【人気連載アーカイブ】イザワの法則2015「大型ヘッドを使いこなすには“等速”で振ること」
世界も認めた美スウィンガー・伊澤利光が、ゴルフで大切にしていることを語る連載「イザワの法則」。前回に続き、ヘッドの大型化によるスウィングの変化について、さらに詳しく語ってもらった。
ILLUST/Koichi Tanaka
昔は鋲のついたスパイクで
地面に足を押し付けていた
GD 伊澤プロは、ある時点から自分のスウィングとドライバーの相性が悪くなったということですが、もう少し具体的に説明してもらえますか?
伊澤 そうですね。一言で説明するとしたら、今のクラブというのは、自分でシャフトをしならせなくていい、ということなんです。昔は、重くて硬いスチールシャフトを、一生懸命、自分でしならせて打っていたわけですよね。そのためには、切り返した後に、左への体重移動を強く使わなきゃいけないし、そうすることでいわゆる「タメ」が強くなって、ヘッドがやや上から入る形になります。こういう、一連の動作が、極端に言えば、今のクラブでは一切、必要がないんです。
GD シャフトは勝手にしなるし、ボールはヘッドが勝手に上げてくれるという感じですか?
伊澤 そうですね。今のクラブに合ったスウィングというのは、切り返しであまり左に移動しないで、右足の上でくるんと回転する感じですね。ヘッド軌道も、昔に比べたらかなりレベルだと思いますね。力感もかなり違うと思います。昔だったら、鋲のついたスパイクで、ものすごく地面に足を押し付けないとスウィングできなかったですが、今のスウィングだったら、スニーカーでも十分振れるんじゃないかな。
GD 伊澤プロが、一番扱いやすかったヘッドの大きさというのは、どれくらいですか?
伊澤 300ccくらいじゃないですかね。年代でいうと、2000年前後。そこから先は、ちょっとずつ合わなくなっていきましたね。フェアウェイキープ率が少しずつ下がっていきましたから。
GD やはり、ツアーで戦うには、ティショットがフェアウェイに飛ばないと苦しいですか?
伊澤 トーナメントで優勝争いする時は、4日間通して、ティショットが大体フェアウェイに飛んでるし、フェアウェイから打つから、アイアンだってきちんと乗る。あとはパットの調子次第というところはあります。だけど、1年間通してとなると、80%も90%もフェアウェイをとらえることはできないですよね。普通は60%未満。それでもそれが45%を切ってくると、これは優勝争いに加わっていくこと自体が、すごく苦しくなるんです。私の場合、一番よくなかった時で35%を切っていましたから、これはもう苦しいどころの騒ぎじゃない(笑)。
GD 伊澤プロとほぼ同年代で同じくパーシモン世代のプロの中で、460ccをうまく使いこなしている人もいますか?
伊澤 例えば、藤田(寛之)くんとか、(片山)晋呉とか、そうじゃないかな。この2人はスウィングが「等速」というか、インパクトに向かって急激にヘッドを加速させないタイプだからいいんです。さっきも言ったように、重心距離の長いヘッドは、インパクトに向かってブワッとスピードを上げるタイプと相性が悪い。今のクラブは、インパクトゾーンでバチンとやるんじゃなくて、スウィング全体を早く振らなきゃダメ。まぁ、わかっていても、長年のクセって抜けないもんですよ(笑)。
2000年頃のドライバー。300cc程度のドライバーだとヘッドスピードが速い人(当時の伊澤プロのように急加速するタイプ)でもスピン量が最適で飛距離・方向性ともバッチリ!
2014年頃から、ドライバーのヘッドは460ccと大型化。スピン量が増えて、曲がりやすくなってしまった
藤田寛之や宮本勝昌、片山晋呉は
ヘッドの巨大化に上手く対応できた
伊澤利光
1968年生まれ。神奈川県出身。学生時代から頭角を現し、プロ入りしてからは、プロも憧れる美しいスウィングの持ち主として活躍。2001年、2003年と2度の賞金王に輝く。また、2001年、マスターズで日本人最高位(当時)の4位入賞。現在はシニアツアーを中心に活躍中
月刊ゴルフダイジェスト2015年2月号より