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Dr.クォンの反力打法 Vol.3 反力を回転力に変える縁の下の力持ち“モーメントアーム”

地面を踏み込むと、同じ大きさで逆向きの力が地面から返ってくる。この「グランド・リアクション・フォース」(地面反力)を利用することが、効率良く飛ばすために重要なのだと前回説明してくれたクォン教授。それに対して吉田洋一郎プロが抱いた疑問とは?

【語り手/クォン教授】
ヤン・フー・クォン。テキサス女子大学教授。専門はバイオメカニクス。生体力学的に理に適ったスウィングを研究。教え子にタイガーの元コーチ、クリス・コモらがいる

【聞き手/吉田洋一郎プロ】
よしだ・ひろいちろう。D・レッドベターをはじめ、世界の名だたるコーチのもとを訪れ、最新理論を直接吸収。日々探究・研鑽に余念がないゴルフスウィング研究家

前回のお話はこちら

吉田 前回ご説明いただいた地面反力は、上向きの力ですよね。一方ゴルフのスウィングは体の回転運動。これがどう結びつくのでしょうか?

クォン そう、スウィングは回転運動。実は地面反力には、その回転を促進する効果があるんだ。

吉田 どういうことでしょう?

クォン 正面から見ると、スウィングは体の重心を中心に回転する。これにはもちろん体の内側の力=筋力が大きく関わるのだが、それとは別に、体の外側の力=地面反力も重要な役割を担っている。地面反力は、左右の足の合力として、上向きに働く。この上向きの矢印が、もし体の重心部分を通ったとしたら、回転は促進されないが、矢印が重心より(自分から見て)左を通った場合、スウィングと同じ向きの回転力が生じる。

吉田 わかったような、わからないような……。

クォン そうだな、例えばこの固く締まったナットを回すとき、ヒロはどうする?

吉田 手ではとても回せないので、スパナを使いますね。

クォン そう。スパナの一方をナットに固定して、もう一方の端を手で押すことで、強い回転力が発生する。でも一方で、回転の中心になるナットそのものをいくら押してみても、ナットは回転しないね。つまり、回転の中心を通る力は回転を促進しないが、回転の中心を通らない力は、回転を助長する力になる。これと同じことが、ゴルフスウィングでも起こっているんだ。

アーム(柄)が長いスパナと短いスパナでは、同じ力を加えたときでも長いほうがナットを回転させる力は大きくなる。スウィングでも、地面反力の矢印が体の重心に近いところを通ると、「モーメントアーム」が短くなり、回転力は小さくなる。回転力を高めるには、地面反力をより強く、かつ矢印が体の重心より左側を通るように足の踏み込みをコントロールする必要がある

吉田 そうか! つまり、地面反力が地面から真上に向かって働いた場合は、体の回転をサポートする力にはならないけど、それが少しでも重心より左に向かって(傾いて)働いた場合は、体の回転を促進する力になる、と。

クォン そのとおり! 体の重心(回転の中心)から地面反力の矢印までの垂直距離のことを「モーメントアーム」と呼ぶが、それはこのスパナのアームと同じ。アームを押す強さ(=地面反力の大きさ)と、アーム自体の長さが大きくなればなるほど、回転力は強くなるというわけだ。

吉田 へそに仮想のアームがついていて、地面反力がそのアームを下から押してくれると考えればいいわけですね!

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回転力MはF×dで決まる

左足を踏み込んだ反力をFL、右足の反力をFRとすると、2つの力の合力Fは左右の足の間から上向きに働く。このFの矢印と、体の重心CMとの垂直距離dの長さが「モーメントアーム」となる。体を回転させる力(M=モーメント)は、F×dで求められるため、回転力を上げるには、反力Fを大きくするか、モーメントアームdを長くすることが必要。反力Fの矢印が体の重心CMを通ると、dの値がゼロになるため、反力Fの値をどれだけ大きくしても(=強く踏み込んでも)、回転力は生まれない。つまり体幹などの筋力だけで体を回さなければならないということ。

Vol.4へ続く | 反力打法TOP

Dr. クォン&吉田洋一郎
『驚異の反力打法』

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