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【浦ゼミナール】Vol.5「コブシ2個分」は今すぐやめよう! 体と手元の適正な距離はどう決める?

身長171cmで420Yという驚異の飛距離を誇る浦大輔が、スキルアップのコツを伝授する連載「解決! 浦ゼミナール」。アドレス時にボールからどれぐらい離れて構えればいいのか、適正な体と手元の距離はあるのか。詳しく聞いてみた。

TEXT/Kosuke Suzuki PHOTO/Hiroaki Arihara THANKS/√dゴルフアカデミー

前回のお話はこちら

浦大輔

浦大輔

うらだいすけ。身長171cmで420Y飛ばす飛ばし屋にして超理論派。東京・赤坂で√d golf academyを主宰

ボールと体の距離なんて
測っても意味はない

――浦プロのドライバーショットを見ると、ボールと体の距離がすごく遠く見えます。これも飛ばしの秘訣なんでしょうか?

 僕は取材や撮影のときは遠く立つので、「遠い」と感じるんでしょう。でもラウンド中は曲げたくないから近く立っていることもあるんですよ。飛ばすにはボールから遠く立ったほうが有利なのは間違いありません。スウィングアークが大きくなりますからね。それにフィンガーグリップで握ると、ボールと体の距離も自然と遠めになります。

――遠く立つつて、どのくらい遠く立てばいいんですか? そもそも、ボールと体の距離って何が正解なのかわからないし、すぐにズレてしまって困ります。よく、グリップエンドと体の間隔が握りコブシ何個分とか言いますけど……。

 あー、そういうのはいますぐやめないとダメですね。ボールと体の距離に決まったモノサシなんてありません。飛ばしたいのか曲げた<ないのかによって変わるし、そもそもその日の体のコンディションによっても変化するものですから。

――ボールと体の距離はどうでもいいということですか?

浦 どうでもよくはないですよ。さっき言ったように、飛ばしたいときは遠くに立つし、曲げたくないときは近くに立つ。あえて言うなら、アマチュアの多くはボールに近すぎる傾向はありますね。かかと体重だったり、背中が縮こまっていたりするから、自然とボールと体の距離が近くなりやすい。パームグリップの人も近くなっちゃいますね。

――近くなりすぎないように構えるには、ボールと体の距離はどうやって決めればいいんですか?

 ではアドレスの手順をお教えしましょう。まずは直立して体の正面で腕を下ろし、クラブが地面と平行になる位置に収めて、腕と体のポジションを決めます。このとき、グリップエンドが「猜下丹田」、つまりおへその下を指すようにしてください。そこから前傾してアドレスするのですが、その前に腕を前に出すのがポイントです。

――腕を前に出す?

 「前へならえ」みたいに肩甲骨の間を広けるように腕を前に突き出すんです。こうすることで背中だけでなく胸の筋肉が使えるようになり、大きなパワーが出せるようになる。これをやってから前傾すると、だいたいのアマチュアは従来の構えよりもボールが遠くなると思います。


肩を前に出してから前傾姿勢を作ろう

ボールと体の距離を安定させるにはていねいにセットアップすることが大事。腕を下ろしてシャフトが地面と平行になる位置から上体を前傾して構え、ヘッドをボールに合わせて構える。このとき腕を前に出すのがポイントだ。(左上)シャフトが地面と平行でグリップエンドが丹田を指す位置から前傾/(左下)「前へならえ」をするように腕を前に出すことで肩甲骨を出す/(右)腕と体の関係を崩さず前傾すればボール位置は自然と決まる

「つま先立ち素振り」から
かかとを下ろした形

前後の体重配分は基本的につま先寄り。つま先立ちでバランスを保ってスウィングし、そこからそっとかかとを下ろした位置が適正なポジション

ひじを曲げたほうが
上腕の力を出せる

――浦プロのアドレスを見ていてもうひとつ気になったのは、少し左ひじが曲がっている点です。

 そのほうがパワーが出せますからね。

――でも、左ひじは伸ばせと言われることが多いように思います。

 ハッキリ言ってそれもデタラメです。ひじをピンと伸ばしたら過伸展になりますから、ひじのクッションがまったく使えなくてケガをしますよ。またはケガをしないようにリミッターが作動してパワーが出ない。そもそも、ものを持ったり押したり叩いたり、何でもいいですけど力を出そうと思ったときにひじをピンと伸ばす人なんていませんよ。試しにこのボールカゴを持ち上げてみてください。ひじを伸ばして持ち上げますか? 曲げるでしょう?

――たしかに……。

 人間は、不安になったり緊張すると、関節を突っ張って使おうとするんです。マンガで緊張している人がロボットみたいに歩くのは、それを表現しているんです。だから「当たらなそう」と不安な人は腕を突っ張る傾向はあります。でもそうなったら肩もひじも手首もスムーズに動かず、絶対に飛ばせません。

――じゃあ、左ひじは曲げておくのが正解なんですね。

 はい。軽く伸ばすくらいはいいですが突っ張るのはNG。

――どのくらい曲げればいいんですか?

 また「どのくらい」ですか。決めたがりますねえ(笑)。これも「何度曲げろ」とかそんな基準はないですよ。

――多くの方が見る雑誌なので、何らかの基準は示したいんです。

 わかりました。じゃあ上腕二頭筋と上腕三頭筋、両方に力が入る角度ということにしましょう。腕を曲げたときにできる力こぶが上腕二頭筋。その裏側にある腕を伸ばすときに使う筋肉が上腕三頭筋です。腕をピンと伸ばすと三頭筋は硬くなりますが二頭筋はフニャフニャ。反対に目一杯曲げると二頭筋は硬くなりますが三頭筋はフニャフニャ。スイング中はこの両方の筋肉を使いたいので、両方に力を入れられる角度でアドレスしてください。

ひじは伸ばしきらない。二頭筋と三頭筋の両方に力が入る形に

――なるほど! 基準が明確でわかりやすいです。

 スウィングを考えるときに大事なのはこういうことです。なぜそれが必要なのかを科学的かつ論理的に考えること。そうすれば従来のレッスンのおかしい点も見えてきますし、自分がどうすればいいかも自ずと明らかになります。

飛ばしたければ指で握って遠くに立つ

ボールと体の距離を離せば軌道はフラットに、スウィングアークは大きくなり飛ばしに有利。また、力を出しやすいフィンガーグリップで握ればボールと体の距離も遠くなる。反対に曲げたくないときはパーム出に握ってクラブを吊るように持ってボールに近づけば、アークが小さくアップライトになる

月刊ゴルフダイジェスト2020年6月号より