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162cmで292Y! 生源寺龍憲が“反力先生”Dr.クォンに1日入門<後編>地面反力を効率よく使えるようになる最強ドリルとは?

生源寺龍憲プロが、「反力打法」でお馴染みのクォン教授のもとを訪れさらなる飛距離アップに挑戦! クォン教授が指摘した問題点と、それを改善するための練習方法を教えてもらった。

TEXT/Kosuke Suzuki PHOTO/Tadashi Anezaki、Hiroaki Arihara ILLUST/Hideki Kamekawa THNAKS/ネクストベース・アスリートラボ

ヤン・フー・クォン

テキサス女子大学教授で、バイオメカニクスの権威。ゴルフスウィングにおける地面反力の研究を得意とし、B・デシャンボーをはじめ多くのトッププロやコーチを指導する

生源寺龍憲

1998年生まれ。昨年ABEMAツアーで2勝を挙げ賞金王となり、アジアンツアーのQTも2位で通過。今年はアジアンツアーと国内レギュラーツアーに挑戦しつつ、初優勝を狙う

>>前編はこちら

速く上げて強く踏むのが
飛ばしの秘訣

生源寺の問題点は、せっかくの大きな地面反力を回転に生かせていないことだとクォン教授。

「現象から説明するならば、地面反力の発生する“方向”が悪いんです。地面反力のベクトルは、自分の体の重心から遠いところを通るほど、それが『モーメントアーム』となり、テコの原理で体の前後軸における回転(縦回転)を促進する。生源寺プロの地面反力は体の重心のすぐ近くを通っておりモーメントアームが短いので、大きさの割に回転に寄与していないんです」(クォン)

生源寺プロは、強く地面を踏めており発生している地面反力も大きいが、左右の足の圧の差が小さい。そのため、左右の地面反力の合力が左に傾かず重心の近くを通っており、モーメントアームが短く、回転力に転換できていなかった

ではモーメントアームを長くするにはどうすればいいのか。それは左右両足から生まれる地面反力の合力を左に傾けること。つまり切り返しで地面を押す際の左足の比率を高めることがポイントだという。
クォン教授によれば、これは単純に切り返しで左を強く踏むことではなく、バックスウィングの段階でより右足でしっかり地面に圧をかけることで、「右→左」というステップ的な動きを生むことが肝心だという。

「僕は体重移動が苦手だと思っているので、右→左という揺さぶりを嫌がってバックスウィングで右を踏めていませんでした。クォン教授には、揺さぶるのではなく、右足を踏んで骨盤を右上に切り上げるようなバックスウィングを指導されましたが、これならスウェイせずにしっかり右に乗れて、切り返しで左にもっとダイナミックに乗れる。ただ左を強く踏むのではなく、こうやって右→左という動きの連鎖を使うことが大事だったんですね」(生源寺)

これに際してクォン教授は「バックスウィングを速く上げること」を強調している。生源寺はスウェイを嫌がりバックスウィングをそっと、上半身主体で上げていたせいで、切り返し以後の出力が急激になっていた。もっと下半身を使って速く動くことで、全体のリズムが整い、運動連鎖がスムーズになって左への踏み込みや出力のタイミングも早くなるというわけだ。

「これはアマチュアにも共通する問題点です。ステップするようにバックスウィングを速く上げれば、地面反力は倍増します。飛ばしたかったらバックスウィングはゆっくり上げてはダメなんです」(クォン)

ポイントは「モーメントアーム」を長くすること
地面反力は地面にかけた圧の反作用なので、左右の足で地面を押した力の合力となる。この地面反力のベクトルが体の重心よりも左を通ることで、スパナがボルトを回すように前後軸での回転を促す。その際、地面反力が作用するポイントが体の重心から遠いほど、モーメントアーム=スパナの柄が長くなり、効率よく体を回転させることができる。そのためには、左足で地面を踏む圧を右足よりも大きくすることが肝心だ

  • 地面を踏み込むと、同じ大きさで逆向きの力が地面から返ってくる。この「グランド・リアクション・フォース」(地面反力)を利用することが、効率良く飛ばすために重要なのだと前回説明してくれたクォン教授。それに対して吉田洋一郎プロが抱いた疑問とは? 【語り手/クォン教授】ヤン・フー・クォン。テキサス女子大学教授。専門はバイオメカニクス。生体力学的に理に適ったスウィングを研究。教え子にタイガーの元コー……


左足でかける圧を増やすことがカギ

切り返しで地面を踏む際に左にウェイトシフトし、左でより強く地面を踏めれば、モーメントアームは長くなる

「速いバックスウィング」は運動連鎖を整えてくれる

問題解決にはバックスウィングのスピードを上げることが肝心。バックスウィングで右足をしっかり踏み、その地面反力で骨盤を右に切り上げるようにスピーディに動かすことで、運動連鎖が整い、左へのシフトもスムーズになって結果的に強く左に踏み込める

左への踏み込みがスムーズになって
モーメントアームも長くなる!

