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【イザワの法則】Vol.50 パットは“データ”より“感性”が大事だと思います

「パットに形なし」の格言の通り、プロでもメカニカル(打ち方)よりフィーリングを重視する人が多かったのがパッティング。ただ、最近はパターにもデータ計測の波が来ている。実際、データはどれくらい有用なのだろうか?

TEXT/Daisei Sugawara ILLUST/Kenji Kitamura PHOTO/Hiroyuki Okazawa THANKS/福岡レイクサイドCC(PGM)

前回のお話はこちら

完璧なストロークも
カップインを保証してくれない

長尺(中尺含む)パターを使うようになってから、もうだいぶ経ちますが、今シーズンの途中から右手の握り方を変えました。野球の「フォークボール」みたいに、人さし指と中指の間にグリップを挟む感じの握り方なんですが、「すまいーだカップ」(5月30日~6月1日)のときにちょっとピンときて変えてみたら、割とフィーリングがよかったのでそのまま継続しています。その後、「マルハンカップ」(8月24~25日)の前に、何となくボールが「滑る」感じがしたので、ロフトを2度寝かせたんですが、これがよかったのか、マルハンカップでは優勝できました。


パッティングというのは、完璧なストロークをしたから入るというものではなくて、まずはスピードの読みが合っているかどうか、それに対してぴったりのタッチで打てるかどうか、さらにどのくらいの曲がりかを読んで、打ち出し方向をどこに設定するかなど、経験と感覚に頼る部分が多いのが特徴です。タッチに関しては、私はある程度振り幅で決めますが、人によっては、カップを見て素振りをして、そのときの手の感覚だけで打つという場合もあります。極端な言い方をすると、結果として狙ったタッチで打ち出すことができるなら、やり方は「何でもいい」わけです。

データ計測のメリットは確かに多いが
デメリットもある

最近は、一般の練習場にも弾道計測器があって、一球一球計測しながら練習するほうが上達が早いと考えている人が多いようです。実は、パッティングもストロークやボールの転がりを詳細に計測できるスタジオがあって、プロの中にも通っている人はいます。ただ、ショットと違ってフィーリングに頼る部分が多いパッティングを、データできっちり分析するということには、私自身はあまり興味を持てません。1度目の賞金王の翌年(2002年)、とあるパッティングスタジオで計測してもらったことがあるんですが、その時も設備や機械に感心はしましたが、「定期的に計測しなくちゃ」という気持ちにはなりませんでした。

たとえば、計測したらアドレスで少しフェースが開いてます、とかストロークが少しカットですと言われたとします。でも、その人にとってはそれが「真っすぐ」である可能性もあるわけです。つまり、アドレスごとにフェースが開いたり閉じたりするんじゃなくて、常に安定して開いていれば、打ち出す方向も常に一定になるということです。さらに、その人の「目」がそれを「真っすぐ」と認識しているなら、それはもう「真っすぐ」でしかない。そこに、データ上の「開いています」は、何か意味があるのでしょうか。むしろ、「開いているならもう少し閉じなきゃ」というような余計な思考が混ざってきて、大事な「感性」を殺してしまうんじゃないかと心配になってしまいます。

もちろん、データで見ないと安心できないという方も多いでしょうし、一概に良い、悪いは言えないとは思います。ただ、打ち方に神経を使いすぎて、カップに「入れたい」という感性が薄れるのは、本末転倒ではないでしょうか。

「ストロークのデータ上のエラーを
知るべきか知らざるべきか
判断は難しい」

迷うならデータは見る必要なし!

今シーズン途中から、右手のグリップを変更した伊澤プロ。そもそもパッティングだけは、「こう握るべき」という教科書的な“ 決まり”はない。ボールを遠くに飛ばす必要がないので、本人が感性を表現しやすいものであれば、どんな握り方でもいい

伊澤利光

1968年生まれ。神奈川県出身。学生時代から頭角を現し、プロ入りしてからは、プロも憧れる美しいスウィングの持ち主として活躍。2001年、2003年と2度の賞金王に輝く。また、2001年、マスターズで日本人最高位の4位入賞(当時)。現在はシニアツアーを中心に活躍中

月刊ゴルフダイジェスト2025年1月号より