ストロークは“打つ”のではなく“上げて落とす”。パットの再現性を高めるコツ
パッティングは「カップが消えたらカップに入る!」と言う大本研太郎コーチ。後編では、パットの再現性を高めるためのストロークのポイントと、集中力を高めるコツについて教えてもらった。
PHOTO/Tadashi Anezaki THANKS/アコーディア・ゴルフ技術研究所
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- 多くのプロを優勝に導いた大本研太郎コーチによると、パッティングは「カップが消えたらカップに入る!」という。一体どういうことなのだろうか? ゴルフ大好きタレントのユージが直接話を聞きにいってみると……。 PHOTO/Tadashi Anezaki THANKS/アコーディア・ゴルフ技術研究所 ユージ 1987年生まれ。アメリカ・フロリダ州出身。2004年からモデルとして活動を開……
上げて、落とす
シンプルな振り子運動が理想
大本 イメージの世界で打つ重要性がわかったところで、次はストロークの話です。ユージさんには、ここだけは! という修正したいポイントがあります。
ユージ 何でしょうか?
大本 力を使って打っていますね。だから、トップよりフォローが大きい。
ユージ 打つ強さで距離感を出しているかもしれません。
大本 でも、その打ち方だと、いいときと悪いときの波が大きいんです。インパクトの精度を上げるなら、振り子式ストロークです。上げて、落とす! これですよ。
ユージ 上げて、落とす?
大本 たとえば10メートルを打つとしたら、ユージさんのいままでのテークバックがこのくらいなら、振り子式だとここまで上げます。
ユージ ええっ、こんなに大きくですか!
大本 そうです。大きく上げて、そこから腕とパターを一体化させて自然落下させる感じです。重力に任せて落とす。だから、精度の高い振り子運動になるわけです。
Point 1
振り子の要領で自然落下させる
「ユージさんは大きなフォローで距離感を出していましたが、それだと距離も方向も安定しにくいんです。インパクトの精度を上げるには、自分の力で振るのではなく、振り子の要領で落下させる感覚が重要です」(大本)
Point 2
大きく上げて慣性で下ろす
「完全振り子の原理で振るには、トップから脱力することがポイント。腕とパターの重さを利用して、慣性で下ろす感覚です。重力に任せて振り下ろすことで、パターヘッドのスピードもフェースの向きも安定します」
Point 3
手のひらを上に向け腕を外旋
「手のひらを上に向けるように腕を外旋させることで、わきが締まって体全体でストロークできます。これが薬指を使う感覚です。手のひらを横に向けたまま、人さし指と親指を使うと、腕だけを動かす不安定なストロークになってしまいます」
【もう1ポイント】
グリップは左右の薬指で握る
「両腕を外旋させて薬指で握ることで、背中側の筋肉が動きやすくなり、体全体を使う安定したストロークが可能になります」(大本)
“有効視野”だけに集中する
大本 では、カップを消すパッティング術に進みますね。
ユージ と、ここで不思議なメガネが登場するんですね。
大本 そうです。このとき、重要になるのが有効視野です。
ユージ 有効視野? 初めて聞く言葉です。
大本 人間の視野はだいたい180度くらいありますが、有効視野とは左右に30度ずつ、60度くらいの角度で見ている範囲を指します。
ユージ なるほど。
大本 この有効視野だけに集中できれば、パフォーマンスは確実に上がります。
ユージ それはなぜ?
大本 有効視野は、パッティングだと直径120センチくらいの円になりますが、この円より外側に見えているものは、すべてストロークを乱すノイズになってしまうんです。この120センチの円に集中できれば、遠くに見えるカップが消えて、軸ブレしないストロークが身につくんです。
ユージ でも、気になっちゃうんですよね、視界の奥にチラッと見えるカップが!
大本 このメガネなら、有効視野だけがクッキリ見えるので、目から入るノイズをシャットアウトできるんです。プロが体感している有効視野に集中する感覚がわかりますよ。
有効視野が体感できるメガネ
「ゾーングラス」
レンズの真ん中だけが透明なので、直径120センチの範囲だけがはっきり見えて、有効視野の効果を実感できる
有効視野とは、約60度の角度で見える範囲のこと。真ん中は中心視野、有効視野の外側は周辺視野で、たとえばグリーン上の木の影のゆらめきなど、周辺視野から入ってくる情報はすべてストロークを乱すノイズとなってしまう
Point
ボールを追わない、軸をブラさない
「たとえば、インパクトで頭が左に動くと、フェースは開いてしまいます。ボールを目で追ったり、軸が右にズレてしまう人は、ゾーングラスをかけるだけで、自然に軸ブレが小さくなります」(大本)
大本 カップを消すと入る! の意味、わかりました?
ユージ もう、目からウロコの連続でした。イメージの世界で打つのは初めて聞きましたし、有効視野でカップを消す話も新鮮でした。あと、振り子式のストロークが自分の感覚と違っていて驚きました。
大本 どれもトッププロが無意識にやっていることで、パッティングを上達させるには不可欠な要素なんです。実は、イメージの世界へのスイッチも、有効視野で見ることで入りやすくなるんですよ。
レッスン後
トップが大きくなり軸ブレが消えた
当初はフォローが大きく、ボールを目で追っていたユージさんだが、レッスン後はトップとフォローの差が小さくなり、軸ブレしなくなった
週刊ゴルフダイジェスト2024年6月25日号より