【上手くなる! ゴルフの日の時間割】<後編>ラウンド後の15分」をどう過ごすかが大事です
普通のアマチュアにとって、コースでのラウンドは楽しい時間であると同時に、貴重な経験の場でもある。ラウンドの機会を有効に生かし上達につなげるカギは「時間の使い方」にある。後編はラウンド中とラウンド後の過ごし方について教わった!
TEXT/Kousuke Suzuki PHOTO/Hiroyuki Okazawa THANKS/芳賀CC
解説/小野寺 誠
1970年生まれ。16歳で渡米しゴルフを学び、帰国後96年にプロ入り。年間250ラウンドする現場主義の実戦派コーチ
>>前編はこちら
- 普通のアマチュアにとって、コースでのラウンドは楽しい時間であると同時に、貴重な経験の場でもある。ラウンドの機会を有効に生かし上達につなげるカギは「時間の使い方」にある。まずはラウンド前の理想の過ごし方について、小野寺誠プロに教えてもらった。 TEXT/Kosuke Suzuki PHOTO/Hiroyuki Okazawa THANKS/芳賀CC 解……
プレーが遅い人は
上手くなれない
プレーを効率よく経験に変えるために時間の使い方が重要なのは、プレー中も同じだ。多くのアマチュアはムダなことに時間を使ってプレーがバタつき、結果的に必要なところに集中できていないせいで、経験値がたまっていかないと小野寺プロ。
「経験とは何かといえば、情報収集とその処理に尽きます。同じショットを打っても、ライはどうだったか、風向きはどうだったかといった細かいことが自分の中にどれだけ精密に残るかによって、蓄積される経験値は劇的に変わります。情報は得るのにも処理するのにも時間が必要です。その時間を作るためにも、プレースピードを速くすることはとても重要なんです」
プレーが遅い人というのは、得てして自分の打順まではボーッとしていたりただ手際が悪い場合がほとんど。プレーが速い人ほど、事前の準備をスマートに済ませ、情報収集して余裕を持ってショットに臨んでいるものだ。「プレーファスト」はマナーの面でも重要だが、上達のためにも不可欠なことなのだ。
「その顕著な例が、ホールレイアウトやピン位置の確認です。アマチュアの多くは、2打目地点に行ってから『ピン位置どこだっけ』とか『このホール、パー5だったのか』などと言いがちですが、プロはティーショットを打つ前に必ず確認し、それをもとに戦略を立ててから1打目を打っています。オナーならともかく、2番手以降の打順なら、カートナビを確認する時間くらいあるはず。この時間を有効活用できるかどうかで、上手くなれるかどうかは決定的に分かれます」
2打目地点に行く際も、カートに座ってスマホを見ている暇があれば、少し歩いて景色を見渡すこと。歩いていれば風も感じるし、傾斜を察知したり「今日はラフが深いな」というようなコース情報が蓄積されていく。打つ直前になってから「ええと、風向きはどっち?」と言い出す人に、上手い人は存在しないという。
グリーン上では、自分のライン読みに必要以上に時間をかけるよりも、他のプレーヤーのラインも読んでおくほうがいい。複数のラインを読むことによって、グリーン全体の傾斜もわかるし、結果的に自分のラインも大局的に、客観的に判断できる。ライン読みが下手な人は、これをやっていないケースが多い。こういった細かな情報収集とその処理こそが、本当の意味でスコアメイクのカギとなる。「ショット力の割にスコアが出る人」は、これが普段から習慣づけられている人なのだ。
ティーイングエリア
ピン位置はティーショットを打つ前に必ずチェックする
ホールレイアウトとピン位置の確認は、ティーショットを打つ前に必ず済ませる。レイアウトはもちろん、ピン位置を知らずにマネジメントは立てられない。事前にレイアウトを見ておけば、視覚的なワナに引っかかることも、OBやハザードに気付かずに入れてしまうミスも減る。カートナビを使えば、ほんの数秒の手間で済む。上達のためにもプレー速度向上のためにも、習慣化しておくべき行動の1つだ
ピン位置やOB、ハザードの位置はもちろん、ガードバンカーとグリーンの間の距離などを事前にチェックしておくと、戦略を立てやすい
フェアウェイ
歩く時間を作って風や景色を感じておく
カートは活用すべきだが、乗りっ放しはよくない。少し早めに降りて歩く時間を作ることで、風や傾斜を感じられるし、さまざまな情報を収集できる
次のホールのグリーン周りが見えれば、それも貴重な情報になる
グリーン
同伴者全員のラインを読めばパット4回分の経験になる
パットのラインは、自分のラインだけむやみに長々と読んでもいい結果にはつながらない。その時間があるなら、他の人のラインもなんとなく読んでおき、転がりを予測してみよう。自分のラインの参考にもなるし、1つのグリーンで4倍の経験値が得られるので、結果的にライン読みが上手くなる
スウィング
ラウンド中は事前に決めた“1点だけ”を必死でやり通す!
