【競技ゴルファー・タニシゲ】Vol.26「弱点から目をそらさない!」

ドライバーショットで上体を突っ込まないようにするためのドリルを伝授された谷繁。ドリル効果で下半身が使えるようになると、ショットに安定感が出てきた。“生き球”連発で「今の見た?」と調子に乗るレジェンドキャッチャーだが、落とし穴が……。
PHOTO/Tadashi Anezaki

青木翔 1983年福岡県生まれ。2017年渋野日向子を全英女子オープン優勝に導いたコーチ。2020年レッスン・オブ・ザ・イヤー受賞。ジュニアから一般アマチュアまで幅広く指導。「六甲国際ゴルフアカデミー」校長
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- ドライバーを振る際、ボール位置よりやや手前に向けて振り下ろすイメージを持てたことで、自然とアッパー軌道になり、が然“生き球”が出だした谷繁。すると、いい動きを体に染み込ませるために青木がドリルを伝授するという。“頑張ることのプロ”谷繁の反応は……。 PHOTO/Tadashi Anezaki 谷繁元信 1970年広島県生まれ。88年ドラフト1位で横浜大洋ホエールズ入団。02年……
ドライバー不調の原因
最下点の「差」に気付く
谷繁 ついに下半身のレッスンにまでたどり着いた!
青木 左の壁を作って下半身を粘らせるためのドリルをやってもらいました。それで、いい感じに振れていたんですが、油断するとフィニッシュでしっかり立てず、1、2歩前に歩き出してしまっていましたよね。左ひざをグンと伸ばして地面を蹴らずに、右足で蹴る動作でバランスをとってスウィングしていたからです。
谷繁 指摘されたときはわかるんだけど、どんどん意識が薄くなってしまうんだよね。左の壁を作ること、クラブを振るときは左耳の延長線上あたりを見て、そこに振り下ろすイメージを持つこと……この2点をもう一度確認して再トライ。
青木 繰り返すうちにどんどん安定しましたね。
谷繁 下半身が使えてきた感じがしました。
青木 レッスンを通して、アイアンが上手い人はドライバーが苦手、ドライバーが得意な人はアイアンが苦手という“ゴルフあるある”の謎も解けてきましたよね。ポイントは最下点、でした。
谷繁 クラブの最下点に向かって振らないからなんだよね。謎はすべて解けた!
青木 子ども探偵みたいなことを言いますね(笑)。
谷繁 今回はアイアンレッスンが先で、アイアンの調子が良くなってきたところでドライバーに替えたら感覚がおかしくなったんだけど、そもそもアイアンとドライバーでは最下点が違うもんね。
青木 そうです、そうです。
谷繁 ドライバーショットのとき、アドレスでどうしても左かかと延長線上に置いたボールをじーっと見つめてしまうクセがあったんです。でも、青木さんのアドバイスで、ドライバーの最下点である左耳延長線上を意識するようにしました。最下点に向けてドライバーを振り下ろすと自然とアッパー軌道になる。アドレス時の視線を変えるというのはかなり実践しやすいですね。まあ、忘れなければ、だけど……(笑)。一方、アイアンはクラブの最下点がボール位置よりやや前で、意識としてはボールに向かって振り下ろす感じでOK、と。
青木 もう少し正確に言うと、アイアンの最下点はボールの少し先なので、意識も少し先がいいんです。谷繁さんとは逆ですが、ドライバーはいいのにアイアンでトップやダフリが出やすい人もいます。そんな人は、練習の際、ボール位置の少し先にテープを張ったり印を付けたりして、そこに向けて振る意識を持つ練習をしてみるのもいいですね。
谷繁 アイアンが不調の人は試してみる価値あり!

アドレス時、ボールを見つめるクセがあった谷繁。青木はボール位置より10センチほど手前にボールを置き、「このあたりを見てください」とアドバイス
青木 一方、以前「ドライバーを直すのは少し時間がかかります」と言ったことがありますが、下半身の粘りや左の壁を作ることはすぐにはできません。ドリルを伝授しましたが、ドリルをやって、練習場やコースで実践しての繰り返しです。
谷繁 確かに難しいよね。左足のひざをグンと伸ばして地面を蹴る動きやパワーを左の壁にぶつけるイメージ。体の動きとしてもけっこうハードなので、つい体を開いてパワーを逃がしてしまっておなじみのカット軌道が出る。
青木 器用なので手の動きでカバーして何となくいい球が出ることもあるのですが、安定しませんよね。競技ゴルファーとしては厳しいです。
谷繁 青木さんが俺の悪いときのスウィングを大げさな感じで真似してくれたけど、あれが恥ずかしかったのなんの。テークバックで上体が浮き上がって、トップから絞り込んで……最後は引き込んで……みたいな。見ていて「俺、こんなにかっこ悪いの?」と思いながら、確かにそうだな、と。自分の弱点から目をそらさないことも大切ですね。つらいけどね。野球でもそんなことがあったな。昔の話だけど。
青木 恥をかく経験って大人になると少なくなりますが、大事なことですよね。
谷繁 それが成長のステップになる!
週刊ゴルフダイジェスト2025年3月25日号より
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