【陳さんとまわろう!】Vol.237「バンカー越えのラフから高い球を打ちたいときは…」
日本ゴルフ界のレジェンド、陳清波さんが自身のゴルフ観を語る当連載。今回のテーマは、バンカー越えのアプローチ。通常は、安全な「転がし」でグリーン周りのアプローチをする陳さんだが、バンカー越えの状況ではどのように打つのだろうか……。
TEXT/Ken Tsukada ILLUST/Takashi Matsumoto PHOTO/Tadashi Anezaki THANKS/河口湖CC、久我山ゴルフ
ラフの中ならヘッドが抜ける余裕がある
――グリーン周りからのアプローチショットで陳さんはお尻(バウンス)の出っ張ったサンドウェッジは使わないとおっしゃいましたね。
陳さん ふつうの芝生の上から打つと、お尻の出っ張りが跳ね返されて、ミスすることが多いためにね。でも前にも話しましたけど、ラフの中からボールを高く上げて寄せなくちゃいけないような場合には使いますよ。ラフならボールの下にまだヘッドが抜けていく余裕があるからね。あそこにいい場所がありますよ。試してみましょうか。(河口湖CC西6番PAR3 Aグリーン左サイド)
――バンカー越えですね。グリーン面が陳さんの背丈ぐらいの高さ。1メートル70センチほど。バンカー下のラフからボールを打ち上げて寄せようと。
陳さん そう。こういう状況にはよく出会うでしょ。ミスすることも多いはずよ。バンカーに入れたり、グリーンの反対側まで転がしたりね。でも、こういう場所では守らなくちゃいけない約束事がいくつかあって、それを覚えておけば大丈夫。誰でも上手く寄せることができるんだ。
――距離はピンまで15ヤードぐらい。スタンスをとる場所は左足上がり。
陳さん これはボールを高く上げて打たないと、ピンの近くに止まってくれないからな。まず大事なのは、場所が左足上がりですから、ボールに構えるときは、ここなら右足に70パーセントぐらい体重を感じるように立つといいかもね。スタンスの幅はフォロースルーでクラブを振り上げても下半身がぐらつかない程度に開けばいいです。
――距離感はどこで出しますか。
陳さん フォロースルーの大きさで。バックスウィングの大きさじゃないよ。バックスウィングは小さくていいの。こんな感じでさ、リストコックを使ってクラブヘッドを上げて。
――ワッグルをするような感じでヒョイと上げるんですね。手の位置が胸の高さぐらいでおしまい。
陳さん それからスウィングでクラブを振って、フォロースルーをしっかり大きくとるわけ。ボールを高く上げなくちゃいけないときほど大きくね。ここでは私の背丈の倍ぐらいの高さまで上げますから、この程度でいいと思います。
――手の位置が肩の高さぐらい。では本番のショットをお願いします。
陳さん はい。(サンドウェッジを軽く振り上げて、シュッとヘッドを振り抜くと、ボールはワンピン手前へ)
――いい感じですねえ。
陳さん ここはラフからのショットですから、打ってヘッドをすぐ止めたらバンカーに入っちゃうんだ。よく見ますよ、ボールの下にヘッドが入りすぎたために失敗している人をね。こういう人はだいたい腕力でヘッドをドスンと打ち込んでいるんだ。だからダルマ落としになるんだねえ。結局、大きく振り抜くことに怖さを感じるみたいですがね、でもこれはボールを高く上げるために大きく振っているわけで、飛距離を出すのが目的じゃないんだ。
――そうですね。大事なポイントです。それを忘れないようにと。
陳さん はい。そういう気持ちを持てば、ヘッドの重みを感じながら、スウィングでヘッドを振り抜いてあげられるでしょ。ほら、こういう感じで。(と、もう一度ショット)
――軽く打ちますねえ。フォロースルーでは左ひじを引くような感じ?
陳さん だって、左が高いんだもの。地形通りにフォロースルーをするためには左ひじを抜くようにしなくちゃだめ。抜かないで突っ張ったらヘッドが斜面に突っかかっちゃうよ。
陳清波
ちん・せいは。1931年生まれ。台湾出身。マスターズ6回連続出場など60年代に世界で日本で大活躍。「陳清波のモダンゴルフ」で多くのファンを生み出し、日本のゴルフ界をリードしてきた
月刊ゴルフダイジェスト2023年6月号より