ラウンド中、技術的なポイントをたくさんチェックすることはできない。事前に1つ「今日はこれをやる」という要点を決めておき、ラウンド中はそこに集中。それができたかどうかをスウィングの判断基準にしよう。あとはバランスよくフィニッシュを取ることが大事
ラウンド後の15分で
大きな差が付く
上達が早い人の時間の使い方としてポイントとなるのが、ホールアウト後の練習だ。疲れているし、早くひと風呂浴びて帰りたい気持ちはよくわかるが、この15分、わずか1カゴの努力は、どんな練習にも勝ると小野寺プロは言う。
「コースをラウンドしていると、スムーズに振り切ることよりも当てることに意識がいって、スウィングがどんどん縮こまるし、アドレスも狂い、悪いクセも出てくるんです。ホールアウト後、自分の得意クラブ1本を1カゴ打つだけで、これをリセットできる。これをやっておけば、次のラウンドや次の練習にそれを引きずらないで済むので、練習・ラウンドの効果が倍増します。たった15分、この時間を割ければ、今日1日のラウンドが本当に自分の血肉になっていくんです」
またこれはラウンド中のことでもあるが、スコアカードの余白に自分のプレー情報をメモすることも、上達には非常に有効だ。フェアウェイキープ、パーオンの有無と、100ヤード以内から何打で上がったか、この3ポイントをメモする習慣をつけたい。後日見直すまでもなく、ホールアウト後にチラッと確認するだけで、自分のゴルフの質や課題が手に取るようにわかる。ほんのひと手間、ここに時間を割ける人は、自分を客観的に見ることができ、上達のスピードも速くなるのだ。
「個人的にみなさんにぜひやってほしいのが、ホールアウト後のクラブ掃除です。マスター室前でキャディバッグからクラブを全部出して、濡れぞうきんで拭き上げる。クラブのコンディションをいい状態に保つことにもつながりますし、自分のクラブに愛着が湧き、プレーが丁寧になります。最後にキャディバッグ内にエアガンを吹き入れてみてください。普段やらない人は、大量の芝カスが出て驚くと思います。精神論と思うかもしれませんが、この10分の手間は、あなたのゴルフの質を確実に上げてくれるはずです」
ちなみにコースに天然芝のアプローチ練習場がある場合はぜひ活用してほしいと小野寺プロ。アマチュアにとって、芝の上からのアプローチや砂からのバンカーショットはもっとも不足する練習。わずか15分でも必ずスコアに直結するもっとも効率のいい練習なので、無駄にすることなく生かしていただきたい。
ラウンド後
得意クラブをリズムよく振って悪い動きをリセット
得意クラブを1カゴ分、気持ちよくリズムよく振り切る練習で、今日のラウンドでたまった悪いものをリセット。バランスのいいフィニッシュを心がけよう
アドレスも再確認!
ホールアウト後は
ちゃんとクラブを掃除!
小野寺プロは、ホールアウト後にクラブを全部バッグから出し、濡れぞうきんで拭き上げることを習慣にしている。グリップもキレイに保てるし、クラブの異常などにも気付ける。何よりクラブに愛着が湧き、プレーも丁寧になる。最後にバッグ内にエアガンを吹き入れて、芝カスを飛ばそう
スコアカードに「FWキープ」
「パーオン」「100Y以下の打数」をメモしておこう
ラウンド中、スコアカードの余白に以下の3項目を書き込んでおこう。「フェアウェイキープ」は○か×、×の場合は左右どちらに外したかを記録しておきたい。「パーオン」は○か×だけでOK。「100ヤード以下の打数」は100ヤード以下のショットやアプローチが残った場合、パットを含めてそこから何打でカップインしたか。これを見返せば自分の弱点が一目瞭然で把握でき、今後の練習に役立つ
芝から打てるアプローチ練習場は
またとないチャンス!
コースに芝のアプローチ練習場がある場合は、絶対に利用したい。芝からアプローチする経験はアマチュアに決定的に不足しており、スコアに直結するもっとも効率のいい練習だ。スタート前のおすすめは、5~10ヤード、自分に打てる最小キャリー距離をたくさん打つ練習。ホールアウト後のおすすめは、クラブやスティックを足元に置き、打ち出し方向をそろえる練習だ
【スタート前】
「ミニマムの距離」を連続して打ち続ける
小さい動きで自分に打てる最小キャリーを繰り返し打つ練習。再現性アップに有効で、「ゆるみ」も取れる
【ホールアウト後】
アライメントスティックで出球の方向をそろえる
足元に棒などを置いて、気持ちよく打てる距離を、打ち出し方向がそろうように打ち続ける練習
週刊ゴルフダイジェスト2024年12月号より