がす

ボールを右に置いて、超ハンドファーストに構える。グローブの甲側のマークが正面を向くくらいでもOK。左足体重にしてそのまま打つ。58度のウェッジでの転がしも得意なはず。さらに上からヘッドを入れるとプロのような低くキュキュッとスピンを効かせるボールも打てる

払い打ち体」は上げる

ボール位置は真ん中寄りで、わずかにハンドファーストにする程度。右手のヒンジを使って横から払うように打ち、キャリーで距離感をつくっていく。転がしたいときは、無理にロフトを立てて打つよりも、ロフトの立ったAWやPWを使うようにする

パッティング

「打ち込み体」は手首を使ってパチン

スタンスは広め、前傾を深くしたいのでボールから離れて立つ。手首でパチンと打つイメージでダウンブローに打っていく。インパクトで止めて、フォローを出さないイメージで

払い打ち体」はショルダーストローク

スタンスは狭めでオープン気味に構える。手首を固めてショルダーストロークをしたい。少しハンドアップにすると手首がロックされる。そのまま肩でストロークし、アッパー気味に振ってフォローをしっかり出す。太グリップも、手首が固定されやすいので合う

練習法

「打ち込み体」はステップ打ち

体重を左右に動かしてアークを大きくするため、足踏みをしながら振る「ステップ打ち」がオススメ。バックスウィングで右股関節にしっかりと体重を乗せるのがポイント。切り返し以降は左足にしっかりと踏み込んで打つ

払い打ち体」はハイティーアップ打ち

高めにティアップしたボールを打つことで、アッパーに振るための体の使い方を覚え込ませる。手を使わず足から始動し、切り返しから一度沈んで伸びる感覚で、ティーアップしたボールをクリーンに打っていく

週刊ゴルフダイジェスト2021年6月15日号より