右足を踏んだ勢いで骨盤を切り上げるように、スピーディにバックスウィングできると、その後の左へのシフトもスムーズになって、しっかり左で地面を踏んで切り返せるので、モーメントアームが長くなり回転力も増す

Point 1
骨盤をタテ方向に動かして上げる

右のお尻を後ろに引くように垂直軸で回転するのではなく、骨盤を切り上げるようにタテ方向に動かすことで前後軸の回転を促す。上下動を恐れず、体の右サイドを引き上げよう

Point 2
右足をポンと踏んで地面反力で上げる

バックスウィングは、右足で地面を踏むことによって生じる地面反力を使う。地面を長くどっしり踏むのではなく、ポンと踏んだ反動で骨盤を切り上げるのがポイントだ

【注意】速く動かすのは手ではなく下半身
「バックスウィングを速く」と言われると、アマチュアの多くは腕を速く動かしてクラブを速く操作しようとしがち。手を動かす感覚は必要なく、下半身や骨盤の動きの速度を上げることが肝心だ

“ロープ素振り”が最高のドリル

地面反力をより上手く使ったスウィングを体感するためにクォン教授が生源寺に渡したのは、1本の太いロープ。これを振ることが一番のトレーニングだとクォン教授。

先ほど指導のあったバックスウィングを意識すると、手を振らなくてもロープが自然と体に巻き付くように、スピーディに振られる。下半身をどう使えばこのロープを振る速度を上げられるかを考えれば、自然と地面反力を生かせるという。

「コツは『Push』と『Shift』。足で地面を押した反動で骨盤を動かしてバックスウィングし、体にロープが巻き付いている“間”に左にシフトして、また左足で地面を押す。これを繰り返せば誰でも飛距離が伸びますよ」(クォン)

ポイントは、トップとフィニッシュでロープがわきの下に巻き付くことと、風切り音が右足前からインパクト付近で鳴ること。

「僕は風切り音が左で鳴りがちでしたが、クォン教授が『出力が遅い』と言っていたのはこのことでした。インパクト後にヘッドが最速になっても遅い。もっと早いタイミングで振ってよかったんだとわかりました。今回の指導はすごく学びが多く、僕もまだまだ飛距離が伸びると確信できました。これからもっと研究して、自分のものにしていきたいと思います!」(生源寺)

ロープはわきの下に巻き付く
前後軸の回転を上手く使って振れると、ロープの先端はトップとフィニッシュでわきの下に出てきて巻き付く。これがチェックポイントの1つ
●音を鳴らすのは右足前
風切り音は右足前からボール地点の間。ここで最高速度が出るように振らなければ、ボールに最大のエネルギーをぶつけることはできない

下半身の力でロープを振る感覚がカギ

ロープを振る原動力は下半身。手を使わなくても、地面を「Push」し、切り返しで左に「Shift」して再び左で地面を「Push」すればロープは速く振れる。どうすればより速く振れるかを試行錯誤することが大事だ

Point
右足の「Push」で骨盤を動かし
左に「Shift」してから踏み込む

右足で地面を押した反力で骨盤を切り上げ、その動きでバックスウィング。切り返しで背中が左に平行移動するようにシフトし、今度は左足で地面を押してダウンスウィング。これを左右に繰り返す

地面反力を生かす
3つのドリル

解説/吉田洋一郎

クォン教授の理論に精通し、2019年には教授とともにレッスン・オブ・ザ・イヤーを受賞した

クォン教授が生源寺プロに教えたことのエッセンスを体感できる練習方法がある。クォン教授の生徒でもあり、共著で「驚異の反力打法」を執筆するなど教授の理論に精通する吉田洋一郎プロに、アマチュア向けにドリルを紹介してもらった。

1つ目は、右かかとを上げ、それを踏んで始動するドリル。バックスウィングで地面を押す動作のきっかけをつかめるので、「手上げ」の解消に有効だ。

2つ目は、左足を左に踏み出しながらバックスウィングするドリル。「左への踏み込みは、バックスウィングの早い段階で始めなければならないのに、アマチュアの多くは左へのシフトが遅すぎます。右に上げながら左に踏み込むという、左右を分離した素振りが、スムーズなシフトを学ぶのに有効です」(吉田)

3つ目は左素振りのフォローをバックスウィングに組み込むドリル。「バックスウィングを速く上げる感覚は、左スウィングのフォローのイメージなんです。これでクォン教授の言う『速いバックスウィング』が身に付くはずです」(吉田)

まずはこの3つのドリルから地面反力を使うコツを身に付けていけば、飛距離アップ間違いなしだ!

Drill 1
右かかと上げ始動

右かかとを上げ、踏んで始動する。右足で地面を押しながらバックスウィングする感覚、そのきっかけとなる「トリガーモーション」の習得に有効

Drill 2
左を踏んでバックスウィング

右手でクラブを持ち、左足を踏み出しながらバックスウィング。トップに到達する前に左への踏み込みが始まる「左右が別々に動く」感覚を体感できる

Drill 3
左素振りのフォローで上げる

左素振りのフォロースルーの動きを、通常の右振りでのバックスウィングに利用することで、速くバックスウィングするイメージを養うことができる

月刊ゴルフダイジェスト2024年10月号より