【イザワの法則】Vol.36 パットは「真っすぐ打つ」がいちばん難しい
多くの人は33~34インチのパターを使っているが、伊澤プロをはじめ、プロの中には中尺、長尺パターを使う選手も少なくない。ストロークの仕方も人それぞれ。では、パッティングで一番大事なことは何なのだろうか?
TEXT/Daisei Sugawara ILLUST/Kenji Kitamura PHOTO/Shinji Osawa THANKS/福岡レイクサイドCC(PGM)
タッチよりも
「フェース向き」が何より大事
パッティングで何が一番大事かというと、結局は、ちゃんと狙った所に打ち出せるかどうかじゃないかと思います。よくあるパターの練習法で、グリーンにティーを2本刺して、その間にボールを置いて、フェースが2本のティーに同時に当たるように打つというのがありますよね。あれはつまり、インパクトで、目標に対してフェースをスクエアにするという練習なわけです。あるいは、同じティーペグを使った練習でも、50センチとか1メートル先に「ゲート」を作って、そこにボールを通すというのもあります。そういう練習を、プロでもやっているということは、ただ「真っすぐに打つ」というのが、実はいかに難しいのかということを示しているのではないでしょうか。
タッチのほうが重要じゃないかと思う人も、当然いると思います。確かに、タッチが違うとラインも変わってきますし、弱すぎても強すぎてもカップインさせられないことは事実です。ただそれもやはり、狙い通りに打ち出すということを大前提とした話になってくるような気がします。2メートルの真っすぐなラインで、インパクトのフェースの向きの誤差がどれくらい許されるかというと、約1度です。ということは、たった1度、フェースが開いたり、かぶったりしただけで、どんなに完璧なタッチで打ったとしても、2メートル以上のパットは「入らない」ということになります。逆に言うと、フェースの向きの誤差を練習で小さくしていくほど、2メートル以内のパットに関しては、確率を上げられる可能性があるわけです。
基本的には
ショルダーストロークがおすすめ
ストロークに関しては、「パットに形なし」と言われるように、本人にとって再現性が高ければ、どんなやり方でもいいとは思います。たとえば、個人的には手首の使いすぎはよくないと思いますし、アマチュアにはあまり手首を使わないようにアドバイスもしますが、歴代のパターの名手の中には、明らかに手首を使って打っている人もいますので、「絶対によくない」とは言い切れません。
それでも、一般的にはやはり、いわゆる「ショルダーストローク」と呼ばれるような、なるべく手の動きを抑えた、振り子のような打ち方というのが、距離感を合わせやすいと思います。私は、今は長尺パターを使っていますが、長尺の利点というのがまさに、グリップエンドを支点とした振り子の動きで打てるところです。グリップエンドを体に固定してはいけないルールなので、厳密にいうと不動の支点ではないのですが、ヘッドがほぼ完全な振り子状に動いて、なおかつ自然なイン‐イン軌道になるので、ボールをしっかりつかまえることができます。
短いパターを使っても、私は首の後ろとか、のどのあたりに仮想の支点を作ってストロークしますが、フィル・ミケルソンみたいに、ずっとハンドファーストで、ヘッドがストレートに動く時間が長い、「支点がない」タイプもいます。やり方はまったく違いますが、インパクトでいかにフェースをスクエアにするかという目標地点は同じだと言えるでしょう。いずれにしても、パッティングというのは、結果がすべてですので、個性的な打ち方でも、入ればOKというところはあります。逆に、どれだけオーソドックスな打ち方でも、入らなければ改善が必要ということになりますね。
「青木(功)さんのパッティングを見れば
正解はひとつじゃないことがよくわかります」
長尺は究極の振り子ストローク
長尺の場合、グリップエンドを支点とした振り子ストロークが、ほぼ自動的に行われるため、再現性の高さという面で利点がある。普通の長さのパターを使う場合でも、たとえば「首の付け根」などに支点をイメージすると、同じように安定して振りやすい
伊澤利光
1968年生まれ。神奈川県出身。学生時代から頭角を現し、プロ入りしてからは、プロも憧れる美しいスウィングの持ち主として活躍。2001年、2003年と2度の賞金王に輝く。また、2001年、マスターズで日本人最高位の4位入賞(当時)。現在はシニアツアーを中心に活躍中
月刊ゴルフダイジェスト2023年11月号より