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【浦ゼミナール】Vol.7「ボールをよく見る」のはもうやめよう

身長171cmで420Yという驚異の飛距離を誇る浦大輔が、スキルアップのコツを伝授する連載「解決! 浦ゼミナール」。「ヘッドアップ」はアマチュアゴルファーの大きな悩みのひとつ。「ルックアップ」ならOKと浦プロは言うが、その真意は?

TEXT/Kosuke Suzuki PHOTO/Hiroaki Arihara、Tadashi Anezaki THANKS/√dゴルフアカデミー

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浦大輔

浦大輔

うらだいすけ。身長171cmで420Y飛ばす飛ばし屋にして超理論派。東京・赤坂で√d golf academyを主宰

ルックアップなら問題ない

――浦プロのスウィングって、インパクト前後から少し顔が上がりますよね。これってヘッドアップじゃないんですか?

 僕のはヘッドアップじゃなくてルックアップ。スウィングに悪影響はありませんよ。

――ヘッドアップとルックアップは何が違うんですか?

 スウィングに悪影響を及ほすヘッドアップは、上体の前傾角度に対して頭の角度が起き上がってしまうこと。頭に引っぱられて前傾角度も崩れやすいですし、体のスムーズな回転を損ないます。でもルックアップは頭の傾きを変えずに顔が目標方向に回っていくだけなので、悪い動きではないんです。アメリカで8度の賞金女王に輝いたアニカ・ソレンスタム選手もフォローで顔が目標方向に向いていきますが、彼女の動きもヘッドアップではなくルックアップ。

――首の角度が変わらなければ、顔が上がってもOKなんですね。

 人間は、普段立ったり座ったりして生活しているときは両目を結んだラインが水平になっているので、この目線の水平が崩れることに違和感があるんです。でもゴルフスウィングは前傾して行う動作なので、前傾を保ったまま目標方向を見ようとすると目線は斜めになる。ルックアップはこの状態なんですが、この傾きを嫌がって無意識に目線を水平に戻そうとすると、首の角度が変わってヘッドアップしてしまうというわけです。頭って人間の体のなかでも重い部位ですから、この置かれ方が変わったらスウィングのバランスも崩れてしまいますよね。


背骨に対して首の角度が変わるのが問題

インパクト後にターゲット方向を見ようとして、顔が起き上がって首の角度が変わってしまうのが「ヘッドアップ」。首が曲がらず背骨の延長線上に頭がある状態なら目線が上がっても「ルックアップ」なので問題ない

――なるほど。じやあ「頭を残せ」っていうレッスン用語も、実は正しくなかったってことですね。

 いえ、ある意味では正しいですよ。ヘッドアップを防ぐには頭は残すべきなんです。でも「頭を残せ」って言われると、みんな目線を残しちゃう。残すべきは目線ではなくて頭そのものなんです。

――頭そのもの?

 アドレス時に頭がある「空間」に頭全体を残すこと。鏡を見ながらスウィングしたときにアドレス時の頭の位置を枠で囲んで、そこから外れないようにスウィングすることが「頭を残す」ということなんです。その枠からはみ出さなければ、目線はどこにあってもいいし、顔の向きが変わってもスウィングに悪影響はありません。

大事なのは頭の“位置”が変わらないこと

松山英樹(右)は「頭が残る」典型的なプレーヤーだが、これをマネるには相当な柔軟性が必要。アニカ・ソレンスタム(左)はルックアップで有名だが、頭の空間的な位置はアドレス時から変わっておらずヘッドアップには当たらない。どちらの形も首の角度は変わっていないのでスウィング的に問題はない

肩がすくむと
スウィングが乱れる

浦 その意味では「頭を残せ」は正しいけれど「ボールをよく見ろ」はダメですね。

――ああ、それもよく言われます。

 松山英樹選手のスウィング写真なんかを見ると、たしかにフォローまでボールがあったところに目線があるか、もしかしたらちょっとボールより後ろに目線が戻ってるんじゃないかと思うくらいですが、彼の場合、体の柔軟性がとんでもなく高いですから。あれを普通の人がマネしようとしても、体の回転が阻害されてひじが引けるのが関の山です。

――そうですよね! 私もマネしたことがありますが、首がもげそうになりました(笑)。

 この「ボールを見ろ」っていう指導はホントによくない。まだスウィングが安定しないアマチュアは、ボールに「当たらなさそう」っていう不安があるから、「よく見て打て」って言われると納得してしまうんですが、ゴルフはスウィング中にボールが動きませんから、別にずっと見ていなくたって当たります。「そこの水筒取ってください」って言われたとき、一度チラッと見て場所を確認しておけば、そこを見っぱなしじゃなくても取れるでしょ? 野球じゃないんだから、ボールをよく見て引きつけても、打率は上がりません。

ボール位置を凝視する必要はない

「ボールをよく見る」ことを意識しすぎると、バックスウィングのスムーズな動きを損なったり(右)、フォローに向かって体が回らずひじが引けるなどの問題が生じやすい。ボールは打つまで動かないので、凝視しなくても当たる

――浦プロはスウィング中ボールは見ていないんですか?

 まぁ視界には入っていると思いますが、時計とかスマホの文字を見るように凝視はしません。その意味では「見ている」というより「見えている」に近いかもしれません。多分、松山選手だってボールを凝視してスウィングしているわけじゃないと思いますよ。

――たしかに、彼ならボールなんか見ないでも打てそうですもんね(笑)。

 ボールをよく見ようとしすぎると、バックスウィングでも体の回転が阻害されやすいですし首や肩周りにも力が入ります。肩に力が入ると、頭が下がっていかり肩になります。これだと腕には力が入らないので、当然パワーも出せません。力むと、力が足りないほうの肩がすくみやすいんです。なので、アマチュアは左肩がすくむ人が圧倒的に多い。左肩をなで肩にしたままスウィングする練習は効果的ですよ。そして鏡を見て、頭を空間に残す練習をしてください。これは絶対にやったほうがいい練習です。

左肩を“なで肩”にして振ろう

ボールを見ようとして力むと肩がすくみ、体の回転を損なう。右利きの人の場合、左肩がすくみやすいので、左肩を右手で押さえるなどして、左肩を“なで肩”の状態に保ってスウィングする練習をしよう。あごと左肩の距離をキープするイメージだ

Drill
鏡を見ながら素振りをしよう

正面や後方に鏡を置き、それを見たまま、空間に頭を残してスウィングする練習をしよう。頭の位置をビニールテープなどで囲うとベター。

月刊ゴルフダイジェスト2020年8月号より